2022 Fiscal Year Research-status Report
セルロースナノファイバーの積層造形に適する連続繊維配置設計法の構築と製作物の評価
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20K04227
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
舘野 寿丈 明治大学, 理工学部, 専任教授 (30236559)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アディティブマニュファクチャリング / 曲面積層 / 連続繊維 / セルロースファイバー / 双腕ロボットアーム / 造形パス |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請課題ではセルロースナノファイバー(CNF)材料を機械部品として実用的に利用するための製造方法として、連続繊維と樹脂との複合材料を積層造形する方法に着目し、この製造方法に適する繊維配置設計法の確立を目指している。これを実現する方法として、連続繊維を切らずに表面を包み込むように積層する曲面積層法を開発し、その上で、要求強度に見合う繊維の位置と方向を自動的に算出する造形パス設計法を構築する。令和4年度は、これまでの研究成果を総合して最終成果とするための課題を具体的に設定し、実施した。 目的の実現に必要なソフトウェアアルゴリズムとして、スライスアルゴリズム、強度モデル変換アルゴリズム、造形パス生成アルゴリズムの3つがある。スライスアルゴリズムについては、既にz軸回りの任意の平面でスライスできるようになっている。本年度は、適切なスライス平面を導出する強度モデル変換アルゴリズムの開発に向けて、強度シミュレーションの実現手段の検討および構築を行った。強度モデル変換アルゴリズムは要求強度に見合う繊維配置を導出するものであり、強度シミュレーションがこれを構築する上での重要な位置づけとなる。通常のソリッドモデルであれば市販の有限要素法(FEM)ソフトウェアで可能だが、連続繊維が押し出された形状は複合材料であり、かつ複雑形状でモデル化が困難なため、市販のFEMソフトウェアに持ち込むことができない。このためコンピュテーショナルデザインの技術を用いて、複雑な構造であっても押出し形状の特長を利用して画一的にモデル化するアルゴリズムを開発した。 造形パス生成アルゴリズムとしては、6軸ロボットアームを双腕にして軸数をさらに増やし、動作プログラムにはオープンソフトウェアであるROS2を採用して、特異点回避を行う造形パス生成アルゴリズムの開発を行い、これにより上向きを含む任意の向きへの造形を実現した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
進捗についてソフトウェアアルゴリズムと実機による造形実験とに分けて示す。 本研究において開発すべきソフトウェアアルゴリズムは、スライスアルゴリズム、強度モデル変換アルゴリズム、造形パス生成アルゴリズムに分けられる。このうちスライスアルゴリズムについては、既にz軸回りの任意の平面でスライスできるようになっており、本研究で目標としていた成果は得られている。強度モデル変換アルゴリズムは、自作のソフトウェアによりFEMメッシュを作成し、市販のFEMソフトウェアで解析できるようにする計画であるが、材料が連続繊維と樹脂との複合材料であるために、メッシュ構築が容易ではないことが判明した。このため実現手段の検討に時間を要したが、現在は、その方策が見つかり、開発を進めている。造形パス生成アルゴリズムは、6軸ロボットアームでの曲面積層に向けた造形パス生成アルゴリズムは完成し、目標としていた成果が得られている。ただしこの研究は当初の計画を越えて、6軸ロボットアームを2台配置した双腕ロボットアームによる曲面積層の研究へと展開している。双腕にすることで、ノズルだけでなくベースも自由な姿勢で造形が可能になる。さらに汎用のロボット言語であるROS2を採用することで、多軸運動の動作生成およびシミュレーションを実現している。 実機を用いた造形実験では、造形パス生成アルゴリズムの検証として実施した。当初の計画であった6軸ロボットアームによる凸形状の曲面積層を実現し、精度評価したことに加え、さらなる展開として双腕ロボットアームへ適用した実験も進めている。 以上のことから、おおむね当初の計画通りに進行していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題での実質的な研究としては、おおむね当初の計画通りに行われ、目標としていた研究成果はおおよそ得られている。次年度には、遅れている研究成果の公表を進める。現地で開催される国際会議への参加予定もあり、本研究課題で得られた研究発表を行う予定である。 また、本課題研究を進めている途中に新たに見つかった課題や方法で研究が進行中のものがある。これらの研究も本研究課題に含めて継続して行うことで研究成果を充実させていく予定である。
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Causes of Carryover |
当初の計画では本年度が最終年度であったが、1年間延長して実施するため、次年度使用額が生ずる。延長することとなった主な理由は、CVID-19の影響から国際会議が延期もしくはオンライン開催になり、いくつかの研究発表を見送ってきたためである。次年度には、海外および国内で現地開催される国際会議へ参加し、未発表の研究発表を行う予定であり、そのための旅費および学会参加費に使用する。 また、本課題研究を進めている途中に新たに見つかった課題や新たに着想した方法による進行中の研究においても、消耗品などに使用する。
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