2020 Fiscal Year Research-status Report
Investigation of distributed Joule-Thomson effect and improvement of the cooling characteristics of Joule-Thomson cryocooler
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20K04319
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
島崎 毅 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (90357202)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 分散ジュール・トムソン効果 / 極低温冷凍機 / 対向流熱交換器 / ヘリウム / ヘリウム3 / 機械式冷凍機 / JT効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
ジュール・トムソン(JT)冷凍機はJT弁(絞り弁、細孔、細管、多孔質体など流れに対して抵抗となる流路)を通し断熱的に気体を膨張させ、膨張後の気体の温度が変化する効果を利用している。通常JT弁は短い流路に相当する。一方、比較的長い細管内の流れで生じる圧力損失に起因する分散JT効果が近年注目されている。JT弁の手前に設置される対向流熱交換器の高圧側に、長尺の細管を使用し分散JT効果を利用することで、熱交換器の効率やJT弁の閉塞に対する耐性の向上が期待されている。しかし分散JT効果を効果的に利用するための細管の仕様やJT弁のインピーダンスとの関係などは明らかではない。それらの解明に向け、長尺細管を使用したJT冷凍機の冷却特性の解析とインピーダンスを変えた熱交換器供試体の特性を評価するための熱交換器試験装置の試作を行った。 解析においては、ヘリウム3を動作ガスに使用した既存のJT冷凍機(3Heポット温度が4 K~0.6 Kとなる運転)で得た熱交換器周辺の温度及び圧力分布データを用い、エンタルピー-温度図などを利用しJT流路内を循環するヘリウム3の状態を解析した。当該JT冷凍機はインピーダンス可変JT弁と長尺細管を使用した対向流熱交換器を備えており、JT弁と熱交換器のインピーダンスの比率を変えた測定が可能である。解析の結果、同JT冷凍機の場合、熱交換器内で発現するJT効果をより詳細に評価するには熱交換器のインピーダンスを一桁程度高くし、逆にJT弁のそれを同程度低く調節する必要があることが分かった。 熱交換器試験装置については、既存設備も活用し効率的に試作を進めた。ガス循環系の油回転ポンプをオイルフリー真空ポンプに交換した。配管の気密性を向上させ、ガス精製器も新たに設計し循環系のガス純度維持能力を向上させた。その結果、低温下の試験でも供試体が不純物混入により閉塞する可能性を低減させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
動作ガスにヘリウム3を使用したJT冷凍機で取得したデータを解析し、分散JT効果を調べる上で既存の熱交換器を基準にどの程度のインピーダンスを持つ熱交換器供試体を設計すべきなのか把握した。既存設備を活用及び改造し熱交換器試験装置の試作を効率的に進めた。また、測定とデータ収集に必要な計測器や制御プログラムを整備した。一方で、熱交換器供試体の設計指針は定まったもののここに至るまでの解析に時間がかかり実際の設計と試作については当初の計画よりやや遅れている。熱交換器供試体を熱交換器試験装置に装着するための治具、温度及び圧力計測用アダプターなども設計し試作する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
細管の適切な径と長さを選定するなどして既存の熱交換器よりも高いインピーダンスを有する熱交換器供試体を試作し、室温及び低温環境下での試験を行う。分散JT効果の詳細な評価には熱交換器を出入りする流体の温度と圧力を高い精度で測定する必要がある。しかしこれまでの解析から、特に温度測定に関する課題が明らかになってきた。熱交換器の解析において、一般的には熱交換器を構成する配管の壁を伝わる熱は解析の対象としている流体の流動に伴う熱移送量に比して影響を無視できる程度に小さいと見なせる場合が多い。しかし本研究で測定に使用しているJT冷凍機では対向流熱交換器の構造上、運転条件によっては流量が比較的小さくなり配管壁や温度計を装着するための構造物を伝わる熱が温度測定に与える影響を考慮すべき状況がある事が分かってきた。今後の研究の推進にあたりこれらの影響を考慮した測定治具の設計や測定及び解析を行う。
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Causes of Carryover |
本年度長尺細管を組み込んだ熱交換器供試体を設計し試作する予定であったが、既存のJT冷凍機によるデータを解析する過程で設計に先立ちより詳細な検討を行う必要があると判断した。その結果、熱交換器供試体の試作までは至らなかったため未使用額が生じた。次年度に熱交換器供試体と試験に必要な治具、温度及び圧力計測用アダプターなどを試作し、熱交換器供試体の特性を評価するために翌年度分として請求した助成金と合わせ使用する。
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