2020 Fiscal Year Research-status Report
進化的計算法を用いた集水装置付き軸流水車の多目的最適化と集水増速作用の解明
Project/Area Number |
20K04258
|
Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
西 泰行 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (50585122)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 小水力 / 水車 / 軸流羽根車 / 集水装置 / 開水路 / 自由表面 / 進化的計算法 / 多目的最適化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,水深の浅い開水路流れを利用する集水装置付き軸流水車の性能特性を単相流れ場で制御することで,自由表面流れ場において高出力かつ低推力を実現しうる多目的最適化設計法を構築するとともに,集水増速作用を解明することを目的とする.そこで,水深の浅い開水路において出力増大に寄与しない圧力回復効果を抑え,背圧減少効果を高めることで,出力を最大化しつつ推力を低減させることを試みる. 令和2年度は,羽根車と集水装置で構成される本水車の集水装置のみを対象とし,集水装置のディフューザ長さ,つば長さ,両狭まり角,両広がり角の4つを設計変数とし,出力係数,推力係数,圧力回復係数,背圧係数の4つの性能特性を目的関数とした多目的最適化設計法を構築した.本設計法は実験計画法としてL9直交表,応答曲面法としてKriging法,多目的最適化手法としてNBI法を採用した.性能特性のサンプリングデータの取得は,計算負荷を低減させるため,自由表面を考慮しない一様流れを仮定した定常単相流解析により行った.探索した4つの目的関数のパレート解からデータマイニング手法として自己組織化マップ(SOM)を用い,最適解候補の水車を選定した.この水車に対して定常単相流解析を行い,性能特性を評価した.求める性能特性が得られるまでこれを3回繰り返すことで最適化水車を得た.最適化水車は原型水車に対して出力係数が-0.9%,推力係数が+6.7%,圧力回復係数が-16.1%,背圧係数が+12.8%であった. この最適化水車に対し,開放型回流水槽実験装置を用いて性能試験を行うとともに,実験装置を改造し,2分力計を取り付けることで集水装置に作用する推力を測定した.その結果,最適化水車は原型水車に対して推力係数(集水装置のみ)が3.5%増加したが,出力係数が9.0%向上し,実際の開水路で推力を抑えつつ出力を向上させられることを実証した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和2年度の研究では,開水路で作動する水車において集水装置の4つの設計変数に対して,出力係数,推力係数,圧力回復係数,背圧係数の4つの性能特性を目的関数とし,定常単相流解析を用いて計算負荷を抑えた多目的最適化設計法を構築した.本設計法により原型水車に対して出力係数が-0.9%,推力係数が+6.7%,圧力回復係数が-16.1%,背圧係数が+12.8%となる最適化水車を得ることができた. この最適化水車に対して,令和3年度に計画していた開放型回流水槽実験装置を用いた性能試験(出力測定)を前倒しで実施した.また,当初計画していなかったが,実験装置に2分力計を取り付ける改造を行い,集水装置に作用する推力を測定した.その結果,最適化水車は原型水車に対して推力係数(集水装置のみ)が3.5%増加したが,出力係数が9.0%向上した.したがって,単相流解析を用いて出力係数および推力係数が同等で,圧力回復係数を小さく抑え,背圧係数が大きくなるように多目的最適化した水車が,実際の開水路で推力を抑えつつ出力を向上させられることを実証できた. さらに,令和3年度に予定していたVOF法による自由表面を考慮した混相流解析モデルの作成を行い,現在,実験と同一条件での計算を前倒しで実施中である.
|
Strategy for Future Research Activity |
令和2年度に前倒しで実施し,現在計算中の集水装置のみ最適化した水車の混相流解析を完了させ,実験結果と比較検討する.本解析結果の妥当性を確認した上で性能特性および水深を含む流れ場を詳細に調べ,性能向上メカニズムについて検討する. また,令和4年度に予定していた羽根車と集水装置を同時に多目的最適化する設計法の構築を前倒しで実施する.これは,最適化水車の性能特性を自由表面流れ場で検証するための混相流解析の計算負荷が想定より大きかったことを考慮しての対策である.これにより,複数の設計コンセプトの最適化水車を早期に求め,令和3年度中に混相流解析の計算を進めておくことが可能となる.
|
Causes of Carryover |
極少額の20円の残額が生じたが,次年度の助成金と合わせ,熱流体解析ソフトウェアの年間保守費、羽根車と集水装置を同時に多目的最適化した水車の製作費として使用する。
|