2020 Fiscal Year Research-status Report
Paleoenvironmental studies of terrestrial and marine sequences in Northwest Pacific region during Paleocene-Eocene Thermal Maximum.
Project/Area Number |
20K04153
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Research Institution | Hokkaido Research Organization |
Principal Investigator |
林 圭一 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 産業技術環境研究本部 エネルギー・環境・地質研究所, 主査 (30707906)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高嶋 礼詩 東北大学, 学術資源研究公開センター, 教授 (00374207)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 暁新世-始新世境界温暖化極大(PETM) / 北西太平洋 / 根室層群 / 羽幌層 / 渦鞭毛藻シスト化石層序 / 古一次生産 / 陸上古環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,暁新世-始新世境界付近で発生した突発的な温暖化事件である暁新世-始新世境界温暖化極大(PETM)の発生時に,陸と海で生じた古環境変化を合わせて復元することを目指している.北海道には,この時期の地層である羽幌層(羽幌町)と根室層群・富川層(白糠町)が分布しているが,このうち羽幌層は浅海~陸域,根室層群・富川層は深海域で堆積した地層である. 根室層群については,本研究開始前に予察的な調査・研究を行なっていたため,2020年度は,特に,羽幌層について重点的に地質調査を行い,微化石分析用の岩石試料を採集した.羽幌層は,陸成層と海成層を繰り返す地層であることから,堆積相解析により堆積環境の変化について検討し,堆積相だけでは区別が困難であった部分については,パリノモルフの組成に基づいて堆積環境の区分を行った.また,両層において採集した岩石試料の一部について渦鞭毛藻シスト化石を検討した結果,群集構成種には共通性が見られ,同一の化石帯に基づいて層序対比が可能であることが分かった.一方,テチス海,大西洋などの他の海域の堆積物における渦鞭毛藻シスト化石層序の先行研究で示されるPETM時のApectodinium 属の多産などの国際的な年代示準イベントが,根室層群および羽幌層では認められないなど,国際対比のうえでの問題も明らかになった. 今年度実施した地質調査により,両層の暁新世-始新世境界付近の層準に複数の凝灰岩が含まれることを確認した.そのため,羽幌層と根室層群という後背地および堆積場の異なる2つの地層において,放射年代などの絶対年代による対比を試みるとともに,暁新世-始新世境界の層準を厳密に直接対比するために,凝灰岩に含まれる鉱物(アパタイトなど)の化学組成などに基づき,同一の噴火によって噴出した火山灰からなる凝灰岩を特定するテフラクロノロジーの検討を行っていく.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で対象としている暁新世-始新世境界を含む羽幌層および根室層群・富川層について,概ね,予定通りの地質調査および岩石試料の採集を行ったが,今年度の調査は羽幌層を中心に実施したため,根室層群・富川層については,予察的調査の段階にとどまり,次年度以降の調査に課題を残した.また,本年度までに採集した岩石試料について,概略的な微化石分析を行い,羽幌層の堆積環境変化を確認するとともに,両層間の層序対比を行った. 今年度は,コロナ禍の影響もあり,遠隔地の共同研究者との接触や,調査可能な時期などに制限があったため,当初予定していた調査の一部が実施できないことがあった.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は,羽幌層を中心に地質調査を行ったため,次年度以降,根室層群・富川層について,重点的に調査を行う.これまでの検討から,根室層群・富川層では,暁新世-始新世境界付近で露頭欠如部分が大きいことがわかったため,連続的な古環境復元を目指すために,その補完を行う予定である. また,引き続き,微化石層序および群集解析による古環境の検討を進めるとともに,炭素同位体比層序の検討や,凝灰岩を用いた放射年代の検討,テフラクロノロジーによる遠距離層序対比などを,順次,進めていく.
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Causes of Carryover |
2020年度は,コロナ禍の影響を受け,緊急事態宣言下での調査が制限されていたこと,参加予定であった学会が中止になったこと,共同研究者との打ち合わせ等がオンラインになったことなどが要因で,旅費について残額が生じた. 次年度以降,2020年度に一部中止となった調査等を実施するとともに,2020年度の研究結果により重要度が増した凝灰岩中の鉱物の化学組成を利用したテフラ対比などに必要な分析等に活用する.
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