2020 Fiscal Year Research-status Report
位置と力の推定技術の確立とセンサレス制御が拓く圧電駆動システムの新展開
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20K04348
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
関 健太 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70432292)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 圧電アクチュエータ / 状態推定 / 位置制御 / 力制御 / セルフセンシング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、圧電アクチュエータの位置及び力センサレス制御の実現である。 2020年度は、高周波印加信号を圧電アクチュエータの駆動電圧に重畳させ、その電圧信号と電流信号を計測し、逐次離散フーリエ変換を用いて獲得したフーリエ係数から静電容量を導出するアルゴリズムを構築した。得られた静電容量とアクチュエータ変位の関係を数学モデルとして表現することで、逐次同定した静電容量から変位を推定することを可能とした。この手法では、アクチュエータの機械振動特性を推定することができなかったため、圧電アクチュエータに受動素子を直列に接続して、その両端電圧を利用して振動特性のみを抽出することとした。この二つの手法を併用することで、変位センサを用いずに残留振動なく位置決め制御可能なことを示した。 力推定と制御に関しては、基礎検討として、上記の受動素子の直列接続により得られる電圧信号と、アクチュエータの力学モデルを用いて接触対象物とアクチュエータ間の接触力を推定することを可能とした。推定した接触力信号を用いることで、力センサを用いずに異なる剛性を持つ接触対象物との接触力を任意の値で制御できることを確認した。 これらの研究過程において、受動素子を併用することで位置推定の高帯域化と接触力の推定の可能性を示したが、等価的なアクチュエータの発生信号が小さくなることが課題として明らかとなった。そのため、併用する回路の改良を行うことで、この問題を解決できることを示し、基本的な梁の振動抑制問題に適用してその効果を実証した。この時、回路の改善と共に、効率よく振動情報の検出ができる位置に圧電素子を配置することが必要となる。そのため、アクチュエータ位置と制御パラメータを同時最適化するシミュレーション環境も併せて構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の目的の一つである、高周波印加信号を基にしたアクチュエータの位置推定と制御について、アルゴリズムの確立を確立することができた。具体的には、動作中に逐次インピーダンスを計算するアルゴリズムと、その計測結果を基にしたアクチュエータの位置を推定、そして位置決め実験による有効性を検証することで、当初の目的を達成できている。その中で、機械共振特性が検出できない課題を新たに見出した。この課題を解決するため、圧電アクチュエータに受動素子を直列接続することにより、振動情報のみを抽出することを可能とし、上記推定手法と併用することで、残留振動を抑制して高精度な位置決めを可能とした。この点については、当初の予定を上回る成果が得られたと言える。 力の推定と制御に関しては、上記の受動素子の直列接続により得られる電圧信号と、アクチュエータの力学モデルを用いて接触対象物とアクチュエータ間の接触力推定を可能とし、力センサを用いずに接触対象物との接触力を任意の値で制御できることを示しており、当初の予定通りと言える。 これらの成果に加え、位置と力推定に利用した受動素子の直列接続について、得られる信号レベルが小さいことを解決する回路構成を考案した。さらに、任意の振動特性と高い制振性能を得るための圧電アクチュエータ配置と制御パラメータの最適化を図るソフトウェア環境を整備することができた。 以上のことから、当初の研究計画を上回る成果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
高周波印加信号を基にしたインピーダンス計測アルゴリズムを用いてアクチュエータの変位量を推定することが可能となった。この成果を基に、位置と力の推定への拡張を図る。具体的には、アクチュエータ位置を拘束して力を発生させたときのインピーダンス変化量を計測するための計測実験システムを構築し、実際の計測を通じてインピーダンス変化と発生力の関係を明らかにする。この時、静的な変化と共に、動的な変化にも着目する。これらの計測実験結果を基に、インピーダンスと位置/力の変化を表現する数学モデルの構築を行う。 2020年度に得られた、外部回路を用いたアクチュエータの振動検出、力推定手法については、回路の平衡条件や力学モデルを利用しているため、パラメータ変動やモデル化誤差に対応する必要がある。そのため、これらの誤差の影響を低減するための制御手法について検討を進めていく。さらに、圧電アクチュエータ配置と制御パラメータの最適化アルゴリズムについては、複数の振動モードの同時制振や、上記のセンサレス手法との融合を図る。
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Causes of Carryover |
申請時点では旅費として使用計画をしていたが,新型コロナウィルス感染拡大の影響で全ての旅行計画がなくなった。一方で,研究の進展により物品費として利用をしたが,総合的に当初計画よりも少ない支出状況となった。 これを次年度使用額として,新たな物品費として使用する計画である。
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Research Products
(7 results)