2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K04107
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
野坂 俊夫 岡山大学, 自然科学学域, 准教授 (80252948)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 変質差用 / 海洋リソスフェア / 下部地殻 / 上部マントル / オフィオライト / 斑れい岩 / かんらん岩 / 蛇紋岩 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は,様々な地域から採取した岩石に記録された変質作用の相違点と共通点を明らかにし,海洋地殻深部における変質作用を支配する物理化学的および地質学的要因を明らかにすることである。主な研究対象は,様々な拡大速度を持つ中央海嶺近傍や陸上に露出するオフィオライトから採取された斑れい岩である。また斑れい岩に伴って産する上部マントル起源のかんらん岩についても分析を行い,これと比較することで下部地殻の変質作用の特徴を明らかにし,海洋リソスフェアにおける岩石-水相互作用の全体像の理解を目指す。 令和3年度は,大西洋中央海嶺のAtlantis Massif,南西インド洋海嶺のAtlantis Bank,東太平洋海膨のHess Deep Rift,イタリアリグリア海沿岸,オマーン,および西南日本に産する斑れい岩と蛇紋岩化かんらん岩について,岩石薄片の作製,光学顕微鏡による鉱物の同定と岩石組織の観察,ラマン分光分析装置による層状珪酸塩鉱物の同定,および電子線マイクロアナライザーによる鉱物化学組成の分析を行った。 このうち西南日本のオフィオライトの変成蛇紋岩中に産する滑石の組成多様性を明らかにした。特に滑石が蛇紋石とサブミクロンスケールで混合していることと,予想以上にNaに富むことは特筆すべき発見であり,その成果を論文にまとめて国際学術誌に発表した。本研究により滑石の生成条件の見直しが必要になっただけでなく,海洋リソスフェアの変質作用にともなう物質移動を理解するうえで重要な新知見が得られた。 その他の地域の岩石試料からは,初生かんらん石の組成改変と冷却に伴うラメラ状組織の形成,およびかんらん石の蛇紋石化と斜長石の変質作用の関連性などを示す証拠を見つけることができた。現在さらなる証拠を集め,論文と学会での発表準備を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナ感染症の拡大によって野外調査と試料採取が十分にできない状況ではあるが,手持ちの試料を分析に供することによって多くの重要な新知見が得られ,国際学術誌上で論文を発表することもできた。
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Strategy for Future Research Activity |
各種変質鉱物について,引き続き分析を進めていく。特に滑石やかんらん石の微量成分分析および滑石とかんらん石中のラメラについての透過電子顕微鏡観察を,他機関の協力を得て実施する予定である。
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Causes of Carryover |
昨年度と同様に新型コロナ感染症対策のため,当初計画していた学会への参加を取りやめ,旅費を使用しなかった。この旅費の一部は消耗品費と分析装置修理費に充てた。また結果として生じた繰越金は,次年度の研究遂行に必要な物品費として適正に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)