2023 Fiscal Year Annual Research Report
「地震=断層運動」からの脱却:新手法による微小な非せん断破壊成分推定の試み
Project/Area Number |
20K04141
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
今西 和俊 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 副研究部門長 (70356517)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 非せん断破壊 / モーメントテンソル解 / 流体 / 応力降下量 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は地震破壊に含まれる微小な非せん断破壊成分を十分な精度で推定する手法を開発するとともに、多くの実データへ適用し、これまで踏み込むことができなかった微視的な地殻プロセスの実態に迫ることを目的にしている。 令和5年度は昨年度に引き続き、様々な状況証拠から流体関与が示唆される東広島市直下の下部地殻地震クラスターの解析を行った。解析対象地震のマグニチュードの下限を1.5から1.0まで引き下げたことで、推定対象が3倍以上に増加した。マグニチュードが小さいとモーメントテンソル解の推定精度は悪くなるものの、クラックの開口・閉口成分が周期的な変動を示す傾向は依然として確認できた。今年度はさらに、地震波スペクトルから応力降下量の推定を行った。推定値は概ね1~100 MPaの範囲に分布しているが、応力降下量の大きい地震は開口成分が卓越するタイミングに、一方で応力降下量の小さい地震は閉口成分が卓越するタイミングに、それぞれ概ね調和して発生する傾向があることがわかった。この対応関係を説明するため、以下のような流体注入と絡めたモデルを考案した。 (1)平常時:クラックが流体で満たされている状態を考える。これらのクラックにおいて破壊条件が満たされると、せん断破壊とともにクラックが閉じて流体を放出すると考えられる。これらのクラックは間隙水圧による強度低下が生じていたため、応力降下量は小さめになると考えられる。 (2)深部からの流体注入時:一方、地下から流体が注入される際には、閉じていたクラックに流体が入り込み始めて、クラックをこじ開けるような破壊が生じることが予想される。この際、もともとクラックに流体は入っておらず強度低下は生じていなかったため、比較的大きな応力降下量を示すと考えられる。 以上の成果は、日本地球惑星科学連合や日本地震学会で発表した。
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