2023 Fiscal Year Research-status Report
Full waveform tomography of the 3D structure in and around the source region of the 2011 Tohoku-Oki earthquake
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20K04101
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
岡元 太郎 東京工業大学, 理学院, 講師 (40270920)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹中 博士 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (30253397)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 全波形トモグラフィ / 2011年東北地方太平洋沖地震 / 地震波伝播シミュレーション / 海底地震計 / S-net |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は昨年度に引き続き、2011年東北地方太平洋沖地震震源域の地球内部構造モデルを改良するための波形トモグラフィーについて研究を行った。本課題によるこれまでの研究で、日本海溝の近傍におけるトモグラフィの解像度が相対的に低下していることが示唆された。この問題に対応するためには海溝近傍をサンプルする地震波形データを増強する必要がある。そのために本研究では今年度、日本海溝海底地震津波観測網(S-net)の波形データを導入することとした。まず全ての海底地震計の向きの変化をチェックして観測波形を回転した。次にこれらの加速度計データを積分して速度波形に変換し、全てチェックして不適切なトレンドなどが発生している波形を除外した。これらの海底地震計速度波形の3成分データと陸上観測点(F-net, KiK-net)の3成分データを同時に利用して海溝外側のアウターライズ地震(2017年 Mw 6.2)や、陸寄りのやや深いプレート境界型地震(2020年 Mw 6.4)などの地震のFAMT解析を実施した。FAMT解析で得られた長周期計算波形は、解析に用いた S-net 観測点データのうち多くの観測点で S-net 観測波形を良好に再現した。また、震源位置やモーメントテンソルなどの震源パラメータは、陸上観測点データのみを使用して得られたものと大きな違いはなかった。これらの例はトモグラフィー解析にS-netの海底地震計波形データを利用できる可能性を示すものと考えられる。また S-net 敷設以前に発生した多くの地震について陸上観測網データのみを使ったFAMT解析が信頼できるものであることも示している。そして実際に少数の S-net 波形データを追加したトモグラフィ解析も試行した。これらの成果の一部を日本地震学会2023年秋季大会、およびアメリカ地球物理学連合2023年大会でそれぞれ発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、海底地震計観測網(S-net)による観測波形データの品質に関する詳細な検討を行った。さらに海底地震計観測網を対象とした大量の地震波伝播シミュレーション結果を用いて、東北地方太平洋沖地震震源域で発生した複数の地震に関するFAMT解析を行い、海底地震計データを用いた場合の解析結果に関する考察を進展させることができた。これらによって令和4年度の報告書で「今後の研究の推進方策」として今年度に企図していた研究内容の主要な部分に取り組むことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、海底地震計観測網(S-net)の観測波形データを有効活用できることが示された。そこで今後は、S-net 敷設以降の地震(陸上および海底観測網データ)について解析対象地震の個数を増やすことを行う。同時に、これまでの本課題の結果によると S-net 敷設以前の地震(陸上観測網データのみ)についても解析結果は信頼できると考えられるので、S-net 以前の解析対象地震の個数も増加させる。これらの両方の地震について地震パラメータ推定のためのFAMT解析を実施することを継続する。そしてその結果を用いて感度カーネルを計算し、多くの地震データを用いた全波形トモグラフィを実施して構造パラメータの摂動量を求める。そして対象領域の構造モデルの改良を進めて、総合的な考察を行う。
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Causes of Carryover |
2023年度で進展した海底地震計データの利用について、トモグラフィ解析を進めるためには地震波伝播シミュレーションをさらに追加する必要があり、また研究成果を論文にまとめるにはなお時間を必要としたため、論文出版費用や計算機利用料金などの次年度使用額が生じた。これらは次年度に継続して計算機利用料、論文出版費用などのために利用する。
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