2021 Fiscal Year Research-status Report
極限環境域に適用可能な小型高性能広帯域地震計の開発と耐環境調査
Project/Area Number |
20K04112
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Research Institution | The University of Aizu |
Principal Investigator |
山田 竜平 会津大学, コンピュータ理工学部, 准教授 (60647379)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅利 一善 国立天文台, RISE月惑星探査プロジェクト, 研究技師 (40321583)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 地震計 / 極限環境 / 負帰還回路 / 小型化 / 低温試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、人が容易に立ち入れない極限環境域(火山地域、海底、極域、月惑星等)に適用可能な小型・高性能の広帯域地震計を開発することである。この広帯域地震計は宇宙機搭載用に開発された小型短周期地震計をベースとして、負帰還回路をセンサーに接続し、地震計振り子の運動を制御することで周波数応答の広帯域化を図るようにしている。 昨年度までの広帯域地震計の開発状況として、特に長周期側の出力ノイズが大きい事が問題であったため、2021年度は負帰還回路に使用する素子(抵抗、コンデンサー)の値や低ノイズのOPアンプについて様々なパターンを調査して、低ノイズを実現できる回路設計を定めた。また、更なる低ノイズを実現するため、表面実装品からなる小型回路を設計し、先に定めた回路設計に基づいて小型負帰還回路の製作を実施し、その応答を調査した。 また、この広帯域地震計は、振り子の可動範囲が狭く、設計した周波数応答が出力される振子の調軸範囲が極めて狭いことも問題になっている。そこで、地震計の振り子の可動状況をレーザで直接モニターしながら、傾斜と周波数応答を測定する試験コンフィグレーションについても確立し、状況調査を行えるようした。 加えて、本研究課題では、開発した広帯域地震計の耐環境調査を行う事も主目的にしている。その低温時の性能調査のため、液体窒素に浸して-180℃までの地震計の応答を測定できる試験系の確立も行った。その試験系を使用して、まずは負帰還回路を接続しないセンサー単体での-180℃下での応答調査を行い、極低温下でのセンサーの稼働と固有周期や感度の変化率を調査することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は、実際に広帯域地震計に使用する負帰還回路の設計を確定させる事ができ、それに従って、低ノイズ化を実現するための小型負帰還回路を設計・製作することができた。その一方、この製作した小型負帰還回路の調査結果から期待通りの応答が出力されない事が分かった。これまでの原因調査から、おそらく回路に使用している、表面実装の積層セラミックコンデンサの容量が不安定である事が予測され、今後、素子を変更しての再製作、調査が必要となる。この原因調査と再製作の手配等により、現在、開発の遅れが生じている。また、極限環境における地震計の耐環境調査も、その試験系がある機関へコロナ禍で十分な出張調査ができなかった事と、地震計の応答を十分に測れる試験コンフィグレーションの確立に、予測以上に時間がかかったため、遅れが生じる原因となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の研究実施目標として、以下を想定している。(1)不具合が生じている小型負帰還回路の改修を行った後、地動観測試験を実施する。(2)広帯域地震計の振り子の可動状況と傾斜特性を測定する。(3)真空時の広帯域地震計のノイズレベルと周波数応答を調査する。(4)広帯域地震計の耐環境性能(少なくとも高低温)を調査する。
(1)については、前年度の調査結果に従い、小型回路に使用しているコンデンサーの種類の変更の後、設計通りの周波数応答が実現可能かどうか確認する。そして、設計上の応答が実現できた後に、小型回路使用時での地動観測試験を実施する。(2)は確立させたレーザ変位計を使用した試験系で、振り子の変位をレーザで測定しつつ、傾斜角度と地震計の周波数応答を測定して、設計通りの応答を実現する振り子の可動範囲(角度範囲)を明らかにする。 (3)では宇宙科学研究所所有の地震計用の真空チャンバーを使用して、真空下での地震計の周波数応答変化とノイズレベルの低減度合について調査を行い、地震計計周辺を真空に保つ事の有効性について検証する。(4)は前年度も使用した液体窒素での低温化を行う試験系で、広帯域地震計自体の低温下でのセンサーの稼働状況、特性変化を調査すると供に、恒温槽を使用して、高温時の特性調査も行うようにする。
また、今年度は最終年度でもあるため、これまでの調査をまとめた結果を、日本地震学会の秋季講演会にて発表、報告する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた利用として、まずコロナ禍による移動制限により、予定した環境試験や調査・試験のための出張が制約され、期待通りの出張ができなかった事による。また、製作した小型負帰還回路において設計通りの応答が出ない不具合が生じ、その不具合調査や対策方針の検討のため、当初の予定通りに研究計画が進まなかったため、結果として予算執行の遅れが生じた。 今年度は、まず負帰還回路の改修費用に使用すると供に、調査試験に必要なセンサー・機材類の購入品、調査・試験のための出張旅費等に使用する予定である。
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