2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K04222
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Research Institution | Japan Fine Ceramics Center |
Principal Investigator |
川原 浩一 一般財団法人ファインセラミックスセンター, その他部局等, 主任研究員 (00302175)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ガラス精密研磨 / CMP / スラリー寿命 / 噴霧熱分解法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、ガラス精密研磨用砥粒として市販セリア系砥粒(ランタン固溶セリア)を模擬したセリア系模擬砥粒の合成条件の検討を行った。模擬砥粒合成は、Ce源に硝酸セリウム六水和物、La源に硝酸ランタン六水和物を用い、全カチオン濃度0.4 mol/Lの出発原料溶液を用いて行った。その結果、粒子径約1.3 umの砥粒合成が可能であった。しかしながら、合成砥粒のSEM観察を行った結果、形状がいびつな粒子が多数存在することから、合成した粒子は砥粒スラリーの原料として用いるには適していないことが分かった。そこで、球状粒子を得るための合成条件を検討した。合成中のチャンバー内圧力を加圧、あるいは減圧と変化させた場合、粒子形状への影響はなく、いびつな形状の粒子が合成されることが分かった。一方、原料溶液濃度を低下すると、いびつな形状の粒子が減少することが分かった。そこで、Ce源、La源は変更せず、出発原料溶液濃度を0.2 mol/Lとし、出発原料溶液(500 mL)に酢酸を50 mL添加して噴霧熱分解合成を行った。その結果、比較的球状の砥粒の合成に成功した。合成した球状砥粒の平均粒子径は約1.1 umであり、本研究で用いるには十分であると判断した。 本研究では、スラリー循環式でガラス研磨に用いたスラリー中の砥粒形状等を観察する必要がある。スラリーの寿命挙動には、循環式でスラリーを用いている間にスラリー中に混入する研磨くずが影響を与えていると予想されるが、研磨くずが分散媒中に独立して混在しているのか、あるいは砥粒表面を覆っているのかを明らかにする必要がある。そこで、使用済みスラリーからの砥粒取り出し法の検討を行った。本年度は、まず凍結乾燥法による砥粒成分取り出しを検討した。その結果、分散媒としてイオン交換水を用いた場合には、凍結乾燥法にて分散媒の除去が可能であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、噴霧熱分解合成法でセリア系模擬砥粒の合成を行った。しかしながら、単純に硝酸セリウム六水和物、および硝酸ランタン六水和物を用いただけでは球状の粒子が得られず、噴霧熱分解合成条件の検討に予想よりも時間を費やした。ただし、合成に用いる出発原料溶液の調整によって、研磨試験に使用可能な球状の砥粒合成条件をほぼ確立することができた。球状砥粒合成条件の検討に時間を費やした結果、合成した砥粒を用いた砥粒スラリー寿命挙動を評価するまでには至っておらず、このことが「やや遅れている」理由である。ただし、本年度の検討により、球状の砥粒合成条件がほぼ確立されたため、今後合成した砥粒を用いて研磨試験を行っていく予定である。 一方で、使用済み砥粒スラリーからの砥粒取り出しについては、これまでに行っていた蒸発乾枯法による砥粒取り出し方法ではなく、本年度検討した凍結乾燥法を用いた砥粒取り出し方法の検討を行った。本方法によると、分散媒中に独立して存在する研磨くずと砥粒表面を覆った研磨くずを区別可能であると期待され、次年度以降、その有効性を調べていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度に確立した噴霧熱分解法による球状砥粒合成条件にて、研磨試験を行うための砥粒合成を行い、実際に模擬砥粒を用いた研磨試験を行う予定である。まずは初期研磨特性と、長期研磨特性を評価することで、模擬砥粒を用いた砥粒スラリーの寿命挙動を明らかにしていく予定である。また、比較のために、市販砥粒を用いた同様の評価を行うことで、合成した模擬砥粒が市販砥粒を模擬していることを確認する。すなわち、市販砥粒で認められる砥粒スラリー劣化挙動と、模擬砥粒スラリーの劣化挙動が定性的に一致していることを確認する。模擬砥粒スラリーを用いた研磨挙動と、市販砥粒スラリーを用いた研磨挙動の比較の結果、両者に大きな差異が認められた場合には、その原因究明と対策を行い、研磨条件の検討や砥粒スラリー濃度の変更を検討し、一般に用いられている市販砥粒スラリーの劣化挙動を模擬可能な方策を行う。その上で、種々の劣化段階における砥粒性状の変化(形状、表面付着の有無)に注目した微細構造のキャラクタリゼーションを進める。模擬砥粒を用いたスラリー劣化挙動と、研磨中に生じる砥粒性状の変化から、砥粒が関係するガラス精密研磨用砥粒スラリーの劣化メカニズムについて考察を進める予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は球状の模擬砥粒合成条件に関する検討を行ってきた。その結果、研磨試験に使用するような大量の砥粒合成には至っておらず、砥粒合成に必要な試薬の試料量が少なかったこと、また連続して砥粒を合成するのに必要な噴霧熱分解装置用の消耗品の使用量が少なかったこと、および予定していた情報収集のための国内学会参加を取りやめたことが主たる理由である。 次年度は、本年度に確立した条件を用いて研磨試験が可能な量の模擬砥粒合成が必要であり、試薬使用量の増加、噴霧熱分解装置の消耗品使用量の増加が予想されており、今年度に使用しなかった分を次年度に使用して、研究を加速する予定である。
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