2020 Fiscal Year Research-status Report
Hydrogen Storage Materials by the Nanoconfinement effects
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20K04186
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
納冨 充雄 明治大学, 理工学部, 専任教授 (70218288)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 水素貯蔵材料 / Mg系合金 / Nanoconfinement |
Outline of Annual Research Achievements |
次世代の再生可能エネルギーとして水素の利用は必須である。既に車載用水素ガスタンクが開発されているが,貯蔵に高圧が必要であること の安全性や,外殻に炭素繊維複合材料を用いることの製造コストが問題となっている。水素吸蔵量が6.0wt%以上となる固体の水素貯蔵材料を開 発できれば,タンク内圧を下げ,高強度を必要としない材料を外殻に用いることが可能となり,安全性と輸送効率からその利点は大きい。水素を固体に固定化する手法は,化学吸着,物理吸着,Kubas結合,Nanoconfinementの4種類が知られている.これまで,Mgに水素を化学吸着する方法に対して遷移金属の積層や合金化により水素吸蔵量と水素放出温度の改善を試み,一定の成果を得たが十分ではなかった.そこで本研究では水素貯蔵時に水素化物が不安定化するようにNanoconfinement効果を応用した水素貯蔵材料を開発する. 初年度は,Top-down的アプローチとしてメカニカルアロイング法にて,MgにTi, Fe, Mn,graphiteをMgに化合し,PCT法により最大水素吸蔵量を,DSC法により水素吸蔵放出温度を測定した.この結果,水素放出温度をMg単体より低下させることが可能であることを確認した.さらに, Bottom-up的アプローチとしてAlやPdを成分とするMg系積層薄膜をパルスレーザー蒸着法で成膜し,圧力-組成-等温線測定(PCT測定)により最大水素吸蔵量を,示差走査熱量(DSC)測定により水素吸蔵放出温度を測定した.こちらでも水素吸蔵量をある程度維持したまま水素放出温度を低下させることが可能であることを確認した.次に,x線回折(XRD)による結晶構造解析と走査型顕微鏡による断面観察によってそのメカニズムを探求した.これらの結果の一部はInternational Journal of Hydrogen Energy で発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
MgにTiFeMn,グラファイト,鉄を混合し,MA法でナノ粒子を化合し,Mg-graphite, Mg-TiFeMn-Fe, Mg-TiFeMn-graphite, Mg-Fe-graphite及びMg-TiFeMn-graphite compositesを作製した.まず,水素吸蔵放出特性に及ぼす影響について,x線回折,走査型電子顕微鏡観察,示差走査熱量測定,シ-ベルツ法による圧力組成温度測定により調べた.その結果,Mg-TiFeMn-graphite,Mg-Fe-graphite,Mg-TiFeMn-Fe-graphiteは2.5MPaから2.6MPaの間の200℃で水素を吸蔵した.さらに,Mg-TiFeMn-graphite,Mg-Fe-graphite及びMg-TiFeMn-Fe-graphiteの水素放出温度は,MgH2の水素放出温度(440℃)に対してそれぞれ90℃,160及び165℃低下した. 次に.MA法によりMg/Al/Pd,Al/Mg/Pd,Al/Mg/Al/Pdの3種類の積層膜を作製し,積層順やAl膜厚による水素吸蔵・放出特性への影響について検討した.その結果,水素化前後にXRD測定を行い,全ての試料において水素化していた. DSC測定より,Mg/Al/Pd積層膜は239℃~452℃,Mg/Al/Pd積層膜は173℃~236℃で水素を放出することを確認した.Mg/Al/Pd積層膜は1.4~3.0 wt.%,Al/Mg/Pd積層膜は1.0~1.6 wt.%,Al/Mg/Al/Pd積層膜は2.1 wt.%水素を吸蔵し,MgとPdの間にAlを積層させた方が水素吸蔵量が大きくなった. なお,予定の実験の一部は,新型コロナウィルスの影響で,大学閉鎖,学内への入構制限などが実施され,実験に協力する予定の大学院生が入校できず,計画通りに実施できなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き積層薄膜を真空蒸着法で,微粒子をMA法で作製し,PCTにより最大水素吸蔵量を,DSCにより水素吸蔵放出温度を測定し,XRD,SEM,EDSを実施する。真空蒸着による積層薄膜はNanoオーダーの膜厚制御が容易であるため水素の吸蔵放出に対するNanoconfiementのメカニズムを検討するのに有効であるが,水素化物が水素の侵入を阻害するので,水素吸蔵量を増加させるためには,膜厚表面に水素導入経路を作る必要がある。そこで,表面に格子状の微細なき裂を導入することで,この問題解決のアプローチとする。一方,MA法で作製されたMg系合金微粒子は原則として球状かつ原子レベルで混合されているため,寸法効果の一種であるNanoconfinement効果を検討することが難しい場合があると想定される。2019年にMgを担持したフラーレンでナノシートを形成することによって12.5wt%の水素吸蔵特性を有することが実験で示された。そこで,炭素系化合物を先の合金にMA法で混合し,ナノ構造体を作製し,一連の測定および解析を実施する. さらに,実験の遂行が厳しい現状を鑑み,分子軌道法の適用を検討する.近年,半経験的分子軌道法の改善が進み,Stewartによって開発されたParametric method 6などは実用に耐えうる分子化学計算手法となりつつある.そこで,MgとC60やgrapheneおよび水素の最適構造の探索を試みる.まずは,グラファイト層の一枚に相当するグラフェンに対して Mg や H,H2 を吸着させ,その電子状態及び結合エネルギを評価する.これらの結果は材料開発の指針となると考えている.
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Causes of Carryover |
本年度は新型コロナウィルスの影響で,全ての実験が計画通りに遂行できず,僅かではあったが執行残が生じた.これについては2021年度に材料費として執行する予定である.
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