2020 Fiscal Year Research-status Report
Model Development of mesoscale simulation on friction and wear of Boundary lubrication
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20K04245
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
杉村 奈都子 東京都市大学, 付置研究所, 研究員 (00563959)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉村 剛 国立極地研究所, 国際北極環境研究センター, 学術支援技術専門員 (80455493)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 計算機シミュレーション / トライボロジー / 境界潤滑摩擦 / SPH法 / メソスケール / 粗視化 / マルチスケールモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
境界潤滑摩擦モデルの一つとして固体‐液体共存モデルを作成し、固体せん断による基本的な流体挙動を確認した。 固体摩擦については、2020年11月より富岳の利用を開始し、大規模計算を図った。ただし、従来用いていたコードでは高並列計算に対して記載にロスの多いことが分かり、本格的な大規模計算に取り掛かるのに少々時間を要した。最終的に、用いているコードのひな形であるFDPSが富岳で性能を発揮する条件も勘案して、従来コードの修正バージョンにおいて大規模計算を本格的に開始することが叶った。この富岳対応のために、実界面性状での計算はテスト範囲にとどまった。一方で、発熱スキームの妥当性を物理的に明解にし、学会等で発表した。さらに、界面間相互作用のマルチスケール化モデルの開発にも着手した。すなわち、MC法のタイムステップを実時間に対応させ得るMCBD法を用いて、粒子間相互作用のマルチスケール化が図れるようにスキームを整えた。MCBD法は、原理的に外場について利用できるものであるため、動的・非平衡条件下における界面間相互作用のマルチスケール化に有用であると考えている。 一方、一般的なWebブラウザ上で動作する可視化システムCedarPlotについては、テキストデータに加えバイナリデータの入力にも対応できるようにして、データ読み込みの高速化を実現した。さらに、ポリゴンでの描画はメモリ使用量が大きいため、WebGLの一機能を用いた描画モジュールを新たに作成した。簡易的なWebアプリケーションに組み込んでテストしたところ、従来の手法に比べて100倍程度の粒子数を描画できており、現在、このモジュールをCedarPlotに載せる方法を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
境界潤滑摩擦モデルの発熱スキームについて、その妥当性を物理的に明確にした。すなわち、当モデルにおいて界面相互作用エネルギーが塑性ひずみエネルギーに変換されていることを明示し、学会で発表した。また、固体‐液体共存の基本モデルを整え、Quette流れなど固体せん断での基本的な流体挙動を確認した。 11月から富岳での大規模計算を開始した。固体摩擦について動作確認を始めたが、従来コードには数百ノード、千プロセス規模の高並列計算に対して無駄な記述があると分かり、併せて、コードのひな型であるFDPSが富岳上で動作する条件(コンパイルモードなどやFDPSのバージョンなど)があることも分かった。これらを踏まえ、従来コードの修正版において富岳での計算を本格的に開始した。ただし、この富岳対応に少々時間を要したため、実界面性状での計算がテスト範囲にとどまった。一方で、界面間相互作用のスケールアップモデルの開発に着手した。すなわち、MC法のタイムステップを実時間に対応させるMCBD法を用いて、粒子間相互作用のスケールアップについてスキームを整え、学会でも一部触れた。この方法は外場下で利用でき、非平衡な界面間相互作用のスケールアップに有用であると踏んでいる。その実用性については、高分子系のレオロジーを対象にかつて議論しており、その内容を今年度、論文2本にまとめてアクセプトされた。 可視化WebアプリケーションCedarPlotは、テキストデータに加えバイナリデータでの入力機能を追加し、データ読み込みの高速化を実現した。ポリゴンでの描画はメモリ使用量が大きいため、WebGLのポイントスプライト機能を用いた描画モジュールを新たに作成した。簡易的なWebアプリケーションに組み込みテストしたところ、従来の手法に比べて100倍程度の粒子数を描画できた。このモジュールをCedarPlotに載せる方法を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度、大きく5項目に取り組む。1.境界潤滑摩擦モデルのうち、固体‐液体共存のモデルの改良を進める。すなわち、流体潤滑摩擦領域(EHL)から境界潤滑摩擦領域まで、例えば摩擦係数などを連続的に表現できるようにする。このEHLについては、ミクロスケールでの実験の実施も視野に入れている。2.21年度、富岳利用の一般課題に採択されたため、固体摩擦ならびに固液共存摩擦について、粒子数を大きく、表面性状を複雑にして富岳にて計算を進める。3.MCBD法を用いて、外場下における分子間相互作用を粒子間相互作用にマッピングするテスト、同じく界面間の分子間相互作用を界面粒子間相互作用にマッピングするテストを進める。可能であれば、それを大規模計算の界面相互作用モデルに組み込むことを検討している。4.可視化システムCedarPlotについては、多粒子(1000万規模)の表示が容易になるよう、20年度に作成した、WebGLのポイントスプライト機能による描画モジュールを、CedarPlotに組み込むことを目指す。5.SPHでの境界潤滑摩擦計算について、論文投稿する。20年度は、界面相互作用のマルチスケール化に利用できるMCBD法の研究について第一著者として論文を2本上梓した。しかし、これはかつて高分子のレオロジーについて研究した内容をまとめたもので、本採択課題の成果とすることはできなかった。他にコードひな形であるFDPSを用いた研究について共著者としての論文3本がアクセプトされたが、それも本課題の直接的な成果とは言えなかった。21年度は本課題についての論文を第一著者として上梓する。また、国際学会での発表も行う予定である。 なお、最終年度までには、エネルギーの散逸機構を含む総合的な境界潤滑摩擦モデルを、可視化を含めて完成させることを目指す。
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Causes of Carryover |
年度内に不足が生じないよう、3月中に研究協力していただいている客員先へ出張するための費用を少し残しておいたが、結局新型コロナウィルスの再びの流行により出張できなかったため、少額ではあるが次年度使用額が生じた。
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Remarks |
(1)研究代表者:杉村奈都子の個人HP(2)オンライン描画アプリケーションCedarPlotの公開コード
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Research Products
(5 results)