2021 Fiscal Year Research-status Report
Growth and decay of gas chimney from the occurrence and geochemical characteristics of gas hydrates and methane-derived authigenic carbonates
Project/Area Number |
20K04088
|
Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
松本 良 明治大学, 研究・知財戦略機構(生田), 研究推進員(客員研究員) (40011762)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
登尾 浩助 明治大学, 農学部, 専任教授 (60311544)
深澤 倫子 明治大学, 理工学部, 専任教授 (40409496)
戸丸 仁 千葉大学, 大学院理学研究院, 准教授 (80588244)
大井 剛志 明治大学, 研究・知財戦略機構(生田), 研究推進員(客員研究員) (40726486)
蛭田 明宏 明治大学, 研究・知財戦略機構(生田), 研究推進員(客員研究員) (90726465)
Snyder Glen 明治大学, 研究・知財戦略機構(生田), 研究推進員(客員研究員) (90751777)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | メタン湧出 / 炭酸塩コンクリーション / ガスハイドレート / 氷河性海水準変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
海底からのメタン含有流体の湧出により海底付近には炭素13に欠乏した炭酸塩コンクリーションが形成される。これらを手がかりに現在と過去のメタン湧出強度を起源を明らかにすることが本研究の目的であるが、コロナの影響によりフィールド調査ができなかった。そこで2021年度にはこれまでに採取した炭酸塩試料について分析と解析を行なった。それらは3つに分けられる。 1、日本海の北縁サハリン島近傍、現在メタン湧出が活発な海域で採取されてもの、2、日本列島の太平洋沖、南海トラフと呼ばれる海域とその延長と見なされる駿河湾で、断層に沿ってメタン湧水が染み出しているところから採取された炭酸塩チムニー試料、3、沖縄県知念村に分布する200万年ほど前の島尻層群の最上部に多産する炭酸塩コンクリーションである。 1と2は海底面直下数メートルから採取したもので、現在、あるいは比較的最近のメタン湧出現象を記録し、3は鮮新世と更新世の境界付近の事件を記録する。1と2について、炭素14法とウラン・トリウム法を用いて、炭酸塩が生成した時代を見積もった。サハリン沖のコンクリーションは2万年程度の年代値を示した。南海トラフ、遠州灘沖合の水深1000メートルものは3.0万年から3.5万年を示し、駿河湾の水深300メートル付近から得たものは14万年を示した。2万年から3万年前とは最終氷期の時代に対応し、氷河性海水準低下により、海面が現在より100メートルほど低かった。海面の低下により、海底下に存在するガスハイドレートが分解してメタンを放出したことが炭酸塩の形成を促したと説明されす。島尻層群最上部の時代に氷河性海水準の影響があったか否か評価は難しいが、この時期、”沖縄島”が隆起し海底が急激に浅くなった島尻変動が起きている。水深の浅化が島尻層群中のハイドレート分解を引き起こした可能性を指摘できる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
海底から採取した試料や陸上露頭の第四紀堆積物など年代層序を確定しやすい場所の試料を分析することで、最近100万年の海底メタン湧出の実態を解明することが目的であったが、ゴールへ向けて作業は少し遅れている。第一の理由はコロナであるが、もう一つの深刻な理由はロシアとの関係である。学術振興会の二国間学術協力に参加して20年より試料の提供を受け、詳細データも入手していたが、本年に入りコミュニケーションが困難となり将来的にもロシアとの共同研究は出来ない見通しである。国内においては20年度に駿河湾でサンプリングのための海洋調査を実施したが、その時は海況が不安定で、サンプルの採取はできなかった。その後、コロナのために再度挑戦ができないままである。調査グループでは、これまで日本周辺域でガスハイドレートとメタン湧出に関する調査を展開しており、炭酸塩コンクリーションは多数保管されている。陸上資料については、既に露頭が消滅してしまいサンプルが得られない場所の貴重な試料もある。そこで、これら既存の炭酸塩コンクリーション試料を整理し、追加の分析をすることとした。その結果、太平洋海域においても氷河性海水準変動を要因とするメタン湧出が確認された。 5万年をこえる炭酸塩の年代測定は、ウラン・トリウム法によるほかないが、現在、信頼できる結果を出せるのは台湾大学の研究室のみである。台湾を訪問できないことも作業が遅れた理由の一つであるが、22年度には旅行制限も緩くなると考えられるので、分析作業も進むと期待している。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度である2022年度には、コロナの影響はほぼなくなると考えられ、当初計画していたフィールド調査を夏前には実施する。研究分担者のグレン・シュナイダー氏とは、彼が代表者である研究(メタン湧水の希ガス同位体と深部ガスの影響評価)と試料をシェアしており、年代の違いによるガスの起源が解明できるかもしれない。深澤倫子氏は海底メタンの起源と想定されるガスハイドレートの安定性と組成の変化について分子動力学的な検討をお願いしている。蛭田明宏氏は炭酸塩の同位体分析、化学分析を、戸丸仁氏は、エックス線分析により既存の炭酸塩試料の鉱物学的特性の解明を担当している。これらの多様なデータを集積し、ガスハイドレートとメタン湧出の環境インパクト、地球史的意義の解明について、初期の目的達成を目指したい。 研究報告としては、21年度5月に地球惑星科学連合大会、同6月にはオンラインで国際堆積学会に参加、日本海とサハリン沖の炭酸塩の生成と氷河性海水準変動の関係について論じた。現在、それらの内容の論文を準備中である。他に、南海トラフと駿河湾の炭酸塩、島尻層の炭酸塩についても別に準備中である。最も肝心なウラン・トリウム分析作業が遅れる恐れが懸念されるが、その場合は研究期間の1年延長をお願いしなくてはならないかもしれない。
|
Causes of Carryover |
調査のための出張ができなかった。 台湾の研究室でのウラン・トリウム分析の外注費用のを21年度中に使用できなかった。請求書は3月に来たが支払いは22年度になってからである。
|