2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of observation method to analyze the formation of heavy rainfall with dual-polarized radar. Where is big raindrops formed?
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20K04092
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Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
足立 アホロ 気象庁気象研究所, 台風・災害気象研究部, 室長 (80354520)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石元 裕史 気象庁気象研究所, 気象観測研究部, 室長 (70281136)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 雨の粒径分布推定 / 二重偏波レーダー / 偏波パラメータ / 温度依存性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の中核をなすのは二重偏波レーダーで観測される偏波パラメータから雨の粒径分布を推定する手法の開発である。粒径分布とは単位体積(1立法メートル)の大気中の各直径の雨粒の個数を表すもので、平均直径(D0)、数密度(Nw)、形状指数(μ)の3個のパラメータで規定されるガンマ函数で近似できることが知られている。粒径分布が分かれば降水強度など単位体積の大気中の雨に関する平均値のほか、これを構成する雨粒の大きさと個数も分かるため、大粒の雨の所在や、時間変化から雨がどのように成長しているかを推定できる。粒径分布の3つのパラメータのうちμは各直径の雨粒の個数の割合を表すため、雨滴成長の解析に重要である。しかし非線形方程式を解く必要があり、これまで偏波パラメータから解析的に推定することは世界的にもされていなかった。 (1)そこで本研究では開発してきたレーダーシミュレーターについて、偏波レーダーで観測されるのにもかかわらず、これまで解析に用いられなかった相関係数(ρhv)を扱えるようにように改良を行った。ρhvが定量的に使われてこなかったのは従来のレーダーの出力が時間的に不安定なため、降水とは無関係にρhvが低くなり、他のデータに比べて精度が不十分であったためである。しかし本研究で用いるレーダーは送信素子に従来の真空管ではなくトランジスタを用いており出力が格段に安定しているためρhvは理論値に極めて近い。そこでシミュレーターを用いて粒径分布パラメータからρhvを含む4つの偏波パラメータを推定するテーブルを作成した。 (2)このテーブルを逆変換することで二重偏波レーダーで観測された偏波パラメータからμを含む3個の粒径分布パラメータの空間分布を世界で初めて推定した。 (3)またこの手法による粒径分布パラメータならびに降水強度の温度依存性についてレーダーの実データを用いて検証を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)レーダーシミュレーターの改良を行いρhvを含む4つの粒径分布パラメータ(D0, Nw, μ, ρhv)から3つの偏波パラメータ(Z, Zdr, Φdp)を計算し、(D0, Nw, μ, ρhv)=>(Z, Zdr, Φdp)のテーブルを作成した。 (2)作成したテーブルを元にこれまで推定することが難しかったμを含む3つの偏波パラメータをレーダーの実データから試験的に計算し、特にμの空間分布を世界で初めて推定した(精度検証はこれから)。 (3)一方、シミュレーションを行う過程で本研究で提案する手法は雨滴の温度に対する依存性があることが予想された。これは本研究に用いるC帯(波長約5cm)の電波では水の複素屈折率が温度によって大きく変わるためである。そこで本手法に対する雨滴の温度の影響を評価した。その結果、例えば雨滴の温度の誤差が10度程度であれば推定されるμの誤差はほぼ無視できるが、例えば30度では8%の誤差が生じることがわかった。その結果については日本気象学会で公表した。 その一方、本課題で開発した手法の検証は昨年度の地上観測データを用いて行う予定であった。具体的には昨年度、関東地方は台風を含む強雨事例が複数発生したので、本人らが維持・運用する関東地方の地上観測装置により取得したこの時のデータを基準にして本手法の検証を行う予定であった。しかし現地でデータを保存するPCがネットワーク経由でサイバー攻撃を受けたため、ネットワークを一時的に外し、また新型コロナのため出張が制限され地上観測装置のメンテナンスが行えなかったなど当初想定していない事態が発生した。緊急事態宣言解除後に現地で確認すると、十分なデータの保存ができていなかったことが判明した。そこで現地で地上観測装置のメンテナンスを行うとともに、セキュリティの強化を行なった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も緊急事態宣言に類する制限が発生する可能性があるので、今年度は地上観測装置のセキュリティを強化(既に完了)し、ネットワーク経由でデータを取得を可能とするための作業を行った。これにより大雨の事例の観測時にリアルタイムで地上観測データを取得することが可能となった。また検証には大量のデータを処理する必要があるためアルゴリズムの改良を行い高速化を図る予定である。さらに大雨事例が地上観測装置で観測できれば精度検証を行い、アルゴリズムの評価と改良を行う予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスのため参加を予定していた国内外の研究集会が中止となり、海外出張ならびに国内出張ができなかったために次年度使用額が生じた。これらの旅費については延期された国際集会などが今年度に開催されれば実行する。同時に研究を促進するために、これまでのアルゴリズムの改良と高速化並びに、雪などの氷粒子を取り扱うためのアルゴリズムの開発のため、当初予定していなかったプログラムの開発環境(FotranとCのコンパイラーを含む)を研究協力者に整備することに予算の一部を振り替える予定である。
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Research Products
(2 results)