2021 Fiscal Year Research-status Report
バイオメカニクスモデリングに基づく腎機能と慢性腎不全機序の理解
Project/Area Number |
20K04281
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
坪田 健一 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (10344045)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅原 路子 千葉大学, 大学院工学研究院, 准教授 (30323041)
中田 敏是 千葉大学, 大学院工学研究院, 准教授 (80793190)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | バイオメカニクス / レオロジー / 微小循環 / 腎臓 / 計算機シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,力学量の時空間的な分布に着目し,連続体力学と流体力学を駆使したバイオメカニクスモデリングを通じて,腎臓の生理的な機能と病変機構の一端を明らかにすることを目的としている.本年度は,以下の点について研究を進めた. (1) 血管分岐の非対称性が流れに与える影響 前年度に構築した近接する2世代の血管分岐構造に対して,流体力学解析を行い,血管構造の非対称性が流量分布と圧力分布をどのように決めるのかを明らかにした.たとえば,血管分岐が非対称なため,同世代の血管において,娘血管の数が3から10に増えると,平均流量に対する流量の標準偏差の比(比標準偏差)は,0.4から1.0に増えることが示された. (2) 血管構造が腎臓内の血流分布に与える影響 前年度に構築した腎臓全体の血管網構造を用いた流体力学解析を行い,血管分岐の様式と数の関数として,血流量と血圧を求めた.その結果,ネフロンを通過する血流量および血圧の空間的なばらつきは,腎臓全体の血管網構造に0.2-0.38決まり,その影響の程度は,血管半径のばらつきが与える影響と同程度かそれより大きいことがわかった.たとえば,血流量の比標準偏差は,腎臓全体の血管網構造によって0.2~0.38,血管径のばらつきによって0.16,となった.また,実験で測定された腎臓の血流をうまく再現するための主要なパラメータとして,Strahler orderではなく,血管の数と分岐様式が重要であることも確認した. (3) 微小血管における血流挙動を明らかにするために,血球の回転運動および血管壁面効果が血球分布に与える影響を検討した. (4) 血流の自己調節能を考慮するため,myogenic responseを考慮した血流モデルのプロトタイプを作成し,その基本的特性を検討した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腎臓の血管形状およびそれに応じた血流挙動のモデリングが順調に進んだ.その結果,血流量および血圧が腎臓全体の血管網構造によって決まる様子の一端が明らかになり,腎臓内の血流特性における血管網構造の重要性を具体的に示すことが出来た.
|
Strategy for Future Research Activity |
腎臓内部の血流分布の詳細を表現するため,血管構造の詳細なモデリングを一層進めていく.同時に,血圧および血流に応じた血管構造の能動的な応答について,モデリングを進めていき,血管構造との相互作用に応じた血流特性を明らかにしていく.
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は,コロナ禍の影響で旅費が使用できなかったためである.次年度は,コロナ禍の影響が軽減されることを見込み,本年度からの繰越額を,順延されていた国際会議の参加費用に充てる予定である.なお,次年度分の予算については,当初の計画通りの使用を予定している.
|