2020 Fiscal Year Research-status Report
人体に安心安全な医療用工具を製造するためのレーザーによる砥粒固着技術の開発
Project/Area Number |
20K04214
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
諏訪部 仁 金沢工業大学, 工学部, 教授 (40202139)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | レーザー加工 / 医療用工具 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在,手術で骨を加工する際にはダイヤモンドバーと呼ばれるダイヤモンド工具が用いられている.このダイヤモンドバーはニッケルメッキによってダイヤモンド砥粒を電着した工具が主流である.しかしながら,ニッケルは人体にとってアレルギー物質の1つで,このニッケルに対して金属アレルギーを発症する人は多い.そこで,工具となる台金にダイヤモンド砥粒を噴射させながら,レーザー光を照射して表面を加熱・溶融させ,その溶融部の凝固とともにダイヤモンド砥粒を固着する技術を開発し,実験的な検討を行った.そして,これらに加えて,様々な形状の工具を次年度の作製できるようにするための装置改造のための設計を行った. 今年度の研究としてはステンレス鋼を母材として用いた場合に,レーザーの照射条件や母材厚みがダイヤモンド砥粒の固着量に与える影響,固着メカニズムの解明に加えて,試作した工具の加工性能を評価した.その結果,ステンレス鋼でも砥粒の固着力には問題無く,ガラスの加工等の分野であれば産業界でも十分使用可能で有ることが明らかとなった.これら明らかになった結果より,歯科治療等の分野ではチタン等の高価な材料を使用することなく,ステンレス鋼でも虫歯治療用工具として使用できることがわかった.また,医療用の分野のみで使用する工具の場合には工具の消費量が限定されるため,産業界でも使用できる可能性を示せたことは,工具製造におけるコスト問題等でも有効であると判断された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は緊急事態宣言発令や学校休校等による様々なCORONA対策によって例年通りの研究活動時間が取れなかった.実験データに関しては年度後半で改善できたが,実験装置の改造に関する準備が外部企業との接触が制限されるため,十分にはできていない.2021年3月から既に詳細な打合せを進めており,2021年度中には遅れを改善できる予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度の研究計画として,以下の様に研究活動を進める予定である. ○レーザー装置の改造として,現在研究室で所有しているレーザー装置の加工台は一方向への直線運動と回転運動しかできない構造になっているため,曲面へのレーザ照射は行えないため,5軸移動可能な工具保持台を製造し,各種形状の工具へ対応できるように改造する.これに加えて,砥粒噴射装置を元に微量の細粒砥粒を噴射する供給装置の機構を再設計し,試作した供給装置の流量や流速が砥粒の供給に与える影響,砥粒供給部の形状や構造が供給する砥粒径与える影響を検討する. ○加工特性評価装置の改造として,ミーリング加工できるように改造し,ドリル加工とミーリング加工の評価を行い,医師の加工性に関する感覚が評価できるような評価法を検討すると共に,試作されたダイヤモンドバーの工具としての性能評価試験を行う. ○各種形状のダイヤモンドバーを試作し,歯科治療の分野での活用の可能性並びに,産業界での活用の可能性を実験的に検討する.
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Causes of Carryover |
新型CORONAの感染拡大を受けて,当初予定していた通りの研究活動ができなかった.実験データ量としては後半で追い込むことができたが,試作工具を産業用用途での活用を検討するための各種素材が必要にならず,購入等が十分にできなかった.また,装置の改造にかかる費用も外部企業との設計打合せ等が制限されたため,消化しきれなかった. 2021年3月より装置の改造に関する打合せ等も進めており,昨年度と今年度を合算した研究費は十分使えると判断しているため,申請者は特に問題として判断はしていない.
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