2021 Fiscal Year Research-status Report
Seismological study on the fissure eruption at Kilauea volcano for the future eruption prediction
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20K04078
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
山田 卓司 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 准教授 (20580939)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | キラウエア火山 / コーダQ / 散乱体 |
Outline of Annual Research Achievements |
観測される地震波は、一般に尾をひきながら時間とともに次第に振幅が小さくなってゆく。この振幅が減少してゆく部分はコーダ波と呼ばれ、減衰の割合(速さ)はコーダQという値によって記述される。コーダQ値を調べることにより、地下浅部のクラック密度などの構造を知ることができ、小さなコーダQ値はクラックや散乱体が多く存在することを示唆する。 ハワイ島キラウエア火山は、1983年以降、非常に活発な火山活動を続けている。山頂のハレマウマウ火口から東部断裂帯(East Rift Zone; 以下ERZと記す)にかけての火山活動が特に活発であり、地下の火山性流体の移動に伴って地震も多く発生している。火山性流体が地表に向けて移動することにより、地下浅部でのクラックや散乱体密度が増加することが考えられるため、コーダQ値の時間変化の監視は火山噴火予測への貢献が期待される。 令和3年度は、ハレマウマウ火口とERZとの接続部における地下浅部構造に着目し、1983年以降の火山活動に伴う地下浅部構造の時間変化の解析に着手した。令和2年度に行った、2009年1月から2015年6月の解析結果と統合して議論ができるようにするため、データフォーマットの変換などをすすめている。これまでに得られている結果は、以下のとおりである。2012年にかけてコーダQ値がゆるやかな減少を示したことから、地下のクラックや散乱体密度が徐々に増加していることが示唆された。ただし、2012年以降については、明確な時間変化が見られない。さらに、2-4Hz帯の解析結果(波長1kmに相当)で特にコーダQ値の減少が顕著であったことから、クラックや散乱体の密度が増加している空間スケールが1km程度であったと推定される。2009年、2011年、2015年に発生した群発地震活動が深さ2-3kmに集中していたことを考慮すると、この深さ2-3kmの領域(深さ方向に1kmの領域)で特にクラックや散乱体の密度が増加していたことと対応していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
キラウエア火山の東部断裂帯の中部・上部で起こった地震の観測波形を用いて、コーダ波の減衰の強さ(コーダQ)を解析することにより、地下浅部の散乱体密度の時間変化の推定を行った。その結果、火山性流体の上昇に伴うと考えられる群発地震活動と密接に関連したコーダQ値の急激な変化は観測されなかったが、長期的なコーダQ値の減少が見られた。これは、徐々に散乱体が増えていることを示唆していると考えられる。 今後は、さらに過去にさかのぼったコーダQの時間変化の解析をすすめるとともに、散乱体の密度と配向を定量的に解析するため、S波スプリッティング解析のプログラム作成を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
コーダQ値には、散乱の効果と内部減衰の効果の両方が含まれる。火山などの強い不均質構造が卓越する場合に有効な拡散モデルを用いて、内部減衰と散乱減衰の分離を行い、内部減衰と散乱減衰の時間変化の解析を目指す。また、S波スプリッティング解析をあわせて行うことにより、主応力方向とクラック密度の時間変化を追跡し、噴火直前予測への応用可能性を探る予定である。
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Causes of Carryover |
当初、海外での学会発表を予定していたが、COVID-19の影響による出入国の支障を鑑み、現地参加を見送った。そのため、旅費としてR3年度に使用予定であった額を次年度(R4年度)に使用することとした。R4年度も海外での学会が現地開催中止となった場合には、オンラインで学会発表を行う(投稿費・参加費)とともに、世界の研究者と電子資料を画面共有しながら行うディスカッションを円滑にすすめるため、機器(モニター等)の購入費用にあてたいと考えている。
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