2020 Fiscal Year Research-status Report
Fundamental study of discharge phenomena in micrometer-scale gap on dielectrics
Project/Area Number |
20K04447
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
上野 秀樹 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (90301431)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 翔 兵庫県立大学, 工学研究科, 助教 (90633123)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マイクロギャップ / 放電現象 / 沿面放電 / 気中放電 / 誘電体 |
Outline of Annual Research Achievements |
誘電体沿面に形成されたマイクロギャップ中における放電現象とそのメカニズム解明が本研究における学術的課題・研究目的である。マイクロギャップ中での放電の発生・進展に必要な電子の供給源を解明することが最も重要である。誘電体が介在しない単純なマイクロギャップにおける放電では,電極からの電界電子放出が主要な電子供給だけではなく,介在する固体誘電体表面からの電子供給,三重点(金属電極/誘電体/ガス誘電体の3つの界面)からの電子供給の可能性がある。特に,工学的応用の観点からは,急峻な立ち上がりの電圧波形に対する現象の解明が重要である。 令和2年度においては,まず急峻な電圧波形に対する現象解明のため,ナノ秒オーダーの立ち上がり時間の電圧を発生することのできる電源を導入し,これを用いてフラッシオーバ電圧,放電電流等の電気的計測による荷電粒子の挙動の解明を進めた。特に,誘電体からの電子供給,三重点からの電子供給は,誘電体物性(特に仕事関数)の影響が大きいと考えられ,異なる仕事関数を持つ誘電体として,ガラスおよびZnOを取り上げて,フラッシオーバ電圧等の検討を進めた。その結果,沿面マイクロギャップでのフラッシオーバ電圧における印加電圧極性による差異,誘電体による差異があることが明確となり,放電における誘電体表面や三重点からの電子供給についての基礎的知見が得られた。 さらに,光学的な観測・計測による荷電粒子の状態解明も重要であり,令和2年度においては,マイクロギャップ中における放電の発生と進展の様相を観測する手段を検討し,マイクロギャップ放電の観測に適したレンズ等の光学系の検討を行った。さらに,実際に光学機器を借用し,保有している高感度カメラと組み合わせ,沿面マイクロギャップにおける放電様相の撮影と解析を実施した。その結果,条件により放電様相が異なることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,沿面マイクロギャップ中における放電現象とそのメカニズム解明を図るため,令和2年度においては,誘電体表面・三重点からの電子供給に及ぼす誘電体材料物性の影響について,「①フラッシオーバ電圧,放電電流等の電気的計測による荷電粒子の挙動の解明」,「②高速度手法による放電発生・進展様相の観測,発光分析による荷電粒子の状態解明」の観点から検討を進める研究計画としていた。 研究計画に対し,まず急峻な電圧波形に対する放電現象解明のため,ナノ秒オーダーの立ち上がり時間の電圧を発生することのできる電源を用い,誘電体からの電子供給,三重点からの電子供給と関係の深い仕事関数などの物性の異なる誘電体として,ガラスおよびZnOを用いて,フラッシオーバ電圧,放電電流等の電気的計測による荷電粒子の挙動の解明を進めた。その結果,沿面マイクロギャップでのフラッシオーバ電圧・放電電流や印加電圧極性による効果が,誘電体により異なることを見出し,このことにより放電における誘電体表面や三重点からの電子供給についての基礎的知見が得られた。 さらに,光学的な観測・計測による荷電粒子の状態解明も重要であり,マイクロギャップ放電の観測に適したレンズ等の光学系の検討を行い,次いで実際に候補となる光学系を借用するとともに,保有している高感度カメラと組み合わせ,沿面マイクロギャップにおける放電様相の撮影と解析の基礎検討を実施した。この基礎検討により,誘電体の種類,印加電圧極性,ギャップ長などの条件により放電様相が異なることが明らかとなった。これは,電気的な計測結果と総合的に検討することにより,沿面マイクロギャップにおける放電の発生・進展メカニズムの解明に重要な知見が得られた。 以上のことから,本研究全体の当初研究計画に対して,おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度においては,誘電体表面・三重点からの電子供給に及ぼす誘電体材料物性の影響について,「①フラッシオーバ電圧,放電電流等の電気的計測による荷電粒子の挙動の解明」,「②高速度手法による放電発生・進展様相の観測,発光分析による荷電粒子の状態解明」の観点から検討を進めた。 令和3年度においては,上述の前年度の誘電体材料物性の影響については,継続して実施するとともに,新たに「金属電極および三重点からの電子供給に及ぼす電極金属材料物性の影響」についての検討を実施する。検討手法についても「①フラッシオーバ電圧,放電電流等の電気的計測による荷電粒子の挙動の解明」に加えて,「②高速度手法による放電発生・進展様相の観測,発光分析による荷電粒子の状態解明」についても,前年度の基礎的検討の結果を踏まえ,さらに発展させた検討を実施する。 また,これまでの電気的測定・光学的測定による実験的手法にとどまらず,荷電粒子に関するシミュレーションによる理論的なアプローチからも検討を進める予定である。 さらに,前年度の研究成果については,学会等での発表を通じ,議論を展開し,研究を促進させる予定である。
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Causes of Carryover |
令和2年度において,マイクロギャップ放電の観測に適したレンズ等の光学系の検討を行い,実際に候補となる光学系と高感度カメラと組み合わせ,沿面マイクロギャップにおける放電様相の撮影の基礎的検討を行うため,光学系および高感度カメラのレンタル料をその他経費としていた。令和2年度については,候補となるレンズ等の光学系については,取扱商社の好意により無償で借用が実現し,また高感度カメラについても現有のものを使用したため,当初の使用計画との差異が発生した。さらに,学会や研究会参加による調査研究のための旅費を計上していたが,コロナ感染拡大防止により中止やオンライン開催となったため旅費が発生しなかった。 令和3年度については,さらに沿面マイクロギャップ中の放電の撮影に適した光学系および高感度カメラの検討と実際の放電様相の撮影に重きを置いた計画であり,当初使用計画に追加して使用する計画である。また,状況に応じてレンタルから光学系関連の部品の購入費用としての使用についても視野に入れて,研究および費用の使用を行う予定である。旅費についても現地開催学会等の参加が可能となれば費用発生する予定である。
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