2020 Fiscal Year Research-status Report
経皮トランスから人体に流れる高周波漏れ電流を抑制した経皮電力伝送システムの研究
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20K04423
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
柴 建次 東京理科大学, 基礎工学部電子応用工学科, 准教授 (10343112)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 容量結合 / 経皮電力伝送 / 漏れ電流 / 人体インピーダンス / IEC60601-1 |
Outline of Annual Research Achievements |
送電コイルと受電コイルの磁界共振を利用し,体内埋込型補助人工心臓などの医療機器に,高効率でワイヤレス電力供給する方法(経皮電力伝送)がある.これらの送電コイルは皮膚の上に置かれ,受電コイルは体内に埋め込まれる(経皮トランスと呼ぶ).経皮トランスは,あらかじめ絶縁樹脂により防水処理を施すが,100k~8MHzの高周波電圧が印加されているため,絶縁樹脂中の容量成分を通過して高周波電流が人体に漏れることがわかってきた.そこで,本研究では高周波患者漏れ電流Iは,どのように発生しているのか解析と実験から明らかにする. 経皮電力伝送システムから流れる漏れ電流Iは,経皮トランスから,周りの絶縁樹脂を静電的に通過して人体に流れていると考え,本年度は,この厚さや種類を変えたときに,樹脂の静電容量の影響を受けないようになる絶縁樹脂の厚さを実験的および解析的に検討した.具体的には,TET用コイルから人体に漏れる高周波患者漏れ電流の測定を行うために,周囲をシリコーンで絶縁コーティングしたTET用コイルを試作し,これを豚肉の中に挟み込み,豚肉から成人男性のインピーダンスを介して大地に流れる電流を測定した.人体のインピーダンスとして何Ωを入れるべきか決める必要があるが,400kHz~10MHzまでの成人男性と成人女性の立位時における経皮電力伝送(TET)用コイル装着部(胸部)から足裏までのインピーダンスを電磁界解析し求めた.その結果,180Ω程度であることがわかったので,さらに金属皮膜抵抗180Ωを人体インピーダンスとして豚肉と大地間に挿入し,漏れ電流を実測した.その結果,シリコーンの絶縁コーティングが6mm程度ある場合において,漏れ電流は10.6mA程度であり,医療機器のガイドラインにあたるIEC60601-1制限値の10mAを越えることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画に挙げていた,経皮電力伝送システムから漏れていく高周波漏れ電流を試作し,測定することができるようになったため,概ね,目的は達成できたと考えられる.ただし,漏れ電流値は,予想よりも大きく,6mmものシリコーンを絶縁シートに用いても,安全規格値である10mAを越えてしまっており,実用上,やや問題があることがわかってきた.また,立位時における経皮電力伝送(TET)用コイル装着部(胸部)から足裏までのインピーダンスの解析も,完了することができ,180Ωという具体的な数値も得ることができた.しなしながら,人体が接地面に対して置かれている状態や,体格を変えた場合のインピーダンスの計算はまだ行っていないため,次年度への課題とした.
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Strategy for Future Research Activity |
経皮電力伝送システムから漏れる高周波患者漏れ電流は,数M~数10MHzに達しており,かつ,値が小さいため,誰でも正確に測定できるようにすることは難しい.基準となる測定方法の見直しを行うため,電圧・電流プローブの種類を変えた場合の測定や,オシロスコープの接地有無による測定誤差の検討なども行う.また,漏れ電流抑制のための検討として,高周波絶縁トランスの再設計や,送電コイルの層数の検討,補償回路の再設計,ノイズフィルタの追加などを行う.理論的に理解するために,上述のシステムの漏れ電流を,電気回路シミュレータ(購入予定)を用いて解析も行う. 人体インピーダンスの解析については,人体が接地面に対して置かれている状態や,体格を変えた場合のインピーダンスの電磁界解析,子供の場合のインピーダンスの解析も行う.
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Causes of Carryover |
電磁界解析用ワークステーションについて,価格を抑えたものを購入したため使用額に差額が生じました.次年度は,漏れ電流の理論的解明も開始するため,電子回路シミュレータを購入予定です.また,漏れ電流を正確に測定するため,容量を極力小さくした電圧プローブや,高周波電流プローブも購入し,これらを用いた場合の検討も行いたいと考えています.
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Research Products
(21 results)