2020 Fiscal Year Research-status Report
製品使用時の人間の感じ方を計測するためのタグチメソッドに基づく技術開発
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20K04232
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Research Institution | Fukushima National College of Technology |
Principal Investigator |
植 英規 福島工業高等専門学校, 電気電子システム工学科, 准教授 (90586851)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 工業製品 / 使い心地 / 生体情報 / タグチメソッド / 品質工学 / MTシステム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,製品の使い心地を定量的に評価することを目的とし,製品使用中の人間の生体情報を分析する技術開発を行っている。R02年度は,生体情報の測定に必要な機器の導入等を行うとともに,実際のデータ収集,分析ソフトウェアの開発,実験による検証を行った。 生体情報として脳波(1ch)と心拍(容積脈波)の波形情報を用いた。各波形から1秒毎に周波数特徴を抽出して多次元の多変量情報パターンを構成し,これをMTシステム(Mahalanobis-Taguchi System)に基づく提案手法で分析した。MTシステムでは,単位空間と呼ばれる基準パターンを定義し,評価対象のパターンと比較した時の差異の程度を1秒毎にマハラノビス距離(Mahalanobis’ Distance : MD)で定量化する。本研究では評価の基準を安静状態とし,適切な安静状態を作るために複数の作業を準備した。 提案手法の具体的な検証では,(1)音楽を聴いた際の人間の感じ方,(2)コンピュータのマウス操作性を選定した。その結果,音楽を聴いた際の感じ方では,実験協力者が不快と感じた曲におけるMDが増大する傾向を示し,コンピュータのマウス操作性については,複数のマウス設定の中でも,特に実験協力者が使い難いと感じた設定でのMDが大きくなる傾向が見られた。これらの結果より,本実験によって,提案手法で人間の感覚と一致する傾向のMDが得られる可能性が示唆された。なお,現時点では1秒毎のMDにはばらつきが大きく,より安定した分析を行うための技術開発などが必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
R02年度の実施事項として,個人差がある生体情報を用いて安定した評価基準を作る手法を検討した。(1)異なるジャンルの音楽を聴いた際に感じる良し悪しを定量化する実験,(2)コンピュータのマウス操作を評価対象作業(タスク)とした実験を実施した結果から,評価対象に適した安静タスクの選定方法が示唆された。これらの実験では,生体情報として脳波(1ch)と心拍(容積脈波)を用い,実験協力者によるデータ収集とMTシステムによる分析を行なった。また,R02年度後半からは,新たな生体情報の収集と分析にも着手した。生体情報からの特徴抽出では,現在のところ,これまで検討してきた周波数特徴に基づく手法を用いているが,新たな特徴量の具体的な検討も行っている。また,MTシステムで得たMDの妥当性を検証するために,実験協力者本人からの聞き取り結果との比較の他にも,バイオマーカーに着目して測定装置の導入と予備実験を行なった。 本年度は新型コロナウィルス感染拡大の影響のため実際のデータ収集の開始時期が遅れたものの,以上の進捗から総合的に判断すると,研究は概ね順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
R02年度の取り組みでは,提案手法によって算出した1秒毎のMDのばらつきが大きいことが確認できたため,今後はこれを低減するための検討を行う。この検討は,データ収集(センシング)に関する検討と,データからの特徴抽出に関する検討の両面から進める。また,新たに導入した生体情報の分析も予定通りに進める。 提案手法の検証のための実験は,引き続きR02年度に構築した実験システムを活用する。また,MDの妥当性検証では,これまで実施してきた実験協力者への聞き取りだけでなく,バイオマーカーを用いることにも取り組む。
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Causes of Carryover |
初年度は新型コロナウィルス感染拡大の影響で,参加予定であった学会や研究会が中止あるいはオンライン開催へ移行し出張旅費の支出がなかった。同様に,所属校(高専)において学生の登校が制限されたなどの理由で,学生の実験協力者によるデータ収集を開始する時期が遅れた。実験回数も当初予定よりも少なくなったため,謝金としての支出額が少なかった。 2年目以降も学会等はオンライン開催の場合も多いと考えられるが,初年度に比べて出張ができる場合も出てくると考えられる。また,実験協力者によるデータ収集も夏季期間をめどに昨年度より増やすことを考えており,予算の使用は問題なく行うことができると考えている。
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Research Products
(1 results)