2020 Fiscal Year Research-status Report
皮下の微細構造とゲルマットが体表面圧迫下のずれに対して血管閉塞を防ぐ効果の解明
Project/Area Number |
20K04179
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
山田 宏 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 教授 (00220400)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
自見 至郎 福岡大学, 公私立大学の部局等, 研究特任教授 (30226360)
田中 マキ子 山口県立大学, 看護栄養学部, 教授 (80227173)
森田 康之 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (90380534)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 皮下組織 / マットレス / ゲル素材 / 血管 / 圧縮 / ずれ |
Outline of Annual Research Achievements |
皮下組織の弱い結合力の研究については,ブタ肩ロース肉に対し,脂肪細胞をズダンブラックで染色し,力の測定とともにCCDカメラ付マイクロスコープで皮下組織の局所的ずれ変形を動画撮影して変位解析を行い,実験後,固定してシリウスレッドで染色し,顕微鏡観察を行った.また,骨格筋と皮下組織からなるブロックを圧縮負荷下と圧縮とせん断の同時負荷下でエタノール固定し,マッソン・トリクローム染色とヘマトキシリン・エオジン染色により皮下組織の微細構造を観察した.その結果,外からずれを受ける皮下組織の微視的構造において,脂肪小葉に属する脂肪細胞の動きを捉えることができた. 褥瘡発症部位の皮下組織内の静脈の閉塞の研究については,有限要素解析ソフトウエアAbaqusを用い,仙骨部の軟部組織の2次元平面応力状態の既存の有限要素モデルにおいて,皮下組織の弾性特性を柔らかくするとともにウレタンフォーム製マットレスの弾性特性を実験データに基づいて修正し,圧迫とずれを与えて,静脈閉塞を再現し,対象部位の褥瘡発症リスクを定量的評価を試みた.その結果,皮膚表面近くの微小血管は,マットレスによる体表面圧の増加に対しては徐々に閉塞したが,ずれに対しては閉塞する傾向は見られなかった. ゲル層の褥瘡予防効果の研究については,ゲル層付ウレタンフォーム製マットレス1種(モルテン社製ピュアレックス),ウレタンフォーム製マットレス表裏2種(モルテン社製ソフィア)につき,繰返し圧縮変位と一定圧縮変位・繰返しせん断変位の条件を用意し,自動ステージで中央の球面状突出部および1段下がった周辺の円板面をマットレスに押し付けてずらし,小型3軸力センサで球面状突出部の力を測定し,6軸力センサで周辺部の力を測定し,圧力分配とずれ抵抗を評価した.その結果,ゲル層付ウレタンフォーム製マットレスがいずれについても最も優れた挙動を示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症予防に伴う規制や自粛の結果,異なる所属機関の研究者との共同研究の実施や外部機関の訪問に支障をきたし,年度初めには研究の一時停止と判断していたが,その後,状況が好転しないことが判明したため,そのような状況下でも研究目標を達成することができるように研究手法の変更を行った.その結果,研究がやや遅れることとなった.
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Strategy for Future Research Activity |
皮下組織の弱い結合力に関する研究について,ブタの皮下組織(食肉)に対し,組織染色,顕微鏡下の圧縮・せん断試験を行い,皮下組織の微細構造と力学的挙動を関連付ける.そのため,力学試験では,脂肪細胞をズダンブラックで染色し,力の測定とともにカメラ付の実体顕微鏡で皮下組織の局所的ずれ変形を動画撮影し,運動解析ソフトウエアで2次元ひずみ解析を行う.組織学的観察では,除荷・負荷状態の皮下組織をエタノールまたはホルマリンで固定し,ヘマトキシリン・エオジン染色等により組織の微細構造を観察する. 褥瘡を発症しやすい部位の皮下組織内の静脈の閉塞に関する研究について,被験者に対する過去のデータの解析を進めるとともに,有限要素解析ソフトウエアと最適化ソフトウエアで,軟部組織の力学特性を同定して静脈閉塞を再現する.さらに,種々の部位の褥瘡発症リスクを静脈閉塞条件で定量的に評価する.新型コロナウイルス感染症予防の観点から問題がなくなれば,当初予定していた被験者による実験を外部の医療機関で実施する. ゲル層の褥瘡予防効果に関する研究について,褥瘡予防用ゲルにつき,力学特性(圧縮・せん断)と褥瘡予防効果を実験と有限要素解析により定量化する.自作の圧力分配測定装置に6軸力センサを取り付けて改良し,装置を自動ステージで移動させてゲル有・ゲル無マットレスに圧縮・せん断変位を与え,圧力分配とずれ抵抗を評価する.また,被験者による測定によりゲル層の効果を調べる.さらに,有限要素解析で,装置や被験者とマットレスの接触面での応力集中,皮下組織とゲル層の変形を調べ,実験と比較する.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は,新型コロナウイルス感染の拡大に伴い,大学内への入構禁止期間があったり,外部施設への出入りの自重が必要であったりしたことにより,予定していた研究を行えなかった分が次年度に繰り越しとなったためである. この繰越分は,病理標本作製のため,標本作製薬剤(アルコール,キシレン,パラフィン,標本カセット),薄切消耗品(薄切用刃,スライドガラス,カバーガラス,封入剤),染色試薬(ヘマトキシリン,エオジン,マッソン・トリクローム染色液)の購入に使用したり,次年度に延期した実験を実施して物品費・謝金等に使用したりする予定である.
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