2022 Fiscal Year Research-status Report
Full waveform tomography of the 3D structure in and around the source region of the 2011 Tohoku-Oki earthquake
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20K04101
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
岡元 太郎 東京工業大学, 理学院, 助教 (40270920)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹中 博士 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (30253397)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 全波形トモグラフィー / 2011年東北地方太平洋沖地震 / 地震波シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は昨年度に引き続き、2011年東北地方太平洋沖地震震源域の地球内部構造モデルを改良するための波形トモグラフィーについて研究を行った。この波形トモグラフィーでは、構造パラメータ摂動に対する波形の摂動量を示す感度カーネルを用いて、観測波形と計算波形の残差から構造パラメータの摂動量を逆問題解析によって求める。今年度は逆問題解析で得られる解の性質を把握するために、逐次解析1回目における分解能行列を検討した。まずKubina et al. (2018) を参考にして感度カーネル行列に前処理(規格化)を施した。この前処理によって分解能行列も平滑化され、極端に大きな値を取る要素がなくなるという効果が得られた。そして実際のデータを用いた逆問題解析を行い分解能行列の性質を検討したところ、S波弾性率(剛性率)の分解能が他のパラメータよりも相対的に大きいことと、S波弾性率の中でも最も浅い第1層ブロック(深さ0-8.4km)での分解能が深い層のものよりも大きいことがわかった。これらは浅い層の地震波速度が遅いために層内の波動場の振幅が他の層よりも相対的に大きくなることや、波動場の主要な成分が表面波であることを反映していると考えられる。また第1層ブロックでも、海岸線付近から東北沖地震震央付近までのS波弾性率の分解能が相対的に大きく、海溝に近いところでは相対的に小さくなり、海溝を越えると非常に小さくなることも見出された。この結果は解析に用いた震源分布に依存するものと考えられる。これは津波発生の上で重要な海溝近傍での分解能が低下することを意味しているため、重要な課題であると考えられる。なお上記の逆問題の逐次計算1回目で得られた第1層ブロックのS波弾性率摂動量は、東北沖地震震源域の周辺で負の摂動量がやや卓越する傾向が見られた。これらの成果の一部を日本地震学会2022年秋季大会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は解析対象地震を増加させてデータ量を増やしたこと、分解能行列の詳細な検討ができたこと、海底地震計波形データのモデリングにも着手したことなど、令和3年度の報告書で「今後の研究の推進方策」として今年度に企図していた研究内容にほぼ取り組むことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず地震データを増やすために地震パラメータ推定のためのFAMT解析を追加することを継続する。海底地震計観測網(S-net)が構築されてからの地震数は相対的に少ないので、追加する地震の大部分は陸上観測点データに基づく解析となる。そして海底地震計データを本格的に追加する準備として、陸上・海底の両方の波形データがある最近の地震に対してのFAMT解析も実施する。これにより、海底地震計データを追加することによって地震パラメータがどの程度に改善されるかを検討する。これらの準備の上で海底地震計データも追加した逆問題解析を行い、特に海溝近傍での分解能がどのように改善されるかを検討し、全体的な構造パラメータの摂動量を求めて構造モデルの改良を進める。
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Causes of Carryover |
2022年度は研究に進展があったが論文作成にはなお時間を要することになったことや、世界的に引き続いていた新型コロナ感染症の影響のために予定していた海外学会への参加を取りやめたことなどにより、論文出版費用や学会参加費用などの次年度使用額が生じた。これらは次年度に継続して計算機利用料、論文出版費用、学会参加費用などのために利用する。
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