2021 Fiscal Year Research-status Report
Model Development of mesoscale simulation on friction and wear of Boundary lubrication
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20K04245
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
杉村 奈都子 兵庫県立大学, 情報科学研究科, 客員准教授 (00563959)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉村 剛 国立極地研究所, 国際北極環境研究センター, 特任研究員 (80455493)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 計算機シミュレーション / トライボロジー / 境界潤滑摩擦 / SPH法 / メソスケール / 粗視化 / 焼付き |
Outline of Annual Research Achievements |
SPH法を用いたメソスケールの境界潤滑摩擦モデルの開発を継続して進めた。 昨年度に開始した富岳での計算を、2021年度は年間を通して本格的に実施した。富岳の利用により、それまでの約10倍の粒子数を用いた高解像度、システムサイズ増での計算が可能となり、荷重負荷条件での長時間の摩擦過程を再現できるようになった。具体的には、荷重下のせん断において、個々アスペリティの接触部が発熱を伴い塑性を示しはじめ、その塑性域が隣接アスペリティ間で界面上に進展し、やがて接合する様子を明らかにした。マクロスケールの実験から示唆されていたことではあるが、メソスケールでの再現は目新しい。 また、焼付き前兆候について時間成分を含む指標の提案を検討した。マクロ試験でのトルクの急上昇に匹敵するような、メソスケールでの指標をイメージしている。今回、せん断固体のせん断方向領域別の摩擦力(各成分)の時間積算値あるいは時間平均値の推移を、焼付き指標と仮定した。焼付かない場合にはとりわけ摩擦力のせん断成分はゼロに漸近するはずである。せん断を繰り返し塑性の進展が進む場合と一度の接触による摩耗でしばらくアスペリティ接触が回避される場合とで、とりわけ摩擦力の時間平均値に特徴的な差異がみられた。 一方、汎用Webブラウザ上で動作する計算結果の可視化システムCedarPlotについては、100万粒子以上の描画を小さな計算機リソースで行えるように大幅に作り変えた。具体的には、テキストデータをバイナリーデータに変換して読み込みを高速化する機能を追加し、さらに描画に使用するメモリの最適化を行った。昨年度は簡易的Webアプリケーションに組み込んでテストしていたが、2021年度はCedarPlot本体に組み入れた。これらは、旧来のバージョンとともに公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
富岳での大規模計算は、2020年度のテスト計算とコード修正の結果、2021年度は順調に予定していた多条件で進めることができた。とりわけ年度後半は、追加資源も含め100%、資源を使い切った。高解像度、鉛直システムサイズ増での計算が可能となり、荷重下のせん断において、個々アスペリティの接触部が発熱を伴い塑性を示し、その塑性域が隣接アスペリティ間で界面上に進展してやがて接合する様子を明らかにした。これはマクロスケールの実験から示唆されていたことではあるが、メソスケールでの再現は目新しいところである。この成果を、物理学会、トライボロジー会議、富岳成果報告で発表し、南太平洋大学向けのセミナーでも講演を行った。主著論文も現在投稿中である。 可視化システムCedarPlotも、テキストデータをバイナリーデータに変換して読み込むことにより高速な読み込みを実現する機能を追加するとともに描画に使用するメモリの最適化を行うよう大幅に作り変えることで、100万粒子以上の描画を小さな計算機リソースで実施できるようになった。 一方で、動的環境課における界面間相互作用のマルチスケール化モデルの開発については、今年度は時間の都合上、進展させることができなかった。こちらは次年度に一定のめどを立てたい。潤滑油を含む固液共存モデルについても、このマルチスケール化と並行してさらに進展させたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度、以下に取り組む。・MCBD法を用いて、外場下における分子間相互作用を粒子間相互作用にマッピングするモデルを進展させる。摩擦界面の反応モデルに反映させられるとなおよい。・境界潤滑摩擦モデルのうち、固体‐液体共存のモデルを完成させ、流体潤滑摩擦領域との連続的な計算が可能となることを目指す。・メソスケールシミュレーションにおける焼付き指標の検討をさらに進める。・可視化システムCedarPlotにおいて、2021年度に改良したバージョンにおいても動画作製機能を追加し、簡便な分析計算(物理量の領域平均値、時間平均値、領域差分、時間差分など)機能も追加できるとなおよい。 以上により、メソスケールの境界潤滑摩擦モデルの一定の完成を見ることが目標である。
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Causes of Carryover |
希望していた図書が予想に概して、会計年度内に納品できないと分かったため。
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Research Products
(5 results)