2021 Fiscal Year Research-status Report
EFD・CFD・気泡力学融合による高速水中キャビテーションの初生機構と条件の解明
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20K04296
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Research Institution | Miyakonojo National College of Technology |
Principal Investigator |
藤川 俊秀 都城工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (10777668)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 高速超純水用小型非循環型キャビテーションタンネル / 気泡核生成 / 張力 / 気泡力学 / 並進減圧 / 初生理論 / CFD解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,二次元流路内に流れと垂直に置かれた円柱と流路壁の間の隙間を水が約50m/sの流速で流れるとき,円柱背後のはく離点近傍で生成する単一蒸気泡核が「キャビテーション初生(以下,初生)に至る条件と機構」を実験,計算流体力学(CFD),気泡力学で解明することを目的としている.「初生」とは円柱表面での流れのはく離,はく離点近傍での水温上昇・張力発生・気泡核生成,気泡核の成長・離脱,気泡壁で非平衡蒸発を伴う気泡の成長・並進運動を経て,気泡が際限なく成長する過程をいう. 実験は,水道水中に含まれる固形物と浮遊気泡を3種類のメッシュのフィルタ(10μm, 1μm, 0.1μm)で除去し,水温と水中の空気含有度を調節して,はく離点近傍での流速と圧力を制御できる非循環型キャビテーションタンネルで行った.2年度は,以下のことを明らかにした: 【実験】タンネル内でキャビテーション気泡発生の条件を検討した.バルク状態の水温と最高流速およびその位置での流路幅で定義したレイノルズ数Reとキャビテーション数σで気泡核の生成と成長を整理し,気泡核の生成・成長機構の解明の研究は気泡が断続的に発生する条件(気泡が発生し始めた段階)で,キャビテーション数σ<1の条件で行うのがよいことを明らかにした.さらに,タンネルを部分的に改良し,電気伝導率センサーと電気伝導率変換器の設置を検討した. 【理論】上述した実験結果に対してキャビテーション制御法に係るスケール則(キャビテーションの動的閾値理論)というべきものを見出した.ディーゼルエンジンの燃料の霧化はキャビテーションを利用しているが,燃料の粘性係数が水の千倍以上でキャビテーションの制御法が未解明であった.本研究で提案した動的閾値理論は,どのくらいの時間,どのくらいの張力をかければよいかを見積もることができ燃料噴射弁の設計に役立つことを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
【実験】実験は申請時の計画どおりに進展した.研究成果は,日本実験力学会2021年度年次講演会,先進的技術シンポジウムATS2021(優秀学術賞受賞)などで発表した. 【気泡力学解析とCFD解析】申請時の計画では,CFD解析に基づく乱流場で気泡核を追跡する方法を予定したが,成長を伴う気泡の並進運動は一次元層流の流れ場から,順次,段階を踏んで進むべきであることが判明した.このため当初の計画を変更し,一次元層流(解析解が知られている直円管内の層流)中での並進運動→二次元層流(本代表者らにより解析解が得られた収縮円管内の層流)中での並進運動→CFDによる三次元乱流中での並進運動,と順を追って解析を進めている.気泡力学解析については,有限時間持続する張力下での気泡核の成長と,その後大気圧に液体圧力が戻ってからの気泡核の成長を,Rayleigh-Plessetの式を修正して得られたモデル方程式を用いて調べ,液体の圧力の変化がキャビテーション初生に与える影響を明らかにした.特に,キャビテーションの気泡生成とその後の成長に係る動的閾値条件を明らかにすることを目的として,強い張力が有限時間持続する条件下において,本代表者らが提案したモデル方程式により解析し,実験によって裏付けられたCFD解析結果に基づいて,動的キャビテーション閾値条件を検討した.今後,計算により作り出された流れ場の中で, 単一気泡核あるいは少数の複数気泡核を,気泡力学に基づいて,気泡の成長と並進運動を解析し,堅実な研究手法を選ぶことにより最終的には計画どおり進む見とおしである.なお,昨年度の研究成果は,Fluid Dynamics Research(日本流体力学会英文誌)に投稿する.
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Strategy for Future Research Activity |
3年度は,「円柱まわりに発生するキャビテーション初生の実験と気泡力学を組み込んだCFD解析」について,①フィルタで処理した水道水を用いた実験,②CFDと気泡力学の融合による気泡核の初生過程の理論解析,③実験と理論解析の対応から初生機構の解明,を行う.具体的には,以下の4つの課題に取り組む. (1)次年度以降に高純度純水との対照実験を計画しているため,水道水を用いる場合は,フィルタのメッシュを様々に変えて浮遊固形物のサイズを調節し,気泡核がどこで,どのように発生するかについて,気泡核発生と水の処理程度および流れの条件の関係を調べる. (2)顕微鏡付き高速度ビデオカメラで観測できる観測部を用いて,円柱背後のはく離点で発生する単一蒸気泡を観測する.蒸気泡発生と流れのレイノルズ数,はく離点での水温変化および張力の関係を理論解析と対比しながら解明する. (3)はく離点での気泡核の発生と離脱,その後の気泡核の成長および並進運動を観測する.気泡の並進運動と気泡形状は気泡成長の加速度により大きな影響を受けることが理論的にわかっているため,並進速度,成長加速度および形状の関係を実験的に詳細に明らかにする. (4)理論解析は,まず二次元層流(収縮円管内の層流)中での気泡の成長・並進運動を解析し,結果の妥当性を確認した後,三次元乱流のCFD解析により得られた流れ場中で気泡力学の方程式を解析,はく離点近傍で気泡核の成長,離脱,その後の並進運動を詳細に調べ,観測結果と比較する.CFD解析でははく離点近傍での水温変化を計算できるため,そこでの水温変化と張力が気泡発生にどのように影響するかについても調べる.併せて,気泡力学を組み込んだ渦法による解析も行う.これは気泡力学を組み込んだCFD解析を補完するものである.
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