2020 Fiscal Year Research-status Report
動的X線CTによる微粒子複合ゴムの振動減衰メカニズムの解明
Project/Area Number |
20K04349
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
松原 真己 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40736427)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 減衰特性 / ゴム材料 / X線CT |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では定常加振下の動的X線CT手法を構築し,材料内部の変形挙動を直接評価することで振動減衰のメカニズム解明に取り組む.減衰特性はエネルギーの散逸が発生した巨視的な結果として現れる.そのため,微粒子/ゴム界面状態,ひずみ分布を観察することでエネルギー散逸機構が明らかになれば,粘弾性材料に複合化する微粒子の形状,量や配向などの配合条件から所望の減衰特性を持つ制振材を設計できる.一般的にX線CTは対象物を回転させながら計測するため,動的条件下での観察には不向きである.一方,制振材の減衰特性評価では定常加振下の挙動を計測していることに着目した場合,回転中に180度の断層像を全て撮影する必要はない.そこで,撮影タイミングと定常加振の位相タイミングを変えて撮影し,位相タイミングが一致している断層像を集めて立体像化を行うことで,動的X線CTを実現する.このとき同時に試験片の表面ひずみ分布を計測することで,ミリオーダー構造体における変形挙動とナノ・ミクロンオーダーのひずみ分布(X線CTより取得)の関係を明らかにする. 2020年度は高輝度放射光施設SPring-8において高分解能のX線CTの実験系の構築を行った.引張試験機に試験片を取り付けた状態で,ハッチ内に設置し1 Hz,振幅0.1mmのsin加振を行った. 1試料あたりsin加振の位相違いの画像が10枚×回転ステージの角度違い900枚の計9000枚のX線透過像を得た.なお,高分子材料は放射線暴露による劣化が顕著に表れるため,メカニカルシャッターを導入し高速度カメラの露光時間以外の暴露時間を極力抑えるような対応を行った.動的条件下の計測であったが,sin加振と高速度カメラの同期が取れていたデータについてはCT画像再構成可能であることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高輝度放射光施設SPring-8の利用課題申請および採択されたこと,1Hzの条件下での動的X線CTを実現できたことから,計測面については計画より1年前倒しで成果が得られたと考えている.一方で,動的X線CTは加振装置とX線透過像を撮影する高速度カメラの精密な同期が必要であるが,2020年度製作した引張加振装置のアクチュエーターの性能面の制約より,1Hzよりも高い周波数での加振が難しいことが判明した.そのため,目標とする10Hz(動的粘弾性試験の標準条件)での動的X線CTの実現には加振装置の新調が必要である.
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Strategy for Future Research Activity |
目標とする10Hz(動的粘弾性試験の標準条件)での動的X線CTの実現には加振装置の新調が必要である.そこで,2020年度に新規アクチュエーター選定,手配を行った.2021年度後期に向け,加振装置の新調,SPring-8への利用課題申請を進める予定である.
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Causes of Carryover |
コロナ禍となったことを受け,実験等には最低限の人員のみ参画,学会等発表は中止としたため,旅費については使用計画を下回る結果となった.一方で,動的X線CTを実現する上で必要な加振装置に取り付けるアクチュエーターを新規に準備する必要が発生したため,選定・手配を行った(物品費増).次年度使用額(B-A)が0よりも大きくなった要因はこのアクチュエーター(海外製)が当初予定納期より2か月弱遅れたことにより,2020年度内に納品されなかったためである(2021年度4月納品済み).
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