2020 Fiscal Year Research-status Report
Search for aseismic slip with a characteristic time less than 10000 s at the Bonin Trench, Nankai Trough and Japan Trench
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20K04142
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
深尾 良夫 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(地震発生帯研究センター), 特任上席研究員 (10022708)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 海底水圧観測 / 非地震性滑り / プレート間滑り / 海溝地震 / 津波 / 津波地震 / スロースリップ |
Outline of Annual Research Achievements |
・主要テーマ: ”高速”非地震性滑りの検出 ・発表歴: 2020年6月 日本地球惑星科学連合大会発表、2020年12月 米国地球物理学連合秋季大会発表、2021年3月 Journal of Geophysical Research-Solid Earth 投稿済 ・内容: 2015年6月から1年間、伊豆小笠原海溝の内側斜面(深さ5000m付近)に海底水圧計アレーを展開し、継続時間が1時間強の海底鉛直変動を検出した。イベントはM6.0の海溝地震の直後と4日後の2度発生した。海底鉛直変動量は観測点毎に異なり、それらを統一的に説明する非地震性スリップモデルを求めた。得られたスリップモデルは2イベントとも観測記録を非常に良く説明する。両イベントとも地震モーメントは本震の8倍強で、総モーメントは本震の17倍にもなる。継続時間は、同じ地震モーメントの通常の地震の継続時間と比べて3桁長く、一方、報告されているSSEs(Slow Slip Events)の継続時間よりは3桁短い。破壊伝播速度も通常の地震よりも3桁以上遅く、SSEsよりも3桁以上速い。従来、地震が不安定摩擦滑り領域の現象であるのに対し、SSEsは安定摩擦滑り領域に隣接する現象と見做され、両者の間には本質的なギャップがあるとされてきた。本研究において”高速”非地震性滑りを検出したが、これは、不安定摩擦滑り領域と安定摩擦領域との間に遷移滑り領域が存在し、プレート間摩擦滑りは全領域を通じて連続的に起こっていることを示すものである。 ・補足:水圧計アレーはM6.0の本震に伴う海底鉛直変動と津波もきれいに記録している。これらを解析した結果は報告されている地震波解析の結果と整合的であり、本震自体は普通の地震であったと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在まで研究はおおむね順調に進展している。特に、(1)小笠原海溝に設置した海底水圧計アレーの記録解析から”高速”非地震性滑りを検出し、(2)検出されたイベントの滑り成長過程を明らかにし、(3)それが不安定摩擦滑り領域(地震の起こる領域)と安定定常滑りの近傍領域(スロースリップの起こる領域)とを繋ぐ遷移領域特有の現象であることを明らかにし、(4)これらを論文にまとめてJGR-Solid Earthに投稿したことは重要な成果と考える。今後は遷移領域の摩擦滑りの詳細と地域性を明らかにすることを目指すが、こちらはコロナ渦の下で当初予定からは遅れ気味である。一方、2016年に宮城県沖水深3440mの海底に1年間設置した海底下と海底直上の同時観測記録を解析し、頻繁に起こる海底直上のボア現象を検出しその発生環境を明らかにしつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の”高速”非地震性滑りの検出には、独自に開発した海洋潮汐除去法が大きな役割を果たした。しかし、この手法はイベントを発見的に検出するときは有効だが、系統的なイベント探索には必ずしも向いていない。精度は落ちるものの海洋モデルにより海底水圧を評価し、記録から差し引くほうが系統的な探索には向いている。今後、この手法の有効性を検証する。この手法は海洋モデルには取り込まれていない海洋擾乱を検出するにも有効と考えられ、海洋物理学者との連携を模索する。なお、非地震性滑りの研究を遂行する過程で、地震アスペリティの階層モデルを着想するに至り、2020年秋の地震学会で発表した。モデルはなお改良中であり、今後の発展が期待できる。深海底でのボア現象の解明も海洋物理学者の協力を得て一層推進する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:(1)雑誌Scienceに投稿した論文が不採用となったため投稿料として計上していた予算を次年度に繰り越すことにした。(2)AGU(米国地球物理学連合)秋季大会に出席する予定で計上していた予算がオンライン大会となり旅費分が不要となった。(3)名古屋大学犬山地震観測所でテスト中の傾斜計システムの改良のための出張が困難となり改良点の把握が大幅に遅れた。このため、システム改良に計上していた予算を次年度に繰り越すことにした。 使用計画:(1)論文を修正の上、JGR-Solid Earthに投稿した。この論文投稿料として計上する。(2)AGU秋季大会(12月)が現地開催となることを想定しそのための旅費を計上する。
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[Journal Article] Weak faults at megathrust boundary respond to tidal stressts2021
Author(s)
Tonegawa, T., T. Kimura, K. Shiraishi, S. Yabe, Y. Fukao, E. Araki, M. Kinoshita, S. Yoshinori, S. Miura, Y. Nakamura and S. Kodaira
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Journal Title
Earth, Planets and Space
Volume: 73
Pages: 1-17
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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