2022 Fiscal Year Research-status Report
電磁界シミュレーションのための大規模行列計算技術の開発
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20K04417
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
美舩 健 京都大学, 工学研究科, 講師 (20362460)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 電磁界計算 / 有限要素法 / 反復解法 / モデル縮約 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に、本課題の主要な研究テーマの一つである(1)大規模行列を係数とする離散モデルに対する新しいモデル縮約法の開発と、前年度より着手した(2)Darwin近似に基づく電磁界解析で現れる極めて悪条件な行列の扱いに関する研究、について取り組んだ。以下にその概要を述べる。 (1)次項のテーマの対象でもあるDarwin近似モデルにおける、クリロフ型のモデル縮約法について検討を進めた。Darwin近似のこれまでの定式化では、CLN(Cauer Ladder Network)法と呼ばれるクリロフ型のモデル縮約を直接適用することが困難であるが、その適用を可能にする定式化を考案し、モデル縮約の有効性について調査した。また、CLN法による渦電流モデルの縮約について、その精度に関する理論的検討についても検討を進めた。 (2)有限要素法によるDarwin近似モデルにおいて現れる係数行列は、誘電率、透磁率等のパラメータの大きさに極めて大きな相違があることにより、通常の渦電流モデルで現れる係数行列と比較して極めて悪条件となる。本テーマの取り組みにおいては、まずゲージ関数に類似した補助的な変数を導入することによって、この悪条件性を解消できることを示した。さらに、補助変数の追加による計算コストの増大を緩和するため、通常の反復解法における前処理の過程に、補助変数の追加と同等の効果を持つ処理を含めることで、より効率的な電磁界計算を可能にする手法についても開発を行った。 本年度もコロナ禍にあり研究発表の形態に多大な影響があったが、これらの研究成果の一部はオンラインで開催された国際会議において発表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」欄に述べたテーマについて、多方面に渡って研究を進め、国際会議において成果発表を行った。Darwin近似モデルにおいて研究開発を進めた成果については、2023年度に開催される国際会議 Compumag2023 において口頭発表に採択されることが決定している。
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Strategy for Future Research Activity |
主に有限要素法を対象として、電磁界計算に現れる大規模行列を係数とする離散モデルに対するモデル縮約法、クリロフ部分空間解法に関する研究テーマについて継続的に研究に取り組む。来年度以降においては、Darwin近似に基づく電磁界解析で現れる悪条件な行列の効率的な扱い、モデル縮約についてさらに研究を進展させる予定である。
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Causes of Carryover |
本年度も昨年度に引き続きコロナ禍にあって、当初予定していた学会発表、出張に必要とする旅費を使用することが無かった。研究の実施形態にも持続的に影響があり、多くの経費の使用を次年度以降に見送ることとなった。研究の遂行上、計算機や各種ソフトウェア等の必要性が減じたのではないので、次年度以降適切に使用する。
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