2020 Fiscal Year Research-status Report
編地アクチュエータを用いた重量物取扱作業者の健康保持増進のための補助スーツの開発
Project/Area Number |
20K04374
|
Research Institution | Industrial Research Institute of Ishikawa |
Principal Investigator |
中島 明哉 石川県工業試験場, 繊維生活部, 研究主幹 (80504737)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
喜成 年泰 金沢大学, 設計製造技術研究所, 教授 (90195321)
田中 志信 金沢大学, フロンティア工学系, 教授 (40242218)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | アシスト / スマートテキスタイル / アクチュエータ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、衣服に組み込むことを目的に開発した編地アクチュエータについて、その応用と動作原理の解析を進めるとともに、この編地アクチュエータを応用した「通常作業は妨げない(着脱が不要で常時着用が可能な)腰痛予防のためのアシスト技術を確立する」ことを目的としている。本年度は、編地アクチュエータの基礎解析を重点的に進め、編地アクチュエータの発生収縮力について算出精度の向上を図るために以下のことを行なった。 まず、編地アクチュエータに用いたSMA糸について、非加熱時と加熱時のヤング率と糸径を測定し、この測定値を用いて曲げ剛性値を算出し、発生収縮力を計算することで実測値により近い理論値を計算できるようになり、精度向上が図れることを確認した。 また、編地アクチュエータのループ同士の摩擦特性を考慮するために、ループの交差部分である糸が直角に交わった構造を再現した測定装置を作製して、SMA糸間の摩擦係数μを測定し、理論計算に反映させることでSMA平編地アクチュエータのひずみ25%以下において、8%程度の誤差で発生収縮力を推定できることを確認した。 さらに、これまで用いてきた既存の編地引張試験の理論計算式に代わり、SMA編地に適した計算式を導出するための編目モデルを構築することを目的に、最も簡単で基本となる2次元平面上において、編目が交差する4 点を通るクロソイド曲線を用いて編目形状をモデリングした。このモデリングで糸の収縮による編目の曲率変化を表現可能なこと、糸の収縮により編地が発生する収縮力の解析に適用可能なことを確認した。 上記に加え、腰痛予防のためのアシスト技術として断面形状変化前後の剛性の計算や皮膚非接触・装着型バイタルセンシング方法について生地の影響の大きさなどを確認する実験などを行なった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、3年間で①編地アクチュエータの基礎解析、②腰痛予防のためのアシスト技術の確立を目指し、そのうえで、シャツなどの上に着用するアシストスーツに適した健康管理技術として③皮膚非接触・装着型バイタルセンシング方法の検討を行なうこととしていた。 1年目の本年は①編地アクチュエータの基礎解析においては、計画していたパラメータを振った編地アクチュエータの試作と、試作した編地の恒温槽付き万能試験機を用いた引張・加熱試験により、新たな知見を得ることができた。また、アクチュエータとして設計するにあたり重要となる編地の発生収縮力について、その理論値算出の精度向上に取り組み、一定の成果を得ることができた。②腰痛予防のためのアシスト技術の確立については、ボーンの剛性可変機構の検討として、変形前後の断面形状について断面2次モーメントの計算などを行なっている最中である。③皮膚非接触・装着型バイタルセンシング方法の検討では、衣服の上から測定を想定し、光学式脈波計測デバイスを用いたTシャツ生地などの上からの計測などを行ない、その影響度合いについて確認しているところである。 上記の状況から、①の結果を踏まえ②について2年目に集中して進める土台ができたこと、③についてもある程度の確認ができているということから、おおむね順調に進展していると評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
①編地アクチュエータの基礎解析は継続しながらも、②腰痛予防のためのアシスト技術の確立に重点を移し、編地アクチュエータを用いてコルセットやアシストスーツなどに用いられている補強材であるボーンの剛性を変化させることを目的に計画通り、a. 編地アクチュエータの高出力化や低温駆動での利用可能性を検討するために、①の結果に基づいて設計した編地アクチュエータの試作・評価を行なう。また、b. ボーンの剛性可変機構を開発するために、編地アクチュエータの組み込みに適したボーンの長さや厚み、幅、断面形状などについて検討する。その後、3Dプリンタなどを用いて試作に取り掛かり、万能試験機などを用いて曲げ剛性の実評価を行なう予定としている。また、③皮膚非接触・装着型バイタルセンシング方法については、光電容積脈波計測システムを用いた計測の可能性について、生地や測定部位による差異などについて検討する予定である。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、新型コロナウイルス感染拡大の影響や学会のオンライン開催などにより当初予定していた出張を取りやめたためである。 使用計画は、新型コロナウイルス感染が終息した際に改めて出張旅費として使用する計画である。
|
Research Products
(2 results)