2022 Fiscal Year Research-status Report
Search for aseismic slip with a characteristic time less than 10000 s at the Bonin Trench, Nankai Trough and Japan Trench
Project/Area Number |
20K04142
|
Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
深尾 良夫 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(地震発生帯研究センター), 特任上席研究員 (10022708)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 海底観測 / 非地震性滑り / プレート間滑り / 海溝地震 / 水圧計 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度の成果は以下の通り。 (1)研究成果の主要部を報告した論文 Detection of "Rapid" Aseismic Slip at the Izu-Bonin Trench が、Journal of Geophysical Research: Solid Earthの2021年において最も数多くダウンロードされた論文の1つとして認定された。 (2)上記論文の続く Rapid aseismic slip に関する第2弾論文は投稿寸前になって、海洋補正に重大ミスの存在することに気づき取り合えず投稿を断念した。心血を注いだ論文の投稿断念は残念であるが、投稿前に気づいたことは不幸中の幸いであった。 (3)日本海溝斜面が緩斜面へと急変する場所(trench slope break)に設置した多項目海底測器の記録を解析し、多くの深海ボアを抽出すると共にボア発生のメカニズムを探りつつある。流向・流速と水圧と水温を深海底で1年間連続観測した例はない。記録解析の第一報を2022年の日本地震学会で報告した。 (4)伊豆・小笠原海溝の海底水圧アレー観測時に、2015年台風14号の中心がアレーの直上を通過した。またその10日後にはより強い台風16号がアレーの東約300kmを通過した。台風に伴う海面気圧の低下が深海底直上の海洋や直下の固体地球にどのような影響を与えるかを明らかにしつつある。これまでの解析結果(2023年のJpGU学会で報告予定)によれば、台風による海面気圧低下のうち水圧低下として深海底にまで届くのは1割強である。従ってこの1割強だけが台風と回転軸を共有する傾動流システムを形成すると推測される。海底にまで到達した圧力低下は海底下の割れ目システムへの微動を伴う流体の貫入を促し、ついには海底隆起をもたらすに至ると推測される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」の項(1)に記載したように、これまでの研究成果は高く評価されつつある。(2)一方、第2論文は投稿直前になって重要なミスが見つかり投稿を取り敢えず断念した。これは想定外のできごとであり、「研究実績の概要」の項に記載した研究進展(3)(4)を考慮しても,全体としてやや遅れが生じたことは否定できない。一方で、海洋補正のミスをきっかけとして逆に海洋と固体地球とが関わる面白いテーマが浮上しつあり、プラスの側面もあった。こうした事情を総合して、”やや”遅れている、と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
残された研究期間は1年であり、研究のまとめと新たな研究展開の同時進行を図る。 (1)Rapid aseismic slip eventの2例を論文にして報告したが、それ以外にもいくつかイベントを検出しほぼ解析済みである。更に事例を増やして第2論文としてまとめる。 (2)日本海溝のTrench slope brakeに発生する深海ボアの特性を抽出し論文としてまとめる。 (3)海面気圧と海底水圧と海底下微動現象あるいは海底上下変動とが著しい相関を示す事象の網羅的探索を行い事象をリスト化する。
|