2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of multi-elements triple stable isotope measurements and its application
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20K04108
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
田中 亮吏 岡山大学, 惑星物質研究所, 教授 (00379819)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 安定同位体 / ケイ素同位体 / 遷移元素同位体 / 物質反応過程 / 質量依存分別 / エンスタタイトコンドライト |
Outline of Annual Research Achievements |
安定同位体は、様々な化学・生物反応過程において、質量依存分別を生じるため、自然界における物質反応過程を解読する為の優れたトレーサーである。一方で、安定同位体は個々の反応過程において、平衡論的同位体効果(EIE)と速度論的同位体効果(KIE)を生じるが、2つの同位体(=1つの同位体比)では、EIEとKIEを判別する術を持たない。これを解決するのが、3安定同位体法である。本研究では、申請者がこれまで開発してきた3酸素同位体解析法に加え、ケイ素と遷移元素等の安定同位体解析法を開発し、小惑星や初期惑星系における固液気相間反応過程、初期惑星表層における生命活動痕跡解読、初期地球表層温度推定等の研究に応用することを目的としている。 令和2年度には、ケイ素、マグネシウム、ニッケル、クロム、カルシウム同位体分析方法の開発および酸素・ケイ素同位体分析を用いた応用研究を行った。本研究では、岩石試料から、当該元素の単離技術の開発と改良化、および同位体分析方法の開発を行った。同位体分析については、ケイ素およびニッケルは、マルチコレクター誘導結合プラズマ質量分析計を、クロムおよびカルシウムは、表面電離型質量分析計を、酸素はガスソース同位体比質量分析計を用いた。 応用研究の代表例として、エンスタタイトコンドライト隕石に含まれるコンドリュールおよびユレイライト隕石の酸素とケイ素同位体を用いた研究を行った。ケイ素と酸素同位体の関係性から、コンドリュールが、原始太陽系円盤から早期に形成したメタルと珪酸塩鉱物によって構成される塵が、瞬間的な加熱によって蒸発し、この蒸発したガスと、溶融した珪酸塩メルトの反応によって形成されたものであると結論づけた。この結果は、これらの反応が生じた際の塵とガス全体のSi/Mgは、星雲内での塵/ガス比や、塵に含まれる金属/珪酸塩鉱物比によって、決定づけられたことを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ケイ素同位体分析方法の開発および酸素およびケイ素同位体分析を用いた応用研究については、国際誌に1編の論文が受理された。これに加え、酸素同位体を用いた研究については、国際誌に2編出版したほか、1編が投稿中、1編が投稿準備中である。なお、これら4編はいずれも、国際共同研究者を含めた研究成果である。他の同位体分析方法の開発について、ニッケル同位体は論文投稿準備中、マグネシウム、クロムおよびカルシウム同位体は、分析方法開発はすでに終了している。さらに、ケイ素同位体およびニッケル同位体に関する応用研究については、研究協力者および海外共同研究者とともに研究継続中である。以上に示したように、本課題研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
天然試料の同位体組成を用いて、自然界における物質反応過程を解読するためには、個々のプロセスにおいて異なった化学的挙動を示す複数の元素の同位体組成を統合的に解析することが効果的である。令和3年度には、これまでに開発してきた分析方法の統合化を行い、これを地球外物質および生命活動の関与した地質試料への応用研究を行う。これらの研究は、研究協力者(大学院生)および海外共同研究者とともに行う。研究代表者が所属する機関は、JAXAはやぶさ2プロジェクトにおけるPhase2キュレーションに指定されている。そのため、令和3年度には、本研究課題で開発してきた方法を用いて、小惑星リュウグウから回収された試料の分析を行い、小惑星リュウグウの物質進化過程に関する研究も合わせて推進する。この分析にあたっては、限られた試料量から最大限の化学・同位体データを抽出する必要がある。そのため、試料の岩石学的・化学的特徴に応じて、臨機応変に統合的同位体分析法の修正を行いながら、同位体分析を行う。
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Causes of Carryover |
国際誌に出版される論文が令和2年度内に受理され、オープンアクセス費の支払いが年度内に行うことを想定していた。論文は令和2年度内に受理されたものの、請求書の発行が令和3年度になったため、これにあたる費用を次年度使用とした。
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[Journal Article] Distance-dependence from volcano for Asian dust inclusions in Andosols: A key to control soil ability to retain radiocesium2021
Author(s)
Nakao, A., Uno, S., Yanai, J., Kubotera, H., Tanaka, R., Robert A. Root, R. A., Kosaki, T.
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Journal Title
Geoderma
Volume: 385
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] The Albedo of Ryugu: Evidence for a High Organic Abundance, as Inferred from the Hayabusa2 Touchdown Maneuver2020
Author(s)
Potiszil, C., Tanaka, R., Kobayashi, K., Kunihiro, T., Nakamura, E.
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Journal Title
Astrobiology
Volume: July
Pages: 916-921
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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