2020 Fiscal Year Research-status Report
間欠性出力電源主体の電力システムを安定化させる需要側電力調整資源の量子化制御理論
Project/Area Number |
20K04435
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
斎藤 浩海 東北大学, 工学研究科, 教授 (10202079)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 電力システム / 負荷制御 / 周波数制御 / 動的量子化器 / マルチエージェント |
Outline of Annual Research Achievements |
太陽光・風力発電といった間欠性出力電源を主体とする電力システムでは、既存の火力電源だけでは需給調整・周波数変動抑制が困難になる。そのため、需要側の電力調整資源である多数の負荷機器の消費電力を調節し、それが需給調整・周波数変動抑制に有効に機能する負荷制御方法の開発が望まれている。 本研究では、この需要側電力調整資源の調節方法の原理を明らかにすることを目的としている。この目的を達成するため、(A)需要側電力調整資源の潜在量の推定、(B)動的量子化器を応用した負荷制御系の開発、(C)需要側電力調整資源の利用公平性を考慮した自律分散型負荷制御の原理の明確化を行う計画である。 令和2年度は、需要側電力調整資源の潜在量を推定するため、一般家庭を対象としたアンケート調査に取り組んだ。需要側調整資源になり得る代表的な負荷機器の空調機と電気給湯機の使い方について質問用紙を作成し、仙台市青葉区の住民から無作為に600世帯を選定し、質問用紙を郵送した。本報告書記載時点で約100世帯からの回答が得られており、現在回答の整理方法を検討している段階である。 次に、動的量子化器を応用した負荷制御系の開発を行うため、動的量子化器の設計法を文献調査により明らかにした。そして、その設計法を利用して動的量子化器を組み込んだ周波数変動抑制用の負荷制御系を考案した。この負荷制御系の効果を簡略化した電力システムの周波数制御系モデルと共に計算機シミュレーションにより評価した結果、従来の静的量子化器を用いた負荷制御に比較して周波数変動抑制効果が高いことが明らかになった。特に、負荷制御におけるステップ状負荷変化の大きさが大きい場合でも、静的量子化器を用いる場合よりも動的量子化器を組み込んだ負荷制御の方が変動抑制効果の低下を招かないことが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
需要側調整資源の潜在量を推定するためのアンケート調査について、新型コロナ感染症流行拡大の影響により、調査開始時期が大幅に遅延し、年度内に回答の回収と調査結果の整理を終えられなかった。ただし、質問用紙の作成・郵送は完了し、現時点で回答の回収率が約17%に至っているので、令和3年度の中盤までには当初の目的である需要側調整資源の潜在量を推定できるものと考えている。 一方、負荷制御への動的量子化器の応用であるが、当初の予想よりも進展しており、令和3年度の中盤までには自律分散型の動的量子化器の基本構成を明らかにできる可能性がある。 以上より、本研究の進捗状況はおおむね順調であると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は次の内容について研究を進める予定である。 まず令和2年度に完了できなかった需要側調整資源の潜在量の推定を実施する。アンケート調査により得られた回答から、一般家庭で所有されている空調機や電気給湯機をどのような経済的条件および、それら機器の利用条件において負荷制御に利用可能であるのかを定量的に明らかにする。そして、その定量化された需要側調整資源の特性を表わすパラメータを動的量子化器を応用した負荷制御のシミュレーションに使用し、実際の需要側調整資源の特性を反映させたときの周波数変動抑制に対する負荷制御の効果を評価する。 動的量子化器を応用した負荷制御については、多数の需要側調整資源が地理的に分散して存在し、またそれらの多くが低圧配電ネットワークに接続されていること考慮して、現実に即した構造の自律分散化した負荷制御系の構成を明らかにする。またそれに合わせて、動的量子化器も自律分散型の構造に変更する方法を考案する。そして、送配電ネットワークを考慮した電力システムの周波数制御系モデルのシミュレーション等を通じて、自律分散型構造の動的量子化器による負荷制御の効果を評価する。 需要側調整資源の利用公平性を考慮した自律分散型負荷制御については、当初の計画の通り、いくつかのグループに分割した需要側調整資源をエージェントにより制御する方法の実現可能性を検討する。その際、需要側調整資源のグループ化の考え方と方法、ならびに平均合意アルゴリズムと回帰モデルに基づいたエージェントの機能も検討する。また、アンケート調査により得られる需要側調整資源の特性を表わすパラメータを利用すると共に、自律分散構造の動的量子化器も組み込んだ負荷制御系のシミュレーションにより、エージェントによる負荷制御が需要側調整資源の利用公平性にどのような効果を与えるのかを評価する。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、次の2点である。一つは、新型コロナ感染症の流行拡大を防止するため、当初予定していた国内会議がすべてオンライン開催となり、会議開催地へ出張するための旅費を使用できなかったためである。もう一つは、同様にコロナ感染防止のため、研究室に所属する大学院生が大学に来られなくなり、研究協力者への人件費が当初の予定よりも少なくなったためである。 次年度は、前年度中に完了できなかったアンケート調査結果の整理を研究協力者の大学院生に行ってもらうための人件費として、次年度使用額を使用する予定である。また、新型コロナ感染症の流行状況によるが、本研究の成果発表のための国内会議と国際会議への参加のための旅費として使用する計画である。
|
Research Products
(3 results)