2021 Fiscal Year Research-status Report
電離層数値モデルと陸上・海底磁場データを組込んだマントル遷移層描像手法の新展開
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20K04125
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小山 崇夫 東京大学, 地震研究所, 助教 (00359192)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
馬場 聖至 東京大学, 地震研究所, 准教授 (70371721)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Sq場 / GAIAモデル / ビオ・サバール則 / 電磁誘導 / 電気伝導度インバージョン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、電離層起因の変動Sq場を磁場励起源(=入力)とした電磁誘導法により、深さ400-650 ㎞ マントル遷移層を主なターゲットとして地下深部の電気伝導度分布の推定を行い、地球マントルの構造およびそのダイナミクスについての情報を抽出することを目的としている。ここで電離層起因の入力項は、「大気圏ー磁気圏結合モデル(GAIA)」と呼ばれる全地球大気のシミュレーションモデルを基におこなう。GAIAは、地表での温度・気圧・風速および熱圏上端での太陽放射等を境界条件とし、大気圏・電離圏の物理化学過程(光化学反応、イオンー中性粒子の衝突、電磁流体ダイナモ過程等)を数値計算し、中性大気やプラズマ粒子の位置・速度分布をシミュレーションするものである。 本研究は今年度は、この高解像度のGAIA電離層電流モデルを用いて地球全地表面における入力磁場変動を数値計算した。具体的には各格子グリッドで定義された電流ベクトル3成分についてビオ・サバール則に則って地表面の各グリッド上に生成する磁場を積分計算して、各時間における全地表面での磁場モデルデータを作成した。当データは1996年ー2018年の間の30分毎の全球磁場値(緯度方向2度グリッド、経度方向2.5度グリッド)に相当する。また、並行して、これまでに開発した電気伝導度インバージョンコードを改修し、先述の入力データに対応するようにした。今後は、この膨大な入力データを周波数領域に変換し、3次元地球での電磁誘導計算・インバージョンに実装して、マントル電気伝導度3次元分布推定をおこない、マントル構造およびそのダイナミクスの解明をおこなう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
R3年度までに、GAIAモデルを基にした1996年ー2018年の高解像Sq場磁場変動入力データの整備、および、その入力データに対応した積分方程式法+準ニュートン法に基づいたマントル電気伝導度推定コードの作成を実施した、これで本研究目的に資する準備作業が完了した。 今後2年間で、当コードを用いてマントル遷移層の3次元電気伝導度構造推定を行い、地球マントル構造およびダイナミクスを解明する。おおむね当初の計画通りに研究が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
R4年度は、まず最初にテストデータを使用して、当開発コードの精度と適用限界の確認を実施する。結果に応じてコードの改修を実施する。コード改修完了後~R5年度半ばにかけて、GAIAに基づくデータを入力として、実際の磁場観測データにフィットするようマントル遷移層電気伝導度分布を推定する。R5年度後半は得られた構造について、電磁気構造のみならず地震波速度構造や密度構造などと比較し議論を重ねたうえで、成果を国際誌に発表する。なお、解析や構造の議論に際しては、新たに研究協力者を増やしたり、国際学会で情報収集をおこなったり、海外の研究者を招聘することを計画している。
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Causes of Carryover |
R3年度までは、成果発表の場として検討していた国際学会がキャンセルとなってしまったために、当該経費の使用実績がなかった。幸いR4年度は国際学会での発表の見込みがたったため当経費を使用する。また、国際共同研究として当研究の議論を深めるため、海外から研究者を招聘するためにも当経費を使用する。
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