2020 Fiscal Year Research-status Report
ペンギン肌リブレット~3次元物体表面におけるリブレットの全抗力低減効果の研究
Project/Area Number |
20K04283
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
田中 博人 東京工業大学, 工学院, 准教授 (80624725)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | リブレット / 壁面摩擦 / 抵抗低減 / ペンギン |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、ペンギンの胴体表面の羽毛形態の観察結果に基づき、ポリイミドフィルムのUVレーザ走査加工により、ペンギン模倣リブレットフィルムを製作した。リブ断面形状を台形とし、上辺の幅(リブ上端の幅)を変えた3種類のリブレットを比較した。 異なるリブ断面形状は、レーザの走査線の間隔と本数、および走査時のレーザパワーを、目的形状に応じて調整することで実現した。さらに、流速方向に対してリブ配向角度を 15度、30度、45度つけたリブレットフィルムも製作した。 製作したフィルムを金属平板に貼付し、回流水槽で抗力を計測し、リブレットによる抗力変化を調べた。平板の抗力は、摩擦抵抗が支配的である。ペンギンの遊泳速度では、s+ は約5.5 であり、従来研究されてきたリブレットよりも小さい。リブ上端幅が中間のリブレット(羽毛の模倣)は、ペンギンの遊泳速度だけでなく、より速い速度に対しても抗力を減少した。その最大抗力低減率は 1.8% だった。角度を30度つけると、いずれの速度でも抗力は増加した。ただしペンギンの遊泳速度では、角度を45度に増加すると再び抗力は減少した。一方、リブ上端幅が狭いときは、角度0度のときはわずかに抗力が増加したが、ペンギンの遊泳速度では角度を45度までつけても抗力が減少した。リブ上端が広いときは、傾向はリブ上端が中間のものと似ているが抗力低減率は劣り、角度を45度つけたときの抗力増加が顕著になった。 以上より、s+ が約5.5のペンギン模倣リブレットでは、リブ上端幅がある程度狭いとき、流速方向に対してリブ配向角度が45度までついても抗力低減効果が得られることがわかった。本成果について、論文投稿を準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は、ポリイミドフィルムのUVレーザ走査加工により、リブ断面形状をある程度変えることに成功した。また、平板での抗力計測実験と、リブの配向角度の比較実験を実現できた。さらに、計画以上の進展として、サメの楯鱗についても同様の手法で取り組み始めた。その中で、2.5Dインクジェットプリントによるリブレット試作を行った。これについて国内学会で発表した。 一方、当初予定していた2次元翼型や3次元紡錘形状にリブレットフィルムを貼付しての抗力計測実験の実施には至らなかった。これは、所属機関の新型コロナウィルス感染拡大防止策により、研究活動が制限された期間が長期間あったためである。
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Strategy for Future Research Activity |
リブレットフィルムを展開図状に製作し、2次元翼モデルや3次元紡錘状モデルに貼り付け、回流水槽で抗力低減効果を検証する。その際、層流境界層の維持や、境界層剥離への影響も調査する。さらに、ヒービングとピッチングを与える機構を製作し、周期的に運動するモデルにおける抗力低減効果を調べる。さらに、実際のペンギンの胴体に近い形状のモデルで実験を行い、ペンギン遊泳における胴体羽の抵抗低減効果を評価する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は、2020年度は所属機関の新型コロナウィルス感染拡大防止策により、研究活動が制限された期間が長期間あり、当初予定していた2次元翼型や3次元紡錘形状にリブレットフィルムを貼付しての抗力計測実験の実施に至らなかったためである。また、当初予定していた学会発表の旅費が、オンライン開催のために節約できたことも理由である。2021年度には、実験のための製作費や計測機器購入費に充てる予定である。
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