外部からの加熱を受ける柔軟構造物の動熱弾性連成振動問題と相似則の新しい展開

2021 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 20K04371
• Research Institution: Nippon Bunri University
• Principal Investigator: 室園 昌彦 日本文理大学, 工学部, 教授 (10190943)
• Project Period (FY): 2020-04-01 – 2023-03-31
• Keywords: 熱弾性 / 宇宙構造物 / 柔軟構造 / 相似則 / 動的応答

Outline of Annual Research Achievements

地上の構造物と比べると極めて剛性の低い大規模な柔軟宇宙構造物では，通常の力学的荷重に加えて，状況によっては太陽ふく射に代表される外部からの熱負荷による動的応答が問題となることが報告されている．本研究では昨年度に引き続き，既往研究で実施された小規模な人工衛星搭載ブーム等の熱誘起振動に関する熱的および構造面での解析で蓄積してきた手法を発展させる形で，大規模な柔軟宇宙構造物を対象として，外部からの熱負荷による熱弾性挙動を予測・解明する手法に関する基礎研究を行った．
BiSTEMをモデル化した薄肉円形断面はり，およびそれらを支持構造とし一方向に張力を付与した薄膜状形シートとからなる複合構造などの解析モデルに対して実施された熱／構造解析において基礎とした，Boleyにより提案された熱誘起振動問題の無次元パラメータの考え方を拡張し，さらに安定性を支配するパラメータも導入して，加熱による動的応答における安定問題の検討も，引き続き行った．
二次元および三次元の骨組み構造が片持ちはり状に支持された解析モデルを対象として，外部からのふく射加熱による熱入力を受けた場合の動的応答について，実在の構造で生じる現象と，研究室内の実験で用いられる縮小モデルを用いた検証実験における現象との相似性を支配する無次元パラメータについて，継続して検討を進めた．
前年度に引き続き，熱弾性連成を考慮した動的応答を支配する無次元パラメータについて検討と整理を進め，骨組み構造のはりモデルを用いて熱負荷の変形依存性を考慮した数値解析を行った．得られた結果の評価，ならびに，これまでに実施し蓄積されてきた実験データの整理と評価において今回の提案の考え方を採り入れ，無次元パラメータとしての有用性についての検討を行った．

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

本年度も，当初の研究計画で実施予定であった中で実験的側面からの研究遂行が遅れている．本研究は連成熱弾性応答解析システムの構築ならびに実験研究のための相似則の提案と検証実験による妥当性の検証とからなっており，初年度に実験による検証の準備に取組み，本年度は本格的に実験的研究を進める計画となっていた．初年度は研究開始時期にCOVID-19感染症拡大に対する所属研究機関の対応方針に基づき，一部の活動制限および研究補助を想定していた学生の学内活動制限等がなされたため，実験研究のための活動開始の遅れに起因する研究計画の調整を行い，既往研究の調査，理論解析および数値解析による検討を中心として研究を進めた．本年度に入って実験システムの構築に着手しているが，研究補助の人員の確保が不安定であったことなどが原因で，十分な成果が得られる段階まで到達しているとはいえないと考えている．なお，提案する手法の検証に用いる実験データとしては，これまでに類似の研究で行われ蓄積されてきたデータの利用も可能であり，新規の実験結果とあわせて利用していくことを検討している．また，現段階では得られている結果の検証の精査中であり，論文として投稿するまでには至っていないが，成果のまとめと論文投稿の準備は進めている．

Strategy for Future Research Activity

当初の研究計画を基本としつつ，実験面での進捗状況を鑑みて計画の調整を行い，予定された研究期間内での成果の取り纏めに取組む．連成熱弾性応答解析については，引続き構造の変形に伴う外部からのふく射熱入力の変動を取り込んだ解析を進め，熱弾性連成問題としての動的応答や熱誘起振動解析に対応できるシステムの構築を行う．主として骨組み構造で構成された各種の解析モデルを対象とした具体的な数値計算を実施し，各種のパラメータの変動に伴う応答の変化を整理するとともに，得られた結果が既往の研究報告や理論解析などから予測される特性を定性的に説明できていることを検証する．また，実験研究に寄与する相似則については，引続き大規模柔軟宇宙構造物の構造面での特徴と，ふく射加熱入力のモデル化をあらためて精査し，熱弾性連成問題を適切に表現できる解析モデルの構築を完了して，解析モデルの動特性，加熱による動的応答の解析的な検討から系を支配するパラメータと相似則を整理する．また同種の，連成による不安定現象にも繋がる空力弾性問題における手法も参考にして，現象の理解を深めるとともに，問題の本質を明確に説明するよう結果を体系化する．提案された無次元パラメータと相似則の妥当性を検証するために，研究室内で実施する小規模なモデルによる実験システムを完成させ，検証のためのデータ取得を進める．供試体は骨組み構造のモデルを基本として，これらの供試体が外部からのふく射加熱を受けた場合の静的／動的応答の計測を実施する．研究機関の最終年度であることを踏まえ，モデル化と理論解析，数値シミュレーション，実験による検証の結果を総合して研究の総括・まとめを行い，当初の目標達成を目指すとともに，これまで不十分であった研究成果の公開を進める．

Causes of Carryover

令和3年度の研究遂行にあたって，当初計画していた実験面での研究の実施が遅れ，予定していた支出の一部が年度内に行えず，次年度の令和4年度に繰り越す必要が出てきたため．なお，この次年度使用額の使途はもともとの研究計画で予定されていたものであり，次年度の使用計画については当初の計画と大きく異なるものではないと考えている．