2020 Fiscal Year Research-status Report
Enhancement of Gripping Characteristics for Soft and Slippery Objects Using Double-Scale Protrusions and MPS Simulation
Project/Area Number |
20K04246
|
Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
高 三徳 明星大学, 理工学部, 教授 (00337271)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中佐 啓治郎 広島国際学院大学, 工学部, 研究員 (80034370)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | ステンレス鋼 / スパッタエッチング / プラズマ窒化 / シリコーンシート / ファイバーシート / 摩擦試験 / グリップ力 / FEM応力解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) SUS420J2およびSUS316ステンレス鋼から直径20mm、高さ5mmの円板試験片を切り出し、250Wで1~2時間のスパッタエッチングを行って、底面直径が約20μmの円錐状突起物および直径が1μm以下の円柱状突起物をもつグリップ試験片を作製した.なお、SUS420J2試験片については、プラズマ窒化により突起物を強化した.また、SUS420J2鋼素材をエメリーぺーパー#1600まで研磨した試験片も用意した.これらを用いて軟質シリコーン板の摩擦(グリップ)試験を行った結果、各試験片の静摩擦係数はそれぞれ1.1、0.93、0.64となり、SUS420J2プラズマ窒化試験片のグリップ力が最も大きく、スパッタエッチングのままの試験片、研磨試験片の順にグリップ力が小さくなった.グリップ性能の差は、シリコーン板に水およびマシン油を塗布した場合にさらに大きくなった. (2)ワイヤ放電加工機を用いて製作した三角溝の表面に微細突起物を形成させ、シリコーンチューブの摩擦試験を行った.その結果、この二段階突起物試験片を用いれば、軟質チューブ状物体でも確実にグリップできることが分かった. (3)軟質材料をグリップしたときの突起物先端に加わる応力を、有限要素法(FEM)解析により調べた.その結果、突起物の前面は軟質材料から圧縮応力を受け、特に先端の応力が大きいこと、前方に位置するに突起物は後方にある突起物より大きい応力を受けることが分かった. (4)軟質ファイバーシート(木綿、ポリエステル、マイクロファイバー)についても、SUS420J2鋼およびSUS316鋼の微細突起物試験片は、#100研磨溝および粗大溝をもつ試験片に比べて大きなグリップ性能をもつことが分かった. (5)チタンおよびチタン合金では、スパッタエッチング条件を変えることにより微細孔と微細突起物の両方を形成できることが分かった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験装置の準備、予備実験による試験条件の決定とデータ処理、粒子法ソフトの使用法習得など、研究環境の構築に時間かかったため、予定していた研究のうち以下の項目について、やや遅れが生じている. (1) 一次突起物として、NC工作機械を用いてピッチがミリメートル長さの正弦波状、台形波状、円弧状などのさまざまな形状の突起物を作製することができなかった.また、ファイバーシートのグリップ試験は大気中で行ったが、水中、油中などの滑りやすい液体中でのグリップ試験はまだ行っていない. (2) 軟滑材のグリップシミュレーションと突起物設計ソフトの開発については、粒子法の適用準備が遅れている.
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)上記の各種一次突起物を作製し、これらにスパッタエッチングにより二次突起物を形成させる.この二段階突起物試料を、硬さの異なる種々の軟質高分子板(表面に水・油を塗布)に押し付けてグリップ力(摩擦力)を測定する.また、軟質物体の形状をパイプ状、球状、任意の曲率半径をもつ形状に変化させ、グリップ力を測定する.さらに、微細孔と微細突起物の両方が形成される工業用純チタンおよびチタン合金試験片を作成してグリップ試験を行う.各種のグリップ試験を多数行うことにより、突起物設計ソフトの開発に必要なデータを蓄積する. (2) CADシステム・応力解析ソフト・粒子法ソフトの組み合わせにより、二段階突起物および油膜・軟滑材のモデルを作成し、二段階突起物で軟滑物体をグリップしたときの軟滑物体の変形およびグリップ力をシミュレーションする.実験データとこれらのシミュレーション結果をもとに、任意の形状・任意の変形特性をもつ軟滑物体の損傷(永久変形)を極力避けながら確実にグリップするには、どのような形状の二段階突起物を設計すればよいかを選択できる汎用ソフトの開発を準備する.
|
Causes of Carryover |
研究分担者に次年度使用額が生じた理由は以下の通りである.担当した摩擦(グリップ)試験は、当初、大型の引張り試験機の変位速度調整機構を利用して行うことを計画したが、他の研究者の引張り試験機利用スケジュールと重なることがあり、引張り試験機と摩擦装置の接続・取外しが煩雑だったことから、摩擦試験の大部分を手動で行った.そのため、最大摩擦係数(グリップ力)は求まったが、突起物による軟質物体のグリップ開始・離脱過程を知ることができなかった.そこで、本年度の予算を残し、次年度の配分予算と合わせて変位速度と摩擦力の関係を正確に記録できる小型の引張り試験機(容量500N)を購入することとした.この試験機により、軟質物体のグリップ過程・グリップ機構の解明と摩擦試験の効率化を目指したい.
|