2020 Fiscal Year Research-status Report
A research development of high step down ratio, high power density integrated hybrid DC-DC converter
Project/Area Number |
20K04440
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
宮地 幸祐 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (80635467)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | DC-DCコンバータ / 高降圧 / 24V入力1V出力 / ハイブリッドコンバータ / スイッチトキャパシタ |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は12V入力1V出力のハイブリッドコンバータのスイッチトキャパシタ主回路とそのゲートドライブの設計を目的としていたが、48V入力1~5V出力のハイブリッドディクソンコンバータの報告が活発化したため、試作のタイミングを遅らせることで検討時間を増やす代わりに、目標仕様の性能を上げつつ、2年度目以降に着手する予定であった制御にも踏みこむこととした。具体的な目標としては、24V入力1V・4A出力2.5MHz動作のデュアルインダクタハイブリッドコッククロフトウォルトン(CW)コンバータの設計とした。出力電流の大きさと耐圧の関係からフライイングキャパシタはチップ外の表面実装容量を用いることとしたが、CW回路をベースとしたハイブリッドコンバータの主回路とゲートドライブの構成検討と設計を完了することができた。また、2年度目から着手する予定だった高速高精度レギュレーションの設計も行うことができた。デュアルインダクタハイブリッドコンバータは2相スイッチング動作を行うが、両方のスイッチングノードを同時にハイにすることが従来はできず、負荷応答に課題があった。本研究では、負荷応答中に両方のスイッチングノードがハイになることができるように、一部のハイサイドゲートドライブの電源フライイングキャパシタを臨時の充電パスに組み入れる回路及び制御方式を新たに提案した。本提案方式を組み込んだデュアルインダクタハイブリッドCWコンバータの試作設計を実施し、2022年度に測定を行う。シミュレーションにおいて最大効率は81%であり、本負荷応答制御を用いた場合、そうでない場合と比べて14%負荷応答による電圧変動が抑制できることが確認されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2020年度は想定以上に周囲のハイブリッドディクソンコンバータの主回路の研究状況が進展し、優れたドライブ技術も登場し始めてきたため、研究の加速が求められることとなったが、一方でこれらの新規回路を当研究の検討にも活かすことができたため、比較的スムーズに目標とするスイッチトキャパシタの主回路(CW回路)の構成ができた。現在、研究分野としては、これまではデジタルコントローラを用いた制御を別チップで用いつつ降圧比の高い主回路構成の構成を競い合っていたが、小規模電力コンバータにおいて今後はスタートアップや安全機能、負荷応答といった制御をコンバータへ集積化することに主題が移ると思われる。負荷応答の改善手法について議論、提案した報告はほとんどまだ見られていないため、本研究では2年目以降に着手する予定であったこの点について前倒して着目し、改善を提唱、試作に実装することができた。一方で、2020年度の前半は新型コロナウィルス感染状況における入構制限の影響で設計検討に支障があったこと、ハイブリッドコンバータの周囲の研究状況が加速したために主回路やゲートドライブ以外に制御部の検討を2020年度から実施したことが要因となり、試作チップ設計時期が当初の予定より3~4か月遅くなり、当該度内に試作の評価までは実施できていない。ただし、全体としてはより高い完成度の回路の試作につながったため、想定以上の進捗があったと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は2020年度の試作チップの評価基板の設計・作製と評価を第1四半期に行い、提案コンセプトの実証を目指しつつ課題を抽出する。第2四半期から第3四半期にかけて、試作結果を受けての修正案の検討や、さらなる負荷応答および効率の改善に向けた検討を進め、2回目のチップ試作の実施を第3四半期から第4四半期の間で試みる。なお、2020年度のチップ試作では、提案負荷応答改善コンセプトの実証のために、実装のしやすさから一般的な電圧PWM制御(タイプⅢ)を用いているが、電圧PWM制御は負荷変動に対する応答が次のクロックまで待つ必要があるため、本質的に初動が遅いという欠点がある。この点は余計な電圧変動を招き、1V出力のような低電圧出力の場合は電源品質への影響が大きいため、より優れた応答を示す制御方式に本提案を組み込んでいく必要がある。具体的には、ヒステリシス制御への本提案手法の適用を検討している。しかし、ヒステリシス制御は応答が非常に速いという特徴を持つものの、比較的低電圧動作で回路内部伝搬遅延が少ない回路に用いられていることが多い。ハイブリッドコンバータのように複雑な主回路と多数のハイサイドドライバが存在し、内部伝搬遅延が比較的大きい回路方式において応答性に優れるヒステリシス制御をどのように実現させるかが課題となる。また、電力密度を向上させる目的でハイブリッドCWコンバータを2020年度では提案したが、ハイブリッドディクソンコンバータと比べて効率、負荷応答等様々な点で定量的に比較することも行う。これは単純にフライイングキャパシタの耐圧と接続方法を変えれば評価を切り替えることが可能である。これらの検討結果を2回目のチップ試作に反映させ、2020年度より優れた負荷応答、効率を示すハイブリッドコンバータの実証を目指す。
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Causes of Carryover |
2020年度の前半は新型コロナウィルス感染状況における入構制限の影響で設計検討に支障があったこと、ハイブリッドコンバータの周囲の研究状況が加速したために主回路やゲートドライブ以外に制御部の検討を2020年度から実施したことが要因となり、試作チップ設計時期が当初の予定より3~4か月遅れ、試作チップ設計データを外部委託製造に発注した時期が2020年度末となった。試作チップの納品は2021年度の5月下旬を予定している。また、想定より大面積のチップ試作となったため、2020年度の全予算だけでなく、2021年度予算との合算でチップ試作費用の支払いを行う予定である。この他に、このチップを評価する評価基板の製造と評価基板へのチップ実装費用が必要となるため、2021年度においてまとめて予算の執行を行う。
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