2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20K04123
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
渡辺 寧 秋田大学, 国際資源学研究科, 教授 (90358383)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
越後 拓也 秋田大学, 国際資源学研究科, 准教授 (30614036)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 熱水性銅鉱化作用 / 斑岩銅鉱床 / 鉱脈型鉱床 / 東北日本弧 / 安定同位体組成 / K-Ar年代 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度にあたる令和4年度には,これまで得られたデータ,およびグラスベルグ鉱床の熱水変質鉱物の酸素・水素同位体分析(令和4年度分析)結果をもとに銅の濃集・沈殿をもたらした要因(鉱床形成にかかわったマグマの酸化還元度,熱水中の卓越硫黄種,鉱床形成場の温度圧力条件)を考察し,斑岩銅鉱床,鉱脈鉱床それぞれの形成条件を明らかにすることを目的とした. グラスベルグ鉱床の熱水変質鉱物の酸素・水素同位体組成から計算された熱水の同位体組成は,-60~-85‰および1~5‰(カオリナイト水素・酸素),-40~-55‰および6‰(白雲母・パイロフィライト水素・酸素),-60‰および7~8‰(黒雲母水素・酸素)であった.これらの結果は,黒雲母および白雲母とパイロフィライトを形成した熱水は蒸気分別後のマグマ水の組成に一致し天水の寄与がほとんど認められない.カオリナイトはこれらの熱水と天水との混合により生じた熱水から形成されたと推定される.この結果はチリ,エルサルバドル斑岩銅鉱床での結果と類似する.一方秋田県白子森鉱床の菱マンガン鉱を形成した熱水や仁別花崗岩の白雲母の酸素同位体組成は-5‰で天水の大きな寄与が認められる. これらの結果から,斑岩銅鉱化作用を伴う熱水と伴わない熱水では天水の寄与の度合いがきく異なることが示された.この差は斑岩銅鉱化作用が天水が循環しない高温でより静岩圧に近い条件で生じたことを示し,その様な条件が中新世の東北日本弧では実現されなかったことが斑岩銅鉱化作用の欠如をもたらしたと考察される.
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