2020 Fiscal Year Research-status Report
冷凍機の高調波振動発生メカニズムの解明とショートリングを用いた擾乱力低減研究
Project/Area Number |
20K04356
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
巳谷 真司 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 主幹研究開発員 (00747446)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安田 進 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 主任研究開発員 (30450711)
篠崎 慶亮 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 主任研究開発員 (10435802)
茂渡 修平 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 研究開発員 (60769537)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 擾乱数学モデル / 低擾乱駆動機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
冷凍機の擾乱を発生する機械駆動部(VCM)の擾乱発生モデルを構築するため、初年度は既成製品のVCMの電気・機械特性を計測および、磁気回路解析や構造解析を行って相互比較を行った。 スケールファクタに関するストローク依存性に関しては、カタログ値と良い一致を示し、解析の妥当性が示された。次に、インダクタンスのストローク依存性を同様に解析実施したが、カタログ値との乖離が見られた。 そして、VCMのインダクタンスを計測した。磁気回路がない場合は、Ls-Rsモデルできれいにフィッテイングできたが、磁気回路があるとフィッテイングエラーが大きくなった。またストロークに対する依存性についてモデルと乖離が見られた。それぞれの原因を考察中である。 また、高調波擾乱が基本波擾乱より大きく出るメカニズムに対して、VCMの構造共振との干渉可能性を検討した。解析上は、ロッキングモードのモード係数は小さく、支配的なモードとはなっていない。実験装置対向VCMの伝達関数を取得し、伝達関数に現れる特徴的な周波数と、モード解析で生じた周波数との対応付けを検討したところである。 最後に、並行して研究実施している、アクティブに冷凍機発生擾乱を抑制する手法として繰り返し制御を提案し、宇宙用冷凍機実機に適用した。冷凍機の冷却性能をほとんど損なうことなしに、高調次の擾乱スペクトルを抑制することができた。成果を制御マルチシンポジウムに投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
材料物性としてヨークを純鉄、磁石をネオジムと仮定したVCMの3次元磁気回路モデルを制作し、磁気解析を実施した。スケールファクタに関するストローク依存性に関しては、カタログ値と良い一致を示し、解析の妥当性が示された。次に、インダクタンスのストローク依存性を同様に解析実施したが、カタログ値6.42mHに対して、ストローク平均で11mH程度なり、乖離が見られた。 そこで実際に、VCMのインダクタンスをLCRメータにより計測した。VCMのコイル部とヨーク(磁気回路)部間の相対距離を変化させ計測を行った。磁気回路がない場合は、Ls-Rsモデルでフィッテイングできたが、磁気回路があるとフィッテイングエラーが大きくなった。フィッテイングエラーの要因候補としては、コイル―磁気回路の静電容量や磁気回路の磁気特性の非線形性が考えられる。 また、磁気解析との比較において、実測値はストローク依存性が小さかった。ストローク依存性が小さい要因候補として、磁気回路の磁気特性の非線形性、解析モデルのパラメータが正しくない等を考察しているところである。 また、高調波擾乱が基本波擾乱より大きく出るメカニズムに対して、VCMの構造共振との干渉可能性を検討した。アプローチとして、対向VCM型実験装置の構造数学モデルを制作し、モーダル解析及び伝達関数解析を実施した。研究調査中に、スピーカ音響振動研究の分野で、VCMのロッキング現象との関連が深いことを発見した。事実、モーダル解析にもロッキング現象と類似の振動モード形状が現れることを明らかにした。ただし、解析上は、ロッキングモードのモード係数は小さく、支配的なモードとはなっていない。実験装置対向VCMの伝達関数を取得し、伝達関数に現れる特徴的な周波数と、モード解析で生じた周波数との対応付けを検討したところである。
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Strategy for Future Research Activity |
既製品のVCMに対して、発生擾乱に対するモデルパラメータ依存性の推定精度を引き続き高めていく。前年度は、ストロークパラメータの依存性解析を主に実施し、入力電流の依存性解析等を実施できなかったので、入力電流等のVCMモデルパラメータの状態量依存性を検討していく。得られたモデルを用いて、摂動法により準解析的に解いた近似モデルを構築し、実利用に耐えうるか評価したいと考える。 構築モデルの確度が向上してきた時点で、ショートリング挿入後のインダクタンス数値解析を実施し、VCM設計を実施する。設計後、ショートリング組み込みボイスコイルモータの試作・評価を行う。
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Causes of Carryover |
計画当初では、磁気解析ツールにかかる費用を87万円程度に見積もっていたが、検討に必要なツール機能を精査することにより22万円に費用を削減した。余裕が出た費用を、擾乱モデルパラメータ分析用の計測機器や、低擾乱VCMの設計製作費用の方に回す見込みである。
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