2020 Fiscal Year Research-status Report
3次元ブラフボディ後流の双安定性に起因する予測困難な流体力の急変に関する研究
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20K04286
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中島 卓司 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 助教 (40444707)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 応用空気力学 / 流体工学 / 3次元ブラフボディ / 自動車空力 / 双安定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
外乱条件によって周囲流れに双安定性を示す複数のブラフボディを対象に、流体力変化の統計的特性と発生機構、各種擾乱への依存性を系統的に調査するため、以下の取り組みを行った。 安定状態間の遷移現象の発生機構を解明する取り組みとして、2つの安定状態を持つ3次元ブラフボディ周りの流れ構造について、数値解析結果に基づく詳細な分析を加えた。また、相対流向を動的に変化させることで安定状態間の遷移を誘起し、その遷移過程の詳細について実験計測ならびに数値解析を行った。実験計測では、回流水槽を使用し、検力と同期した時系列可視化計測を行うことで、遷移過程の流場計測を実現した。数値解析では過渡風向変化を与える非定常境界条件を適用し、流向変化に対して遅れて生じる流れの状態間の遷移過程を再現して、その詳細な過程とトリガーとなる現象について分析を加えた。さらに、遷移過程の現象分析手法として、解析や計測で得られた時系列流速場に主成分分析を適用し、過渡現象を構成する流場の変動成分の分離抽出技術を整備した。 また、流体力変化の統計的特性と各種擾乱への依存性について調査するため、風洞および回流水槽を用いた実験計測を行った。このとき、流路上流に乱流格子を設置する等の条件変化を与えることで、Reynolds数条件や乱流強度などの上流乱れ特性が流体力変化の発生の有無や頻度に与える影響を調査し、これらの条件が流体力の急変の発生の有無やその頻度に影響を与えうることを確認した。 以上の取り組みは形状を大きく簡略化した2種の3次元ブラフボディを対象に実施した検討である。そこで得られた知見の普遍性を確認するため、より複雑な形状を持つ実用的な自動車空力研究モデル形状を対象とする実証を行う。このため、本年度は同車両モデル形状を対象に、風向変化や細部形状変化を与えた数値解析を行い、双安定状態を生じうる条件の絞り込みを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、当初の全体計画の通り、双安定な後流形態間の遷移過程の詳細解明と体系化を中心に研究を進めた。 双安定現象の統計的特性や各種擾乱に対する依存性の調査においては、実験計測を主体として取り組み、代表的な条件での統計的特性を調査するとともに、Reynolds数条件や上流乱れ特性などの注目すべき流場条件を特定した。しかし、感染症対策のため実験計測の機会が減少したことから、検討すべき条件が計画よりも少数に限られ、計画に対して進捗がやや遅れている状況である。 一方で、数値解析を用いた双安定状態間の過渡現象の詳細解明と、現象解明のためのデータ分析技術の整備に注力した。これにより、対象とした2種の簡易ブラフボディにおいて、横風条件下で生じる双安定な2種の流れ場の変遷過程を明らかにするとともに、現象理解の助けとなるデータ分析手法を構築することができ、計画以上の進捗を得た。 これらのことから、研究全体としての達成度はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、単純箱型とセダン型模擬の3次元ブラフボディ2種を対象に、双安定な後流形態間の遷移特性およびその遷移過程の詳細解明を進め、それらの知見の体系化を目指す。風洞において流体力と表面圧の急変の発生頻度および変化量について統計的特性を調査するとともに、回流水槽と大規模数値解析により双安定状態間の過渡遷移現象を可視化、詳細解明する。特に、計画からやや遅れている、前者の風洞試験を推進し、幅広い条件での統計的特性の取得と、それらの体系化に取り組む。過渡現象の解明については、回流水槽における時系列計測において長時間化、高解像度化を図り、数値解析ならびに今年度構築したデータ分析技術と併せて、より詳細な現象解明を進める。 また、これらの取り組みで得られた知見の普遍性を確認するため、より実用的な自動車空力研究モデル形状を対象とする実証を進める。数値解析を基に絞り込んだ形状、条件で風洞試験を実施し、同モデルが示す双安定性の確認と流れ場の詳細な計測を行い、簡易ブラフボディ形状における双安定性との類似性を明らかにする。 さらに、流れの双安定性に伴って確率的に発現する空力特性の表現方法についても検討する。計測された統計的特性に基づき、確率的に流体力の変動が生じる流体力モデルを構築する。ブラフボディの運動を簡易な自動車の運動モデルで表現し、その外力入力として実際の計測流体力とモデル化した流体力の双方を与え、統計的なブラフボディの運動の再現性を評価する。 そして、流れの双安定性を抑制、制御するための技術構築に向けた取り組みも開始する。その初期段階として、可視化分析から解明された双安定な状態間の遷移過程を参考に、微小突起などを用いて、ボディ周囲流れを望ましい形態へと安定化させる、受動的流体制御技術の構築を試みる。
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Causes of Carryover |
今年度、簡略化された形状のブラフボディを対象とする研究で得られた知見を実証に向けて、実用ブラフボディの風洞模型の製作費用を計上していた。その構築のため、数値解析に基づく基礎検討と風洞試験に基づく形状調整を行ったが、感染症対策に伴う風洞試験機会の減少による影響で、製作する模型形状を確定するまでに至らなかった。このため、模型製作については次年度前半に延期することとし、その費用を繰り越すこととした。
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