2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K04335
|
Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
牧 祥 岡山理科大学, フロンティア理工学研究所, 准教授 (20502256)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | タンパク質結晶 / 熱物性値 / 非定常短細線加熱法 / 磁気力 / 磁気浮上 / 磁場配向 / 熱伝導率 / 熱拡散率 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は非定常短細線法と磁気アルキメデス効果による磁気浮上法を併用してタンパク質結晶の熱物性値計測を行っている。令和4年度は新型磁気力ブースターの開発成果について論文発表した。これは卵白リゾチーム結晶成長を核発生初期段階から制御し、完全無容器条件を維持しながら成長させることを可能にする磁気力ブースターである。本装置を使って結晶成長過程の可視化と特異な結晶成長メカニズムについて考察した。なお、本関連技術は前年度に岡山理科大から特許出願している。特許出願の完了を受け、ようやく学術成果の発表を解禁した経緯がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題の熱物性値の異方性の有無について卵白リゾチーム結晶を使って詳細に調べている。常磁性体の塩化ガドリニウムを沈殿剤として使用し、結晶の磁気浮上を効率よく実現しているが、令和4年度前半の研究では、水平方向から磁場を印加することで結晶c軸を磁束方向にそろえて成長させ、熱物性値の異方性の有無をより詳細に検討出来るように改善させた。半径方向成分の磁気力で磁気浮上させることに成功したのは、おそらく本研究が世界初である。なお本成果は令和4年度中に学術誌に投稿し、同年度中に論文の受理報告があったが、発刊は令和5年4月であった。そのため詳細な成果報告は次年度に行う。 令和4年度後半の研究では、測定対象を卵白リゾチーム結晶からソーマチン結晶に変更したのが大きな特徴といえる。ソーマチン結晶の磁場効果はこれまでほとんど調べられてこなかったが、申請者は既に多くの新規現象を発見した。これら知見を論文発表するために準備を進めており、令和5年度内に論文化するつもりである。
|
Strategy for Future Research Activity |
ソーマチンは丸和栄誉食品という会社から購入している。卵白リゾチームと比べてはるかに高価な試料なのでスクリーニング試験には限界がある。しかもはるかに強力な強磁場環境でなければ磁気浮上は難しいことが判った。ソーマチン以外にもアビジンの結晶なども試したが、ガドリニウム塩を添加して大型結晶が析出したのはソーマチンだけであった。そこでソーマチンに絞って研究を進めている。極めて大きな強磁場環境が必要なことから、令和5年度は実験を主に広島大学で行う予定である。ソーマチン結晶の熱物性値測定に成功すれば、卵白リゾチームの熱物性値との比較が可能になり、未知だったタンパク質結晶全般の熱物性値に対し、多くの知見を与えてくれると期待される。残された研究期間を有意義なものにするため、慎重かつ大胆に研究を進めていくつもりである。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で出張や他府県への移動が制限されたので、国際学会などの経費として計上した予算が残った。
|
Remarks |
令和4年4月7日に申請者の牧が全治5ヶ月の怪我(右肘の脱臼、入院)で実験が中断したが、研究全体には大きな遅延は発生しなかった。
|
Research Products
(3 results)