2020 Fiscal Year Research-status Report
Coastal sediments as a recorder of past primary productivity - a process-focused study
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20K04089
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
廣瀬 孝太郎 早稲田大学, 理工学術院, 講師(任期付) (60596427)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松岡 數充 地方独立行政法人大阪市博物館機構(大阪市立美術館、大阪市立自然史博物館、大阪市立東洋陶磁美術館、大阪, 大阪市立自然史博物館, 外来研究員 (00047416)
中村 英人 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 特任講師 (00785123)
瀬戸 浩二 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 准教授 (60252897)
入月 俊明 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 教授 (60262937)
辻本 彰 島根大学, 学術研究院教育学系, 講師 (60570554)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 沿岸域 / 生態系 / 古環境 / 微化石 / バイオマーカー / 人為的環境改変 / 堆積物 / マルチプロキシー |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,研究対象地域である島根県中海のSt.1(Nk-3C)地点において,層序・年代,無機・有機化学組成,および貝形虫群集組成を明らかにした. St.1において掘削された堆積物コアの137Cs,210Pb,14C年代測定に基づき,年代モデルを構築した.その結果,採取した堆積物は過去600年間に堆積したと推定され、堆積速度は0.24-0.38cm/yrの範囲であった. 堆積物のC・N・S分析結果から,湖の有機環境変化には,人為的汚染・改変が大きく寄与していることが明らかになった.17世紀中頃に斐伊川や飯梨川の流路変更,19世紀後半以降の工業化や人口増加に伴う栄養塩の急激な増加,および中海と外海をつなぐ水道部の埋め立てによる閉塞性の増加である. 近代以降の中海湖底堆積物の重金属元素濃度は,鉱業活動や金属の国内需要の歴史的変化と極めて明瞭な一致を示した.すなわち,人為負荷によるCuは,18世紀後半から20世紀初頭に意宇川上流で操業していた宝満山銅山に,Moは20世紀初頭から中頃を中心に斐伊川上流で操業していた大東鉱山にそれぞれ由来することが明らかになった.また,中海における重金属汚染(Cu,Pb,Zn,As)に関する全体的な傾向は,湖の富栄養化や重金属需要の全国的な増加傾向に先立って見られた.重金属元素の多くは,1970年頃に負荷のピークを迎え,高度経済成長後の産業活動の鈍化と汚染物質の排出規制により全般的に減少した. 貝形虫群集からは,上記斐伊川の東流や1960年代以降の干拓堤防構築の影響が示唆される湖の水利的変化が検出された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査・分析・解析:採取した試料は,一時的な処理を行ったのち研究メンバーに分配し,分析を行った.各分析は,概ね計画通りに進行中である. 公表済みの成果:研究実績の概要で示したうち,調査地域の基本的な情報である湖底堆積物の層序や有機化学的変化,古地理変化について,論文(廣瀬ほか,2020;瀬戸,2020),1件の学会発表として公表した.本研究に適用するための環境指標性に関して,微化石や有機分子組成を検討し,論文(Kajita et al., 2020;梶田・中村,2020,Sawada et. al., 2020;佐々木ほか,2020;辻本・瀬戸,2020,Bouchet et. al., 2021a, b)および6件の学会発表として公表した. 公表準備中の成果:動物相(貝形虫組成,有孔虫組成)については,水流や溶存酸素の変化について議論した論文を執筆中である.人為負荷については,主に無機化学組成を元にし,近隣の鉱山や産業活動との関連についての論文を執筆中である. 研究組織内での情報共有・今後の準備:月に1度2時間程度,研究進捗状況の報告や今後の研究計画についてのオンラインミーティングを行っており,共同研究に必要な状況を研究組織の全員が共有している.本年度に計画するSt.2,3地点での試料採取を準備中である.
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Strategy for Future Research Activity |
研究は計画に沿って進んでいる.今後も基本的には申請内容に基づき研究を行っていく.2020年度に分析・解析を進めたSt.1に加え,St.2,3においても試料を採取し,分析・解析を行う.これは,St.1に大きく寄与する南部の飯梨川からの影響に対して,西部の斐伊川・宍道湖およびその集水域からの影響,北部の境水道からの外洋の影響をそれぞれ評価し,時空間的な変化を明らかにするためである. 本研究は,マルチプロキシー的手法により水域システム変化の解析を行うことを目的としている.とくに,珪藻化石群集とバイオマーカーから,過去の基礎生産を組成・量の両面から定量的に明らかにすることが大きな目的の一つである.そのためには,過去の生物相全体を把握可能なメタゲノムを解析対象に加えることが有効であることが分かってきた.そこで,島根大学の中村康秀氏を研究協力者として加え,研究を進めている. 最終的には,本研究の様々な分析から得られた成果を集約することで,堆積物から解析された各環境要素の空間的(地理的)変化とその関連について議論を行う.それらは研究論文とともに,一般向けのシンポジウムや著作物として公表し,普及活動を行う.
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Causes of Carryover |
中海における炭素同位体の海洋リザーバー効果を評価し,堆積物の年代モデルをアップデートするために,試料に含まれる陸上植物の14C年代測定を行う予定であった.しかし好適な試料が産出しなかったため,実施しなかった.試料を篩洗して小型の植物片を拾い出し,2021年に実施する予定である. 新型コロナウィルスの感染拡大により,参加を予定していた学会がオンライン開催となったため,該当の旅費の支出しなかった.同様の理由で,当研究グループで計画していた現地調査が実施できなかったため,該当の旅費を使用しなかった.また,そこで予定していた試料採取補助の人員を雇用しなかった.調査については,状況を鑑みながら,同様の使途で2021年度に使用する計画である.
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Research Products
(16 results)