2020 Fiscal Year Research-status Report
計装車両の走行中データ取得による地面の力学的特性の推定
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20K04357
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Research Institution | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
Principal Investigator |
山川 淳也 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), システム工学群, 教授 (10546138)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 秀久 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), システム工学群, 教授 (00332635)
江藤 亮輔 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), システム工学群, 助教 (20761480)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 路面特性 / タイヤ力学特性 / ガウス過程回帰 / データ処理 / 路外走行 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、力覚センサーなどを内蔵した計装車両を用いて走行中の車輪に作用する力や車輪の状態などを収集したデータから、車両走行に必要なタイヤと地面との相互作用ならびに地面の力学的特性を求めることを目的としている。評価の基準となる舗装路面でのデータに加えて、芝などの丈の低い草のある土の地面でのデータを取得して処理を行った。車両の旋回において、タイヤの横力(コーナリングフォース)の発生は重要であるが、これにはタイヤ横すべり角が大きく影響する。タイヤ横すべり角と横力の関係が明確となれば、その地面における旋回時の車両の運動特性を知ることができ、車両走行に有用な地面の力学的な特性の指標が得られる。実走行で得られるタイヤの横すべり角と横力のデータは、タイヤキャンバー角や垂直荷重の条件が一様でなく、それぞれの変数がどれだけ影響を及ぼしているか明らかではない。このため多変数に対応するガウス過程回帰を用いて、それぞれの変数の影響を明らかにすることを試みた。ガウス過程ではカーネル関数を用いるため、多項式などの基底関数を定める必要がなく、柔軟に回帰を行うことができる。車両走行で収集するデータは比較的大きいため、それぞれの変数による相関の特徴を壊すことなく、データを抽出する方法を提案した。また、カーネルの中に用いるハイパーパラメタを決定する必要があるが、回帰モデルの尤度が最も高くなるように、メトロポリス法の一種を用いた。これにより、走行中に収集したデータをガウス過程を用いて処理することで有効に回帰できることが分かり、横力発生に影響を及ぼす変数との関係を明らかにする方法が見い出せた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終的な目標は、車両走行で取得したデータにより地面の力学的特性を明らかにすることであるが、当初の研究として、実路面走行で得られたタイヤのデータから、横力に関係する複数のパラメタの影響を明らかにするためのデータ処理の方法を探った。過去に行った研究では、データを多角的に観察することで、変数の影響をそれぞれその特性に合わせて多項式で近似したが、走行条件によっては十分に回帰しない懸念があり、その都度モデルを作り直すことが必要となる可能性があった。そこで、影響する変数に対してそれぞれの基底関数を選定することなく、取得したデータの特性により自動的に回帰が可能となる方法を検討した。本研究では、データ自体の相関から多変数による回帰が可能であるガウス過程を用いてデータ処理を行った。ガウス過程回帰により、予想以上に良いモデルが生成できることが分かった。研究として大きく進展しており、今後の方向性が明確となった。今回、車両の基本走行データについての処理を行ったが、路外におけるデータについては収集量がまだ少ない。今後、さらなる検証のために、路外における走行データを収集する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、路外走行でのデータ収集を行い、同様な処理方法でタイヤの力学的特性が得られるかを検証し、車両走行に必要なタイヤと地面との相互作用ならびに地面の力学的特性を求める方法を検討する。軟らかい地面におけるタイヤとの相互作用から地面の力学的性質を推定するため、地面へのタイヤ沈下量(轍深さ)などの変数を追加で測定し、タイヤに作用する力との関係性を明らかにする。多変数のガウス過程回帰において、カーネル内のハイパーパラメタを最尤法で求めることで、関連性の低い変数の排除が可能であることから、これを活用して関連度の高い変数を明確にして、より実用性のあるモデルを生成する手法を検討する。先にメトロポリス法を用いてハイパーパラメタの最尤推定を行ったが、共役勾配法などのアルゴリズムについても合わせて検討を行う。また、文献等の調査を通して、既存の方法で得られた地面の力学的特性と比較することで、本研究で得られる相関モデルの妥当性と有効性を検証する。可能であれば、地面の力学的特性の観点からの車両の走行性に関する指標を提案する。
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Causes of Carryover |
購入を予定していた慣性計測装置は、機種の選定に時間を要したこともあり、年度内での購入ができなかった。基礎データの収集を優先して行ったために、購入遅れによる計測への支障はなかった。複数個の購入を計画していた計測器は先に単品で購入することとし、実験により使用性能や特性を確認し、問題がなければ、次年度に追加で購入することとした。また、出席する予定であった国際会議が1年延期となったことで、海外出張の旅費を執行できなかった。これらの理由により、大幅な次年度使用額が生じた。必要な器材については今年度に購入し、旅費については、今後の国際会議等の開催状況によって執行するが、場合によっては柔軟に別の用途での使用を検討する。
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Research Products
(3 results)