2021 Fiscal Year Research-status Report
ノズル外表面温度に基づく圧縮性内部流れの診断法(衝撃波を伴う流れの温度回復係数)
Project/Area Number |
20K04270
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
片野田 洋 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (40336946)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 超音速流れ / 内部流れ / コールドスプレー |
Outline of Annual Research Achievements |
ノズル外表面温度から細長いノズル内の超音速内部流動を診断する本研究は,ノズル出口近傍において内部流動とは無関係のノズル外表面の温度上昇がノズル出口近傍の診断精度を低下させることが分かっている.この温度上昇は,断熱膨張で温度が低下したノズル出口端面への大気からの熱伝達が原因であると考えた. そこで,令和3年度はノズル出口端面を大気から遮断する樹脂製の「後続キャップ」を製作した.これは軸方向長さが10mmで,中心に穴を設けている.上流側の穴の直径は,ノズル出口直径と同じである.SUS製のノズル出口に取り付けることでノズル出口端面を大気から遮断する.数種類の後続キャップを製作して実験を行った結果,ノズル出口近傍の非物理的な外表面温度上昇を約1.2℃抑制できることが分かった.しかし,依然としてノズル出口近傍で非物理的な温度上昇が発生した.これをさらに抑制することは次年度の課題である. 本実験を行った際,貯気温度を高くするほど貯気室の全温度が無視できない程度に低下することが分かった.これは,実在気体効果(ジュール・トムソン効果)である.常温の気体を作動気体として使用する圧縮性流れの研究では,通常はジュール・トムソン効果は考慮しないことが多い.しかし,研究の結果,本診断法ではジュール・トムソン効果による貯気温度の低下が内部流動状態の診断精度に無視できない影響を与えることが分かった.そこで,ジュール・トムソン効果を考慮して実験を行った結果,マッハ数2.0程度までの超音速内部流れの温度回復係数は0.85~0.86となることが分かり,かつ内部流動状態の診断精度が向上することが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度の成果として,ノズル出口端面に樹脂製の後続キャップを取付けることで,本診断法の誤差原因となっているノズル出口近傍の非物理的な外表面の温度上昇を抑制できることを見出した.これにより,本診断法の測定精度が向上した.また,作動ガスの膨張に伴うジュール・トムソン効果によるガス温度の低下を考慮することで温度回復係数をより正確に求めることが可能となり,これによっても本診断法の精度向上を成し遂げることができた.よって,令和3年度の研究はおおむね順調に進展したといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度の研究成果を受けて,今後の研究の推進方針は以下のおとりである. 1)ノズルを厳密に断熱状態とし,ノズル出口付近における入熱を限りなく0に近づける手法を考案する. 2)令和3年度の研究では,ノズル内流れの静圧データを使用してジュール・トムソン効果を考慮し,内部流動状態の診断を行った.しかし,実用ノズルには静圧孔を設けることができない.そこで,静圧を用いることなくジュール・トムソン効果を考慮してよどみ点温度を求める手法を確立する.
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