2020 Fiscal Year Research-status Report
電力変換装置用リアクトルの高周波数適用に向けた空間的巻線実装技術の研究
Project/Area Number |
20K04456
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Research Institution | Tokyo National College of Technology |
Principal Investigator |
綾野 秀樹 東京工業高等専門学校, 電気工学科, 教授 (50614525)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | リアクトル / 寄生容量 / 高周波 / シミュレーション / 電力変換器 / 空芯コイル |
Outline of Annual Research Achievements |
省エネルギー化の流れの中で,電力変換装置の導入が急激に拡大している。電力変換装置には,従来のSiをベースにしたパワーデバイスに加え,SiCやGaNを用いた新世代パワーデバイスが実用化されて使用範囲が広がりつつある。新世代パワー半導体を使用することにより低損失で高周波数の駆動が実現できることから,大幅な機器の小型軽量化や高効率化が期待されている。例えば,DC-DCコンバータで使用するリアクトルは,理論上は周波数に比例して電流リプルを小さくできる。これは,電流のリプル幅を一定にする場合には,駆動周波数が高いほどインダクタンス値を小さくできることと等価であり,小型軽量化にも直結する。しかし,実際には,駆動周波数の増加に伴って巻線間や巻線-コア間に存在する寄生容量の影響を受け,リアクトルとしての特性が劣化する。このため,駆動周波数の高周波数化には限界がある。この課題は,EMIフィルタや高周波トランスでも発生する。本研究は,メガヘルツ帯の高周波数で使用できるリアクトルを開発する点が目的である。 上記の目的に対し,令和2年度は,まず,高周波数での特性悪化要因について,上記の寄生容量によるものと鉄心コアの磁気特性によるものとを分離するため,鉄心コアを使用しない空芯コイルに着目して評価を実施した。特に,ソレノイドコイルについて,巻線間隔を一定に設け,かつ,平均半径は等しいが半径を周回ごとに変化させるリアクトル構造を提案した。また,理論検討と電磁界シミュレータを用いたシミュレーションにより,ソレノイド構造のリアクトルのインダクタンスや寄生容量の特性について評価した。次年度は,提案リアクトル詳細に評価をしていく予定である。なお,本研究の基礎検討段階で得られた提案リアクトルの評価結果やシミュレーションでの検討手法,および,研究の応用先である電力変換器の制御手法などについて,学会等で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高周波数でのリアクトル特性の悪化要因について,寄生容量によるものと鉄心コアの磁気特性によるものとを分離するため,鉄心コアを使用しない空芯コイルに着目して評価を実施した。この結果,空芯コイルにおいてもMHz帯において共振点を持つことを明らかにした。さらに,今年度購入した電磁界シミュレータを使用して,空芯ソレノイドコイルの巻線間隔を変化させた場合のインダクタンス特性および寄生容量の特性について評価した。この結果,巻線間隔を広げた場合,寄生容量は低減するがインダクタンスも低減することを定量的に明らかにした。上記の結果を受けて,巻線密度を変化させずに隣接する巻線間の距離を大きくできるインダクタンス構造を新たに提案した。実測評価の結果,純粋なインダクタンスとして見なせる範囲が高周波数化できることを確認した。これらについて学会発表を実施した。また,提案リアクトルについて,より詳細な評価を実施するために,評価用のリアクトルを複数製作している。以上より研究は順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度に提案した寄生容量の影響を低減できる空芯リアクトルの構造について,巻線間隔や周回ごとの半径を変化させる詳細な実機評価により有効性の実証をしていく。さらに,研究過程によって発見された事象について学会等で発表を適宜実施していく予定である。また,研究計画の遂行体制としては,1名の卒業研究生を研究協力者として充てる(研究代表者が卒業研究生の指導を実施する)。さらに,研究協力者として,福岡工業大学の松井義弘先生にアドバイスを頂きながら推進する予定である。 使用計画に基づいて,スペクトラムアナライザ,および,実験時に必要な消耗品を購入する。さらに,学会に参加し発表や関連研究の情報を収集する。このための参加費用を予定している。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため,学会活動はオンラインにより実施したため,当初想定していた旅費代金は発生しなかった。この未使用額は,翌年度において部品購入(備品購入)に充てる予定である。
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