2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K04222
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Research Institution | Japan Fine Ceramics Center |
Principal Investigator |
川原 浩一 一般財団法人ファインセラミックスセンター, その他部局等, 主任研究員 (00302175)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ガラス精密研磨 / CMP / スラリー寿命 / 噴霧熱分解法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、昨年度に確立した噴霧熱分解法によるLa固溶酸化セリウム(LDC)球状粒子合成法を用いて、砥粒の合成を行った。噴霧熱分解法では、再現性良く、組成が精密制御された球状粒子を合成することが可能であるが、合成速度が約1 g/hと低い。そこで、合成装置が連続運転可能なように改造を行い、500 g程度のガラス研磨用LDC砥粒の合成を行った。 合成したLDC砥粒を用いて、アルミノ硼珪酸ガラスを試料としてスラリー循環式にて研磨試験を行った。研磨条件は、スラリー濃度は10 wt%とし、スラリー量は500 g、研磨パッドには発泡ポリウレタン(MH-C15A, ニッタハース製)を用い、研磨圧力を 9.6 kPa、定盤回転速度を150 rpm(250 mmφ)、試料回転速度を150 rpm(120 mmφ)(順方向)とした。研磨速度は試料の重さを1 h毎に測定し、試料断面積からガラス研磨速度に換算した。また、研磨実験は最長で13 h行った。 上記方法にてスラリー循環式による長時間研磨を行った結果、研磨速度の変化が緩やかな初期領域と、研磨速度の低下速度が大きくなる劣化領域が存在することが分かった。これからの結果は、これまでに我々が明らかにしてきた結果と、定性的には一致しており、本研究で行った研磨実験によってガラス精密研磨用砥粒スラリーの劣化挙動をとらえることが可能であったと考えられる。 劣化後のスラリー中の砥粒を観察するため、スラリーを乾燥させたのち、走査電子顕微鏡(SEM)観察を行った。スラリーの乾燥方法は、従来の蒸発乾燥法と、昨年度に検討を行った凍結乾燥法で、両者を比較した。その結果、劣化後スラリー中の砥粒状態は、元の球状粒子形状ではなく、粉砕された状態であることが分かった。しかしながら、スラリー劣化挙動に重要な役割を果たすと考えられる研磨くずの分布状態については明瞭な観察結果が得られず、今後さらなる観察方法の検討が必要であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、昨年度確立した噴霧熱分解合成条件にてセリア系模擬砥粒の合成を行った。しかしながら、砥粒スラリーを10 wt%で作製したため、一度に使用する砥粒量が多く、噴霧熱分解合成法による合成に長時間を要した。そのため、一つの条件での長時間研磨試験を行うにとどまり、スラリー条件等の変更は次年度に持ち越された。次年度はスラリー濃度を低下させること、あるいはスラリー量を減少させる等の対策を行う予定である。 また、本年度の計画では、砥粒スラリー劣化メカニズムを検討する計画であったが、そのために検討を行った長時間研磨後スラリー中の砥粒観察において、蒸発乾枯法と凍結乾燥法で明瞭な差異が認められず、観察結果が本質なのか、試料準備方法に問題があるのかについて切り分けができておらず、当初計画に照らし合わせると「やや遅れている」と判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、噴霧熱分解法による砥粒合成を引き続き行うとともに、本年度に行った長時間研磨試験を、スラリー条件(濃度、量)および研磨条件(研磨圧力、定盤回転速度)を変更した場合のスラリー劣化挙動について検討する。本年度の検討によって、噴霧熱分解法で合成した球状LDC砥粒を用いた場合でも、従来報告されている砥粒スラリー劣化挙動が再現できたため、次年度の長時間研磨試験は引き続き合成した球状LDC砥粒を用いて行う予定である。また、本年度に行ったスラリー条件では、特に砥粒消費量が多く、砥粒合成に長時間を有するため、スラリー条件の検討では、低濃度、少量スラリー条件を中心に検討を進めていく予定ある。なお、低濃度、少量スラリー条件で生じる砥粒スラリー劣化挙動が通常スラリー濃度条件下で生じる砥粒スラリー劣化挙動と大きな差異がないことも確認する予定である。 劣化後の砥粒スラリーの観察方法については、スラリー乾燥方法の課題を解決すべく検討を進める。本年度行った蒸発乾枯法と凍結乾燥法による明瞭な差異が認められない場合には、試料準備がより簡便な蒸発乾枯法を中心に観察を進める予定で、砥粒スラリーの劣化の各段階、すなわち、スラリー劣化初期、中期といった、途中の状態の観察を行うことで、劣化の進行による変化の有無に着目した観察を行う予定である。また、必要があればSEM観察よりも詳細な観察が可能な透過電子顕微鏡(TEM)観察も行う予定である。 次年度は、上述の検討を行うことで、砥粒スラリー劣化メカニズムを明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は消耗品などの物品費はほぼ計画通りであったが、コロナ禍の影響により予定していた情報収集のための学会参加や出張を取りやめたために旅費を使用しなかったことが主たる理由である。次年度は、もし本年度同様に学会参加や出張を取りやめた場合には、研究を加速させるために必要な物品を購入し、本研究の遂行に有効に使用する予定である。
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