2020 Fiscal Year Research-status Report
演繹的アプローチと帰納的アプローチを用いた振動燃焼の縮約モデ ル開発と予知
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20K04275
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
堤 誠司 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 主任研究開発員 (10446601)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 太郎 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 主幹研究開発員 (00446600)
赤嶺 政仁 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (00835465)
尾亦 範泰 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 宇宙航空プロジェクト研究員 (80849258)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 振動燃焼 / ロケットエンジン / 数値流体力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
振動燃焼研究のベンチマーク燃焼器であるContinuously Variable Resonant Combustor (CVRC)を対象に,圧縮性Large-Eddy Simulation (LES)を用いた解析を実施した.数値実験には,JAXA内製プログラム LS-Flow を用いて圧縮性LES解析を行った.酸化剤入口管路の長さは14cmに固定し,酸化剤噴射温度を変化させることで振動燃焼の有無,振幅変化,遷移過程に関するデータベースを作成した.過去の研究から700 Kから720 Kへと酸化剤噴射温度を上昇させると1次長手モード(1Lモード)の振動燃焼が増幅することが分かっていることから,その700 K,720 Kの前後で振動燃焼が消えて乱流燃焼に起因するほぼランダムな圧力振動(combustion noise)となるまで徐々に温度を変化させた数値計算を実施し,振動燃焼に関するデータベースを作成した.計算は東京大学のスーパーコンピュータOakbridge-CX (Intel Xeon Platinum 8280)を1624コア,もしくはJAXAのスーパーコンピュータ (Fujitsu FX100)を1600コア利用し,1条件辺り20日間程度の計算時間であった.660 K,1600 Kでは1Lモードの燃焼振動が抑制され,combustion noiseのみが観察された.1300 Kや1400 Kはこれらの中間で,1Lモードの燃焼振動とcombustion noiseがほぼ同程度の振幅となった.いずれの温度条件も実時間で10 msecほどの統計データを取得した.1Lモードの周期は1400 Hz程度であることから10周期以上の振動が含まれる.以上のように,1Lの燃焼振動とcombustion noiseに関する学習データを大量に作成することができた.次年度以降では,この学習データを利用し,振動燃焼発生に関する因果関係を明らかにし,予知・制御するモデル構築を行っていく予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CVRCを対象に圧縮性LESを利用し,酸化剤噴射温度を徐々に変化させた数値解析をスーパーコンピュータ用いて実施した.その結果,振動燃焼の有無,振幅変化,遷移過程に関する解析結果を得ることができた.数値解析を用いることで3次元の詳細な流れ場の情報を取得できたことから,振動燃焼発生に関する因果関係を明らかにし,予知・制御するモデル構築に向けて,大変有益なデータベースを構築できたと言える.また,本年度は1Lモードの増幅現象に対して,動的モード分解(DMD),位相平均法を利用した演繹的な解析,また時系列データの因果関係を調べるクラスタリング移動エントロピーを利用した帰納的な解析も先行して行った. 以上のことから,おおむね予定通り進捗しているとみなすことができる.
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Strategy for Future Research Activity |
振動燃焼の予測に向け,燃焼器内の時系列変動状態を予測する縮約モデルを開発することを目指す.そのため,作成したデータベースを使い,combustion noise, 振動燃焼,また遷移過程に関して位相平均法等を利用した演繹的解析と,クラスタリング移動エントロピー等による帰納的解析の双方を行い,流れ場を調べる.そして,乱流・化学反応・音響の複合現象の中から振動燃焼現象の説明変数,またその特徴量を抽出することを目指す.抽出された説明変数を用いて,燃焼状態を予測可能な非線形回帰モデルを開発することも同時に目指す.
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Causes of Carryover |
計算機使用料が当初予定から差額が発生したため.研究計画を加速させるため,次年度以降に物品費とする予定である.
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