2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of self-tuning resonance phenomena in mechanical systems and their application to broadband energy harvesting
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20K04354
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
杉浦 壽彦 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (70265932)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 自己調整共振 / 非線形ダイナミクス / 衝突振動 / エネルギーハーベスティング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,環境条件に応じて質量分布などを受動的に変化させて共振状態に至る自己適応機構の共振メカニズムの理論的解明とともに,その現象を応用した広帯域の振動エネルギーハーベスティングの実証を目的とする.対象とする機械システムは,外部から加振を受ける連続体と,それに沿ってスライドしうる可動性を有する付加質量とから成る.加振時には付加質量が過渡的に移動し,系の共振状態に達しうる.この種の問題の従来研究のほとんどは,可動条件を既知として与える.これに対して,自己共振現象では付加質量の並進運動は本体の振動と連成し,外部加振に対して受動的に決定する点,本質的に過渡的な動力学問題となる点,付加質量可動時に本体との摩擦と衝突という扱いの難しい非線形現象を本質的に含む点に,本研究課題の学術的独自性がある. 令和2年度は,「自己共振機構の製作と実験および解析による自己共振メカニズムの検討」を目標として,まず,自己共振機構を製作し,加振実験の測定データに基づいて,付加質量とはりの衝突と摩擦に起因する過渡的な非線形ダイナミクス現象の特徴を調べ,数学的モデリングおよび方程式の導出と解析を始めた.また,加振周波数を変えて,現象の変化を調べた. 令和3年度は,「付加質量とはりの間のギャップ長が現象に及ぼす影響の調査」を目標として,ギャップ長を変えた実験を行い,運動の質的変化を調べた.実験結果を従来の単純モデルによる数値計算結果と比較した結果,ギャップが小さいと数値計算結果と同様の傾向が見られ,ギャップが大きいと付加質量は進行方向の前後に揺れながら移動し,その移動速度は数値計算よりも低下することがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度に続き,令和3年度もコロナ禍の影響により,大学キャンパス内の研究室における研究活動に制限がかかる期間が長期に渡ったことから,当初予定していた解析や実験を十分に進めることができなかったため.
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き理論解析を進めて,自己共振メカニズムの解明に努める.これまでの流れに沿ってまず,質量比,ガタ(はりと付加質量間),加振周波数,加振振幅などをパラメータとして,非線形現象としての分岐の有無をも解析的に調べる.さらに,はりと付加質量間のギャップが大きい場合に,付加質量が移動中に進行方向に対して前後に振動する様子が観察されたことに基づいて,その運動の影響のモデル化も検討する.また,昨年度実施できなかった,質量とはりの衝突と摩擦を考慮した過渡的な非線形ダイナミクスの数値解析にも取り組む.具体的には,先の非線形モデリングに基づいた数値積分をMATLABにより行うとともに,それと並行して有限要素 (FEM) 解析をCOMSOLにより実施する.これらの数値解析により機構パラメータの最適化を行う.また,得られた最適化の結果について,実験による検証も目指す.さらに非接触支持により低減衰系となる超電導磁気浮上系(高温超電導材と永久磁石で構成)を振動系に用いて,共振時の振幅の増大を試みる. 次に,機械振動系の最適化に基づいて,さらに機械的な振動エネルギーを電気エネルギーに変換するために,電気回路系を機械振動系に連成させたシステムを製作して実験を実施し,広帯域に対応した振動エネルギーハーベスティング装置の実証とエネルギーの効率的回収を目指す.付加質量部に永久磁石を埋め込み,電気回路系にはコイルを用いて,付加質量の振動エネルギーを電磁誘導でコイルを含む電気回路側の交流に変換する.別の変換方法としては,圧電素子を用いることも検討する.
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Causes of Carryover |
令和2年度に引き続き,令和3年度もコロナ禍により大学キャンパス内の研究室における研究活動が制限される期間が長期に渡ったことから,予定に反して十分な研究活動を実施できず,助成金の効果的な使用の機会を見出せなかったため,次年度使用額が生じた.令和4年度は,実験において,高温超電導バルク材の導入,動画精度の改善のための高速度カメラ(INFINICAM UC-1 type M,フォトロン製, 75万円)の追加導入,また,高速計算用ワークステーション(HPCT WCX31,HPCテック製,70万円),有限要素 (FEM) 解析推進のためのCOMSOLモジュールの追加導入等を計画している.
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Research Products
(1 results)