2022 Fiscal Year Annual Research Report
多孔体の多機能性創出による熱輸送方向自律可変型・抗重力対応・新熱輸送物理の確立
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20K04308
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
渡邉 紀志 名古屋大学, 未来社会創造機構, 特任講師 (60569979)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 相変化 / 毛細管力 / ループヒートパイプ / ループサーモサイフォン |
Outline of Annual Research Achievements |
トップヒート姿勢で熱輸送が可能なループヒートパイプと,ボトムヒート姿勢で熱輸送が可能なループサーモサイフォンの物理モデルを基盤に,新たに創出した多孔体の多機能性を利用することで,バルブや逆止弁などの機械的機器や電力を一切用いることなく,熱交換器などの吸熱側と排熱側の役割が熱的条件に応じて自律的に可変する新熱輸送物理を提案した.本研究は,提案した熱輸送物理を実験的に検証するとともに,最終年度では,数値計算を中心にその物理メカニズムを解明した.研究機関全体を通じた研究の成果は以下の通りである.実験的検証では,吸排熱が可能な構造を有する熱交換器を設計・製作し,それらを高低差約500mmに配置し輸送管で接続することで作動流体(冷媒)が自然循環する試験装置を製作した.上側の熱交換器内のみに多孔体が設置されており,流動を制御するためのバルブや逆止弁などは一切設置されていない.例えば,作動流体にエタノールを用いた試験では,上側の熱交換器に数百ワット程度を入熱し,下側の熱交換器をチラーで冷却した場合には,投入熱量の80%以上を下側に輸送できることを確認した.また,その定常状態から,上下の熱交換器の入熱と冷却条件を瞬時に入れ替えた場合には,下側の熱交換器で投入熱量の90%以上を上側に輸送できることを確認した.熱輸送方向によらず吸熱側の熱交換器温度はほぼ同じに制御することが可能でることがわかった.多孔体の細孔径を小さくするにつれて,毛細管力の増加により上側から下側への熱輸送量と距離が増加する一方,浸透率の低下(逆止弁効果)により下側から上側への熱輸送量が低下する多孔体の多機能性を実験的に確かめられた.提案する新熱輸送物理は,熱的条件に応じて熱輸送の方向を自律的に決められることから,無電力の熱流スイッチとして利用することができ,省エネ技術として貢献することが期待される.
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Research Products
(1 results)