2021 Fiscal Year Research-status Report
Material design of rubber composite filled with particles by controlling interphase layer formed on nanoparticle surface
Project/Area Number |
20K04159
|
Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
足立 忠晴 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20184187)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 陽介 京都大学, 工学研究科, 助教 (70781706)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 複合材料 / シリコーンゴム / シリカ粒子 / 中間層 / 引張変形 / 破壊靭性 / ナノ粒子 / 架橋密度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,母材ゴムの架橋密度の観点から中間層の形成に及ぼす影響を明らかにするとともに架橋密度が及ぼす力学的特性への影響を明らかにすることを目的としている.シリコーンゴムの主剤と硬化剤の配合重量比を変え,異なる架橋密度の母材ゴムに平均粒径300 nmのナノ粒子を充填したナノ複合材料および平均粒径1.6 μmのマイクロ粒子を充填したマイクロ複合材料を作製した.架橋密度とともに粒子の体積充填率を変えた複合材料を作製し,それぞれの試験片について粘弾性試験,引張試験および破壊試験を行った. 粒子表面に生成される中間層の影響を明らかにするために,中間層が形成されるマイクルサイズのシリカ粒子を異なる充填率と作製した複合材料についても試験を実施した. 引張試験について,粒子充填率を変えて作製したナノおよびマイクロ複合材料について引き続き実施し,前年度に得られた結果の確認している.さらに,ひずみ速度依存性について考察するために動的引張試験機を設計,開発した. 破壊試験について,マイクロ複合材料では粒子充填率が増加するとともに破壊靭性が増加するが,体積充填率が20%付近から一定となり,それよりも充填率を増加させても破壊靭性は増加しないことがわかった.ナノ複合材料では中間層の影響のために見かけ上,体積充填率が増加することから,破壊靭性が一定となる充填率が小さくなることがわかった.なおナノ複合材料とマイクロ複合材料の破壊靭性が一定となる値はほとんど差がなかった.ただし,架橋密度を減少されたナノ複合材料においてはこの一定となる破壊靭性よりもさらに増加することがあることが判明した.したがって,ナノ粒子を充填したことで単に見かけの粒子充填率が増加するだけでなく,母材ゴムの分子構造により中間層と母材の間に干渉効果があり,それにより破壊靭性が向上することがあることがわかった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複合材料の作製およびゴム母材の架橋密度・中間層厚さの同定:硬化剤を非化学量論比で主剤と混合し架橋密度の異なるゴムを母材として,粒径が1 マイクロメール以上のマイクロシリカ粒子あるいはそれ以下のナノ粒子について異なる充填率で混合した複合材料を作製した.粘弾性特性を測定し貯蔵弾性係数と粒子充填複合材料の複合則から中間層厚さを同定している. 複合材料の引張変形特性の測定および評価:作製した複合材料の引張試験を実施し,応力―ひずみ線図を測定した.中間層を含む見かけ粒子の体積含有率と測定された力学的特性を評価し考察する.単にナノ粒子表面に形成される中間層が粒子と一体となり見かけの粒子として挙動するわけではなく,架橋密度により母材と中間層の表面との干渉が応力-ひずみ線図に影響することも明らかとなった.さらに,ひずみ速度が引張変形特性に及ぼす影響を考察するために,動的引張試験機を設計,開発した. 複合材料の破壊靭性の測定および評価:作製した複合材料についてき裂を導入した試験片の引張試験を行った.き裂が進展して試験片が破断するまで荷重-伸び線図は線形性を示すとともに,き裂開口変位の分布は破談に至るまで弾性解析で求められる結果に一致しき裂先端のプロセスゾーンはかなり小さく小規模降伏状態で破断するために,線形破壊力学が適用でき,臨界応力拡大係数を破壊靭性として結果を整理した.基本的には粒子充填率が増加するとともに破壊靭性は増加し,約20%付近から一定となることがわかった.ナノ粒子を充填した複合材料では中間層を含んだ見かけの粒子充填率が20%付近となるとマイクロ粒子を充填した複合材料とほぼ同じ一定値になることを確認した.架橋密度が低い状態では,さらに破壊靭性がマイクロ複合材料の結果よりさらに増加することが明らかとなった. 以上のことから,おおむね順調に研究が進んでいる.
|
Strategy for Future Research Activity |
令和3年度にて,室温下における引張・破壊特性の測定を行い,架橋密度,中間層が及ぼす影響を明らかにしてきた.その中で引張特性は主にナノ粒子表面に形成される中間層が粒子と一体となって見かけの粒子として挙動することが明らかになった.これに対して破壊靭性については,中間層を含むナノ粒子が見かけの粒子として影響するだけでなく,架橋密度により中間層表面と母材ゴムの干渉効果の影響が生じることが判明した.このことから,ナノ粒子で力学的特性を制御するだけでなく,母材のゴムの架橋密度により破壊特性を制御できる可能性があり,実験結果に基づいて,これらの結果を材料設計の指針として整理することを目指す. これらの成果について,日本実験力学会年次講演会およびThe 12th International Conference on Mechanics of Time-Dependent MaterialsにおいてPlenary lectureとして講演を依頼され発表する予定である.
|
Causes of Carryover |
本研究の成果を含む内容について,The 12th International Conference on Mechanics of Time-Dependent MaterialsにおいてPlenary Lectureが依頼されている.この国際会議がコロナウイルス感染症の影響のため延期され,今のところ2022年9月に開催される予定であり,この参加費および海外渡航費を2022年度の予算として確保しておく必要があるために次年度使用額として残している.
|