2021 Fiscal Year Research-status Report
高専発 超電導磁気ギア搭載 宇宙用掘削ドリルの基礎研究開発
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20K04233
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Research Institution | Anan National College of Technology |
Principal Investigator |
原野 智哉 阿南工業高等専門学校, 創造技術工学科, 教授 (20332067)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
綿崎 将大 広島商船高等専門学校, その他部局等, 助教 (50791125)
田中 淑晴 豊田工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (70455137)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 磁気歯車 / 宇宙環境 / ネオジム磁石 / 減速比 / 軸方向磁場 / 伝達効率 / 超伝導材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
宇宙環境を模した低温真空チャンバーを用い,磁気ギアの一方の磁石ディスクを真空度0.1Pa,雰囲気温度-48℃の低温真空磁気歯車実験を行い,伝達トルク2Nm,回転速度200rpmで伝達効率は32%であり,大気圧常温下の伝達効率より10%程度低下した.伝達効率10%程度低下する原因は,主に磁気歯車以外のベアリングの低温転がり抵抗が上昇するためだと推察された.その後,磁気ギアすべてをチャンバーに挿入し低温-30℃,真空度1Paの低温真空環境下で実験したところ,常温大気圧環境下では伝達トルク2Nm,回転速度400rpmで最大伝達効率66%であった.常温真空環境下では52%(▲14%)低下,低温真空環境下では33%(▲9%)低下することが分かった.真空にすることによる効率が14%減,さらに低温が加わることにより9%減となる.低温真空環境においては,ベアリングなどへの摩擦損失が増加すると考えらえる.また,磁気ギアの効率に及ぼす減速比,容器の材質や肉厚の影響について,過渡応答磁場解析から検討も加えた.伝達トルクを増加しても発生する渦電流損失は回転速度のみに依存するため,一定の値を示す.増速すると渦電流損失が増えるが伝達動力も増加するため,伝達効率が向上することが分かった.また,導電率の高いA5052材より導電率の低いSUS304材で渦電流損失が小さく,伝達効率が向上することも明らかにできた.容器の肉厚はエアギャップの制限もあり,1㎜と2㎜しか検討できなかったが,肉厚の影響はほぼ無視できることが分かっている.なお,現在 超電導材料を用いた多磁極磁石の創成に挑戦しているが,同一のバルク内での多磁極化は困難であることが分かっている.さらに,減速比3のネオジム磁石を用いた磁気ギアによる掘削ドリルの試作も着手を開始し,プロトタイプの開発まであと一歩のところまで来ている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
低温真空環境下で磁気ギアの磁石ディスクの一部を曝露(宇宙探査ローバー内からの駆動想定)した場合と,磁気ギアすべてを低温真空環境下に曝露(掘削ドリル応用想定)の2つの実験が完了しており,宇宙環境下における利用可能性が示され,さらに伝達効率の課題も明らかにされた.また,磁気ギアの伝達効率に及ぼす減速比,容器材質などの影響についても過渡応答磁場解析から検討されている.また,実験だけでなく,月面掘削を想定した磁気ギアを搭載した2重反転ドリル設計開発に着手しており,未完ではあるもののある程度の試作も完了している.超電導バルクの多磁極化の検討はあと一歩ではあるものの概ね順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は最終年度であり,予算も限られているため,超伝導バルクを別体にし,現在のネオジム磁石による磁気ギアと同じ構成にする必要があり,超電導磁石の創成に着手する.また,ネオジム磁石を用いた磁気ギア搭載の月面掘削ドリルの設計開発を今年度中に実施しプロタイプを完成し掘削性能を明らかにしたい.
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Causes of Carryover |
未使用額が生じた理由は,先行して磁気ギアの低温真空中実験の早期実現のため,低温真空チャンバー開発および同軸磁気ギア試験機の開発を急いだため,超電導バルクの多磁極化の検討および磁気歯車を搭載した月面掘削ドリルの再設計・再試作のコスト分を残し,満額の支出を控え,次年度に繰り越した.金額の差額が生じた.未使用額を含め,超電導バルク材を用いた多磁極磁石化および月面掘削ドリルの再試作費用に充て,月面掘削性能を明らかにするとともに,研究内容について共同研究者と打ち合わせを実施し,成果を設計学会等で報告する.
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